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サプライズ③

今回、視点移動が激しいです。


読みづらいかもしれないです、すみません

-クロ-

遂に今日はハナ様の誕生日。

借りておいた倉庫は綺麗に掃除し、テーブルをいくつか設置して、立食パーティーの会場となった。

それぞれのテーブルには純白のクロスをかけて、この日のために腕をふるってつくった料理を並べた。

ハナ様はあまり料理をおたべにならないでしょう、なので気軽につまめるものを中心にした。

これなら、パーティーの途中で適宜食べられる。


ボローニャ様には隣の倉庫で待機していただいている。

倉庫の近くにいられると大きな体のボローニャ様は見つかってしまうリスクが高まる。

これはサプライズパーティー、驚かせつつ楽しんでもらう為に、ネタバレは回避しなければならない。

なので、急遽、昨日隣の倉庫をかしていただいた。

今朝、ボローニャ様が要らしていることは確認済みだ。


そろそろノエル様がハナ様をつれてくる頃のはず。

なんだか妙にソワソワしてしまう。

いてもたってもいられない。

ハナ様は楽しんでくれるだろうか、もう一度手順を確認しておかなければ。


ハナ様が入ってきた瞬間、『誕生日、おめでとうございます』と書かれた幕を広げておいた。

さらに、光魔法『光のライトロード』を多数展開し、全てハナ様に集まるようにセットした。

『光の道』は回復の光がまっすぐ進む魔法。


タイミングを見計らってボローニャ様に合図する。

隣の倉庫に遠当てで合図すると、ボローニャ様はこちらに来ることになっている。

そして、ボローニャ様が自慢の曲芸を披露する。


うん、完璧。

あらかじめ、ノエル様には町近くの倉庫で待っていると伝えている。

間違って隣の倉庫でもいかない限り大丈夫のはず。

あっちの方は目立たないから大丈夫のはず。

大丈夫、大丈夫、きっと、たぶん、おそらく。








-ノエル-

私たちの屋敷から、町へは少々荒れた道が続いている。

普段はクロ位しか通らないのでもっと荒れているのだが、私たちが歩くことを考えてクロがある程度整備してくれている。


まったく、本当によくできた娘だわ。

私より一回りは年下なのに、私の何倍も多くのことが出来る。

いつも色々な点で助けてもらっている。


一つだけ不満が有るとすれば、あまり心を開いてくれていないことかしら。

もっと感情を出してくれればいいのに、と歯痒い思いをしている。

あの事件以来、あの娘はどこか負い目を感じている。

いつか、心から打ち解けられる時がくるといいのだが。


気づくと、いつの間にか道の分かれ目に来ていた。

片方は綺麗に整備された道。

おそらくこちらが正解なのだろうけど、もう片方の道には、ごく最近、今朝がたに通ったような跡がある。

どちらも正解のようなので、迷ってしまう。


こういうときは、今おぶっているハナに魔力で見てもらうのが一番なのだが、お昼寝中のハナを起こすわけにはいかない。


そういえば、昔に道に迷ったときは棒をたてて倒れた方に進めばいいと聞いたことがある。

ちょうどいい棒を探さなければならないので、道を横に逸れて森の中にはいる。

ここら辺に出る動物はとても大人しいので、ゆっくり入っていけば問題ない。

周りでどんぱちと魔法を乱射でもしない限り、襲われてたりはしないだろう。







-ボローニャ-


あの娘に強引に押し込められ、狭い倉庫にひとりきり。

なんとも侘しいというか、空しいというか。


昔は合成魔法を使えるだけで大賢者と言われたが、今となっては寂れた町の曲芸師扱い。

時間は残酷なものじゃ。


今朝方からこの倉庫に閉じ込められ、一体どれ程時間がたったじゃろうか。

すこしでも動くとみしっと音がする。

長年ここにたっていたせいか、所々ガタがきておるオンボロじゃ。

なんだか、今のワシのようじゃな。

老齢になり、昔のような強さをなくして今にも壊れてしまいそうな哀愁ただようオンボロ。


あの娘にいいようにやられ、こんなところにいつまでも押し込められて、段々腹がたってきた。

このままやられっぱなしはごめんじゃ。

鍛え直すんじゃ、あの全盛期の頃に。

いや、それ以上じゃ!


思い立ったが吉日。

倉庫の扉をバン、と開く。


「ワシは生まれ変わるんじゃ!

やるぞおおお!お前とは違うんじゃあ!」


バシーン、と決別の証しとばかりに扉を閉める。

それがトドメだったのか、ガラガラガラ、と柱ごと倉庫が崩れる。

しかも、復讐するかのように、ワシの方へ倒れてきたではないか。

あまりに唐突すぎる崩壊。

ワシはなすすべなく建物の下敷きになる。


「ふ、ふざけるなー!

貴様、オンボロの分際でこのワシをー!

吹き飛べ、『暴風ストーム』」


崩壊したそれが魔法の風邪で天高く舞い上がる。

更に、追撃の炎弾がもとオンボロを燃やし尽くす。

燃える火の玉となったそれはきらきらと舞い降りる。


「これは決別の火じゃ。

さらば、過去のワシの亡霊よ。

せめて未来への生け贄となるがいい」


トドメとばかりに燃えかすを風により周りにちらかす。

ワシのつくった風と自然の風が交ざりあい、森の命を育んでいくと考えると、とても清々しい気分じゃ。







-ノエル-

唐突に強い風が吹く。

ハナを離さないようぎゅっと抱える。


「あれ、ここはどこです?」


そのせいで、ハナが起きてしまった。

森の中なので、周りには木しかない。

ハナが不安になってしまっただろうか。

いったんもう一度寝かしつけた方がいいだろう。


「大丈夫、夢の中よ。

ゆっくりおやすみ」


ぽんぽんと背中を叩いて寝かし付ける。


「母上、なにかきます」


「え?」


ハナが鋭く目を開く。

ときどきする、真剣な男の表情だ。

ハナの向いている方をみると、数匹の小形の動物がこちらに走ってきている。


「母上」


「大丈夫、お母さんに任せなさい。『ウインド』」


魔法により発生した風で、魔物はすべて足をとられ、転倒する。

キュー、と甘えた声で鳴き始める。

ふふ、息子に頼られるのはいい気分だわ。


「いえ、そうでなく、ああ、まずいです」


「え?」


息子の表情が曇り、その後表情がなくなる。

私はただ戸惑うばかりで、なにがまずいのかわからない。


しかし、それはすぐに判明した。

後ろから大量の足音、それも走ってくる。

小型の獣。

数匹なら怖くない。

戦闘能力はほとんどないからだ。

そんな小型の獣が生き残る方法。

それは群れることだ。

まるで大きな一匹の獣のように

それは、それらは群れなして現れた。


「風よ、その身を束ね、我を敵から遠ざけよ『風壁ウインドウォール』」


風を編み、大きく壁を作る。

しかし、群れは弾かれることを恐れずに風壁を破ろうと体当たりしてくる。

このままでは、長く持たない。


「母上、最初に魔物が来た方へ逃げてください!

そちらから人の気配を感じます」


息子は魔力を感じ取ることができる。

恐らく間違いない、そちらにクロがいる。

一人では対処できないが、クロがいればどうとでもなる。

反転し、ハナを更に強く抱えて走り出した。

反転した際、ハナの光魔術による目眩ましを背中越しに感じた。

この子も必死だ、絶対に生き残る。






-ハナ-

ノエルに捕まり、後ろから追いかけてくる魔物をみる。

圧倒的物量の暴力。

魔力は近い。

しかし、ノエルよりも獣の方が速い。


魔力を感知しょうとして、失敗する。

恐怖心。

あれに呑み込まれれば命が危ない。

考えるだけで心が乱れてが魔法が使えない。


ノエルは走りながらも風で進行を止めようとしている。

それに比べてなんて様だ。

恐怖と屈辱でぐちゃぐちゃになる。

最悪のループから抜け出せない。


ノエルの額に、腕に、身体中から汗が吹き出す。

限界が近い。

なにも出来ない自分が悔しい。


「光が見えた、森を抜けるわ!」


獣に呑み込まれるスレスレで森を跳び抜ける。

同時にノエルはバランスを崩して倒れ込む。

ノエルはしばらく動けない。

なんとかクロと合流できた。

目の前にいたのは見知らぬ中年だった。


「助けてください!」


それでも、助けを求める。

ノエルは動けない。

俺は使い物にならないポンコツ。

力があるは目の前にいる男だけだった。


「自分でなんとかしろ」


拒絶。

目の前が真っ暗になる。

獣は目の前に俺たちを捉えている。

死ぬ。


「と、いいたいところだが、そうもいかねえな。

俺の撒いた種だ、俺が片付けてやる」


男が手を振り上げる。

同時に獣と俺たち間に土の壁が現れる。

獣たちが体当たりしてもびくともしない、その男の逞しい体と同じく堅牢で、巨大な壁。


「坊主、見ときな、古の大魔法だ」


男は静かに詠唱する。

不可視の魔力が可視の現象に変わっていく。

意味のない力に役割を持たせる。

戦士と見紛う男の、完璧な魔術。


「火よ、地よ、そして闇よ。

混沌なる力を闇のもと束ね、全てを喰らい尽くせ『混沌の暴食カオス・ダウン』」


全てを喰らう闇の塊。

それは巨大な壁すら、まるでガラスを砕くように咀嚼し、そのまま巨大な一個体となった獣の群れすら前菜と言わんばかりに喰らい尽くし、消えた。


そして俺は、この男に平伏していた。

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