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第10話『平常心を保つ二人。』
先に待ち合わせ場所である駅の改札口に着いたのは序美だった。
周りをキョロキョロと見渡す。
愛はまだのようで。
「ふぅー…」
壁にもたれかかり、一息つく序美。
あと少し。
あと少しで愛が来る。
そうしたら、自分の正直な気持ちを伝える。
「……」
いつの間にか物思いにふけっていた。
そのとき。
「序美っ」
後ろから名前を呼ばれ、振り返る。
その声の主はもちろん。
「愛」
小走りでやって来る愛。
序美の傍まで来ると、少し呼吸を整える。
「……ごめんね、遅くなって」
そう言われて時間を確認すると、待ち合わせ時間から15分経っていた。
そんなに過ぎていた感覚がなかった序美は驚く。
「……序美?」
何も反応がない序美を心配する愛。
「……え?…あっ!だ、大丈夫大丈夫!あたし待つのは慣れてるから!」
序美は慌てて返事をする。
その笑顔は少々かたい。
「…じゃ、行こっか」
愛はコクリと頷く。
そして二人は、いつもの店へと向かった。