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第13話『ずるい。』
「序美の泣いているとこ、久しぶりに見た」
駅に向かう帰り道、愛がこう言った。
「だって、つい感情が高ぶって…」
恥ずかしそうに言う序美。
顔が少し赤い。
「でも、昔はよく泣いてたよね。……彼氏さんのおかげかな、やっぱり」
そう言うと、愛は寂しそうな瞳をした。
「来くんだけじゃないよ!みーんなのおかげ!もちろん、愛のおかげでもあるからね!」
序美は笑顔でハッキリと言う。
「あっ!電車来る!じゃあ愛、またねー!」
手を振りながら、駅のホームへと序美は走って行った。
そんな序美の後ろ姿を、愛はずっと見つめていた。
そして、完全に見えなくなると、ようやくホームへと向かう。
「…ほんと…ずるいよなぁ序美は…」
ポツリと呟く。
序美の言葉、そして笑顔が頭から離れないまま、愛は帰路に着いた。