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お終いに向けて

「何事かあったようだ」

 斥候として出ていた騎士が望遠鏡を取り出す。

 木々が入り組んだこの場所では使い勝手が悪いが、それでもないよりはましだ。

 数人の騎士たちが固まって何やらもめているようだ。

「妃殿下のお姿は確認できないか?」

 視界はすこぶる悪い、もしかしたら入り組んだ木々に隠れた場所にいるのかもしれないが確認はできない。

「もう少し近づいてみないとわからない」

 入り組んだ森の中、気配を殺しつつ進む。

 そして、人が倒れているのを見つけた。

「一人倒されている」

 そう呟くと、相棒役が答える。

「それができるのはアストリッド妃殿下しかいない」

 実際には彼を倒したのはターシャ妃殿下だが、そんなことは知る由もない。


 その時、彼らはもめるだけもめていた。

 何しろ状況があまりにも予想と違いすぎた。

 とっくに死んでいたはずのターシャ妃殿下がぴんぴんしているし、体力を消耗しつくしてこちらの言いなりになるだろうと思っていたアストリッド妃殿下は今も気力体力ともに充実し、戦意はかなり高い。

 今は姿を見せていないビアトリクス妃殿下もおそらく健在だろう。

 そのうえ周辺に罠を仕掛けたと言い出した。一人突出した人間が倒れ、今は全く動かなくなっている。

 毒という言葉が聞こえてきたがそれもはったりではないだろう。

 どうしてこうなったのか。ターシャ妃殿下とビアトリクス妃殿下が亡くなり、アストリッド妃殿下だけが助かり三国の亀裂を深めるという作戦は全くうまくいかない。

 彼ら自身の手で妃殿下たちを殺めることには抵抗があった。

 うかつに自らの手を汚したくなかったのだ。だから森の奥に捨てて自然死を待った。

 一思いに殺すよりむごい仕業だということにはあえて気づかなかった。

 そんなことはどうでもいいのだ。

「ゆっくりと進め」

 しかし誰が最初に行くかその判断がつかない。というか誰もが戦闘は嫌だと考えているらしい。

 とりあえず、一番年下の一番下っ端に圧力をかける。

 ほかの全員もそれに倣った。

 彼はおずおずと前に進んだ。


 随分と若い男だ。

 武器をつがえながらターシャは思う。動きは随分とゆっくりだ。だからターシャもすぐに狙いをつけた。とがったほうに毒を塗ったそれを迷わず射込んだ。

 飛んできたそれはあいにく服の上にあたったので。さしたるダメージは与えられなかった。

 最も飛んできたものを拾って、おそらく刺激臭をかぎ取って硬直している。

 彼も知識はあるようだ。

 とはいえ殺傷力のある形の石はそれほど多くない。それに毒草をつけるとなると数は限られる。

 無駄射ちは避けたいところだ。

 ターシャはやぶの中に身を隠しながら唇をなめた。

バトル展開です。

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