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Ⅲ.

放課後の廊下に、二人組の少年たちがいた。


「ほーんと吃驚だよね、燕クンも補習なんてさ」

揶揄するような笑みを浮かべて隣に並ぶ少年を見るのは(つなし)(いずみ)

サボりの常習犯であるため、補習も常連だ。


「うるさい。今回は…苦手な範囲だっただけだ」

仏頂面で泉から顔を逸らしたのは(いちじく)(つばめ)

彼は真面目な性格であり、普段は優秀な成績なのだが、苦手なものとなると途端に成績が下がる。


「冷たいなぁ。ああ、弥生チャンに笑い飛ばされてご機嫌ナナメなんだ?」

「……」

弥生とは燕の腐れ縁とも呼べる少女、六月一日くさか弥生(やよい)

その仕草などは女子高生とは思えないほど上品で大和撫子然としているのだが、そこは人に忌避されやすい燕と腐れ縁を続けられる人物なだけあって、気が強く思ったことははっきりと口にする。


そして、補習が決まった時、そんな彼女に一頻り笑われた後「だから一緒に勉強しようって言ったじゃない」と呆れたため息を吐かれ、燕は不機嫌を隠すことなく補習に向かう最中というわけだ。


「……お前こそ、八月一日に馬鹿にされていなかったか」

「やだなぁ、葉月が僕に勝てると思ってるの?」


八月一日(ほづみ)葉月(はづき)

彼女は泉の幼馴染なのだが、多少意地の悪い性格である泉によく振り回されている。

その上、低身長、貧乳、馬鹿力と女性らしさとは少しかけ離れた特徴を持っているため、そのことで泉にからかわれている姿が頻繁に目撃される。


強い正義感と部活の所属もしている空手によって誰かを守ることが多いため、“小さいけどイケメン女子”と呼ばれてもいるのだが。


「同情するな…」

「ま、とりあえず、剣道部の主将と副主将の二人が補習で身体鈍りましたなんてシャレにならないし、さっさと終わらせて部活行こうよ」

「お前はサボらなければ補習にはならなかっただろうが…その意見には賛成だが」


剣道部。

それが正反対の性格と思われる彼らを友人として結び付けているもの。


「剣道やってなきゃ燕クンなんてめんどくさくて友達にはならないよ」というのが泉の感想であり、「剣道という繋がりが無ければ誰があんな適当な男と友人でいるものか」というのが燕の感想である。


互いが互いに切磋琢磨し合えるという理由で、彼らはかれこれ小学生の頃から一緒にいる。



「…やっぱあの二人、仲良いじゃないの」

「だね。喧嘩するほど仲がいいとも言うし、いいコンビじゃん」


3年の教室内、泉と燕の会話に上がっていた弥生と葉月が頷き合う。


―その後、のんびり歩く泉とそれについ合わせていた燕が補習に遅刻しかけるのは、言うまでも無い。

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