表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/58

初めての闘い

「ど…どうしましょう?」

 自分で言っていてすごい情けないような気がする。でもしょうがない、こんな経験初めてだもん。しょうがないんだ。

「とりあえず奴らを止めに行きましょう!!」

 ですよねー、そう言う答えが返ってきますよね。トーカさんマジカッコイイっす。

「さぁ、リファス!!」

 行きますよ! みたいな雰囲気出さないでくださいよ。あぁ、本当に俺ヘタレだな。

「あぁ分かったよ!!」

 俺だってちょっと魔法が使えたんだ、少しくらいやってやる。それに女の子一人を戦わせるのはいけない…ような気がする。

「派―――!!」

 走ってって、お約束の亀○流のあの技のポーズ。すると前と同じように無数の氷の矢が出てきて三メートル近い人たちにドドドと当たる。

「ん? やべえぞ! リファスだ!! トーカも居やがる!!」

 やっぱり俺達有名みたい。

「リファス、なんか啖呵きって奴らを脅して下さい!」

 え…? なんかトーカさん余裕じゃね? そんな期待した目で見ないでくださいよ。

 さてなんて言ったらいいでしょうか。

「お…お前らなんか、ねっぷねぷにしてやんよ!!」

 とりあえず知っていることを言ってみた。

 でもやっぱり怖いッス。

「なんだ今のは!? 魔法の呪文か!?」

 通じてなかった。くそぅ、求めてるのはそう言う反応じゃないんだよなー。

「リファス、遠距離だけではラチがあきません。範囲の広い近距離で行きましょう!!」

 待って。近距離とか近づくのは怖いし、それに範囲の広い近距離とか思いつかないんだけど。

「巨大化の魔法です、巨大化するのです!」

「え?」

 ちょっと何言ってるのか分からないんだけど。

「巨大化はリファスの十八番だったはずですよ! さぁ!」

『さぁ!』じゃないですよ、僕は出来ないですからね。

 そもそも巨大化ってドンくらい大きくなればいいの? 七つの○罪のディ○ンヌくらいですか、それとも巨人化したエ○ンくらいですか? もっと大きくウルト○マンとか超大○巨人くらいですかね。


 だからそんな期待した目で僕を見ないでください。俺は元々引きニートなんですよ!!

「……」

「……」

「……」

「…お…おおきくな~れ」

 可愛らしい呪文を唱えてみたら一瞬、目の前が真っ暗になって一秒も経たないうちに視界が明るくなった。

「流石リファス!!」

 トーカの反応からしてちゃんとできたようだ。

 とりあえず自分の手を見てみると、何故か皮膚の色は濃い青のような色になっていて、獣のような五本の指からは鋭く長い爪が生えている。足も同じように濃い青の皮膚で鋭い爪が生えている。見て分かるという事は勿論裸足だ。もしかして、と思って自分の頭に触れてみるとヤギのような、でもそれよりも確実に巨大な角が生えていた。

 さて、巨大化できたのはいいんだけど、これからどうすればいいんでしょう。はい、分かってます。敵に向かってけばいいんですよね。

「う…うぉぉぉぉ!!」

 何とか叫びながら敵たちの方に走っていく。三メートル以上あったはずの敵たちをそれなりに高い位置から見下ろしてるので、今の俺の大きさは十メートルくらいだろうか?

「お、おい! なんだあれは!?」

「ひるむな!! 金もらってるんだからちゃんとやれ!!」

 ………ん? 雇われてるんですか? あなた達は、誰に雇われてるんですか?


 とりあえず敵の一体をアッパーのように殴ってみる。

「ぐはぁ!!」

 するとそいつは高く、どこかにとんで行ってしまった。最後にキラリと光って。

 敵たちと一緒にそれをみてから、とりあえず敵に向かって腕を振り回して打撃攻撃を連発する。

「ウッ!」

 突然背中に何かが刺さったような感覚がした。

「へっへっへっへっ」

 汚らしい笑い声が聞こえた方を向くとそこには、赤い弓を持ったでかい人達の中でもさらに一回り程でかい人が立っていた。

「記憶を無くして、弱くなったなぁ、国王さんよぉ!」

 正に悪役と言った口調で、何故かヘリウムガスでも吸ったかのように声が異様に高い。

「……ぷっ」

「おめー今笑ったろ!! 好きでこんな声になったんじゃないんだからな!!」

「お前…ふふ……もう喋る…ふふ…な……www」

「笑いすぎだボケェ!!」

 本当にごめんなさい。

「この野郎……死ね!」

 赤い弓の人はその弓を左手に持って前に構え、右手の指の間に黄色に輝く矢を三本も持ってグググと引いた。

「黄色の矢は光速の矢、今のお前では避けることはまず無理だろう」

 ちょ!! それはしゃれになってないっすよ!! やべーよ、マジでどうしよう。

「リファス!! カウンター魔法です!!」

 遠くからトーカの声が聞こえてきた。チラッとそっちを見ると人の山の上に、気を失った三メートルある人の首根っこを掴んでる魔神のような方がいた。勿論しっかりと返り血が顔についてます。

 今まで感じたことのないような恐怖を感じた。そんなトーカさんを見たら、目の前にいる声と体がでかいだけの人なんて大したことなさそうに見えてきますよね。


 とりあえず落ち着いて状況を整理する。奴は今にも三本の矢を撃ってきそうで、距離は二十メートル程と結構近い。この距離で光速で矢を撃たれたら気付く事すらできずに死ぬだろう。だから撃たれる前に防御をしとくか、撃たれる前にこっちが攻撃して奴の攻撃を止めるかだ。

 俺は、後者を選ぼう。理由は簡単、攻撃は最大の防御ってことで。

 でも、問題はどうやって攻撃するかだ。俺の頭の中の漫画&アニメの引き出しの中をあさってみて思いついた。でもできるかな? やってみましょう!!

「はぁ!!」

 俺は大きく叫んでから、勢いよく右手を振り下ろす。

「ぐぉ!?」

 でかい人は高くて苦しそうな声を漏らして、地面にはいつくばるような形になった。近くにいる敵たちも同様にはいつくばる形になった。

 思ったよりもうまくできたみたいだ。みんな動くことが出来ずにもがいている。

「重力魔法ですか!? やっぱり記憶が無くてもリファスの魔法の才は健在ですね」

 トーカが人の山の上で少し驚いたようにそう言っている。というか人の山がさっきより高くなってないですか? ……気のせいだよね。

 さて、重力魔法を使って動きを止めたはいいけどこれからどうしたらいいんでしょうか。とりあえずトーカの方を助けを求めるように見ると、何故か目を輝かせて声の高い人に向かって走っていった。そして(恐らく返り血で)赤く染まっている右手でそいつの顔面を思いっきり殴った。

「ごぱぁ!!」

 声の高い人はそう声を上げて、あり得ない距離を吹っとんで行って、とうとう俺の視力では確認できないくらい遠くにまでとんで行ってしまった。


「全くどいつもこいつもだらしないなぁ」

 そう言って歩いてきたのは、頭には両側から牛のような大きな角が生えた、顔がすっぽりと隠れてしまう銀色の兜をかぶった四メートルくらいの大きな人だった。

 そう言えばどこかで聞いたことのあるような声……の気がする。誰の声だっけな……、わからん。

 その大きな人は近くに落ちていた小石を拾うと、それをピン! と親指ではじいた。

「……は?」

 自分の右頬を触ってみて、初めてそこから血が出てる事に気が付いた。

「次は当てるぜ」

 カッコイイ!! けどしゃれになってないくらいやばい。

「大丈夫です、リファス。そのくらいじゃ痛いで済みます!!」

 確かに死にはしないでしょうがね、トーカさん。明らかに奴はリーダー格でさっきの奴なんかより強いですよ。

 俺は変身魔法を解いてから、以前トーカが使っていた強化魔法を使ってみることにする。

 自分の右腕に腕力強化をかけると、返り血でも浴びたかのように肘から下が真っ赤に染まった。さっきのトーカの右手はこれで赤くなっていたのか。

 自分の中で小さな問題を解決してると、また兜の奴から弾丸よりも早い小石がとんできた。正確には奴の右手の親指あたりに小石が見えたので、自分の顔を右手で隠したらいつの間にか小石が右手に当たっていた。

 少し痛いが強化した右手に当たってくれたおかげで、俺の受けるダメージは僅かで済んだ。

 そして俺は腕力強化を右腕全体にかけなおしてから、近くに落ちていた野球ボールほどの大きさの石を拾って奴に向かって全力で投げた。

 威力は自信がないがコントロールには自信がある。これでも中学三年間は野球部に所属していたのだ。『秘密で終わった秘密兵器』なんて言う二つ名まで着いていたし。それもこれも引きこもりになる前の話だが。


 そんな俺の全力投球は簡単に奴に止められてしまった。

「流石、わ…リファスだな、手が焼けるかと思ったぜ」

 今わ、って言ったけどなにそれ、まぁいいや。

 奴はそう言うと同時に受け止めた右手から石が落ちた。よく見ると手のひらが真っ黒に焦げている。自分でもそんなに威力が出てるとは思わなかった。

「これは勝てそうにねぇな……」

 もしかして引いてくれますか? だったら嬉しいんですが。

「おい!! もういいか!?」

 奴が何故か空に向かって叫ぶと、パンと乾いた音がして緑色の煙が上がった。

 兜の奴が左手に持っていた小石を握り潰すと、俺の方に向かってゆっくりと歩いてきた。何故か兜の奴から攻撃をしようとする気を感じない。

 俺の前に来た兜の奴は、中腰になって俺の肩に手を置いてから口を開いた。

「合格です」

「は?」

 ……すみません、意味が分からないんですが……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー画像
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ