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追放されたドラゴン

「……起きたかい?」

 俺は空間魔法でガイウスの睡眠に快適なベッドルームを作ってあげた。

 流石にドラゴンが快適に眠れる程の広い空間を五時間も維持するのは少し疲れた。

「あぁ、済まないな。えー…っと」

「リファスだ。ミスティリア・アポロン・リファス」

「ありがとうリファス」

 ガイウスが起きたので俺は空間魔法解く。

「お前はこれからどうするんだ?」

 俺はとある答えを期待しながら、ワクワクを隠して言った。

「そうだなぁ…行くところもないしなぁ。自由きままに旅でm」

「なら俺のところに来ないか!?」

 ガイウスの言葉を遮るように必要以上に大きな声で言った。

「自由にたb」

「なら俺のところに来ないか!?」

「だから旅でm」

「俺のところに来ないか!?」

「旅でもs」

「俺のところに来ないか!?」

「………」

「俺のところに来ないか!?」

「………そうさせてもらうよ」

 よっしゃ! ガイウスが折れた。

 だってドラゴンですよ? ドラゴンが仲間とかうちめっちゃ興奮するやん!(倖田○未風。)勿論声には出してませんよ。

 男ならだれでも一度はドラゴンとか龍とか夢見るじゃないですか。

 俺はその後みんなと合流をしてからキリンの作った軽食をいただいた。

 そしてそれを食べ終わった後、全員が気になっていたことをサキナがゆっくりと口に出す。

「ガイウスさん、なぜドラゴンである貴方がこんなところに? それとその傷は?」

 全員が黙る。ガイウスは一呼吸おいてからゆっくりと話し出す。


 俺を含め全員がガイウスの言葉を疑った。そして自分の耳も疑った。

 ガイウスの話は思っていたよりも重く、みんな話を黙って聞いた。

 ガイウスの話は一時間程で終わった。でも口を開く者はおらず、場に沈黙が続く。みんななんと言ったらいいのか分からずにいたのだ。

 ガイウスの話を簡単にまとめるとこうだ。



 彼は元々他のドラゴン達をまとめる王族の一人で、しかもその王族の中でも頂点に立つ次期竜王の候補の一体だったらしい。

 今から約一年前、俺がこっちの世界に来る半年ほど前にあったドラゴンと人間の戦争で、ガイウスは部隊長を務めていた。彼は軍師と呼ばれるほどの戦略家で他のドラゴン達からも一目置かれていた。

 でも中にはそんなガイウスをよく思わないドラゴンもいた。そして運が悪いことにそんなドラゴンが彼の部下にいたのだ。

 命令違反などはざらにある事でガイウスも手を焼いていた。それでも何とか上からの命令道理に数々の民を制圧していった。

 ガイウスは必要以上の殺生を嫌う。必要以上に抵抗してきた者だけをみせしめに殺し、それ以外の民は奴隷として働かせた。でも金を払わないだけで、一日一回の食事と四時間の睡眠時間を与えた。

 その扱いが人道的だとは俺は思わない。睡眠時間と食事を与えるあたりは人を殺したくないと思っているのは本当かも知れないが、俺は納得できない。

 それでも人は死んだ。ガイウスの見ていないところで部下たちが憂さ晴らしに人間達をいたぶって殺した。それも一度や二度ではない。女も男も、子供も年よりも、何人も何人も死んだ。

 その事実をガイウスが知った時、ガイウスが私刑(リンチ)の現場を目撃してしまった時、彼は怒り狂って暴れた。

 そして彼が我を取り戻した時には目の前にあったのは三体のドラゴンの死体と今にも死にそうな人間達の姿だった。

 そして運悪く駆けつけた仲間のドラゴンに誤解されてしまったのだ。奴隷たちを私刑(リンチ)ししかもそれだけでは飽き足らず仲間まで殺した、と。

 勿論彼は弁解した。でもそれを聞き入れる者はいなかった。ガイウスを慕っていたドラゴン達まで簡単に手のひらを返した。

 結果ガイウスは天界を追放となった。罪人となった彼をかばうドラゴンなど一体も居なかった。それどころか王族の恥として数々の拷問を受けた。

 彼は痛みなど感じなかった。正確に言えば痛みを感じるよりも自分の無力さを感じてしまったのだ。自分がいままでやってきたことは何だったのか、偽善なのか、自分は何がしたかったのだろうか。

 そして無気力になってしまいそのまま地上を彷徨っていたら、空腹のあまり暴れ出してしまい今に至る。というらしい。


 天界を追放された元王族のドラゴン、それがガイウス。

 俺はふと思った、もし次ドラゴンと人間の戦争が起きたらガイウスはどちらにつくのだろうか。

 人間側? ドラゴン側? それともどちらにもつかない? わからない。そして聞くことも出来ない。


 ガイウスの話しが終わっても誰もタイミングを掴めないのか、動くことも喋る事も出来ない。

 そんな空気を変えようとしたのか、張本人のガイウスが話し出す。

「そう言えば皆さん知ってますか? ドラゴンには『創竜術(そうりゅうじゅつ)』という武術があるんですよ」

 創竜術、聞いたことのない武術だ。

「ドラゴンの大半はこれを習得しています。覚えといて損はないですから皆さんやってみませんか?」

 これから優愛の記憶の理由を探すのに、みんなを守るためにも俺自身が強くならなくてはいけない。

「俺はやるぞ!」

 すると俺に続いてみんな「やる」と言ってくれた。

「皆さん強くなりたいんですね、私はこれでも創竜術の師範代なんですよ。では早速やってみましょうか」

 俺達は広い場所に移動する。因みにキリンは見学。

「じゃあまず羽を広げて飛んでみて下さい」

「「「「「羽ねーよ」」」」」

 五人のツッコミが重なった。

「そうでした、君達はみんな人間だから羽はないんでしたね」

 コイツ…わざとか?

「じゃあ尻尾を使って薙ぎ払いの練習を…」

「「「「尻尾もねーよ!!」」」」」

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