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ドラゴン

「ルォォォォォォォォォォォォォ!!」

 宿の壁を崩したドラゴンは大きな雄叫びをあげる。天井をも壊したドラゴンはその大きな目で俺達をにらみつける。

 初めて見たドラゴンは俺の想像よりもはるかに大きく、城で飼っているどのペットもその比ではない。

「ルォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」

 さっきは反射でみんなを助けるために動けたけど、ドラゴンの強く大きく気高い遠吠えに体の動きが固まってしまう。

 久しぶりに感じた本当の恐怖、頭では分かっているのに足が動かない。

「皆さん逃げて下さい!」

 キリンの声で緊張が解けて、足が動くようになる。

 いつに間にか足のかゆみなど忘れていた。

 優愛は魔法を使えない、サキナやシャルルだって使える魔法は戦闘向きではない。キリンは、こんな子供を闘わせるわけにはいかない。

 トーカと俺で何とかしなければ。いや、トーカにはみんなの避難を任せよう。

 俺はトーカにみんなの護衛を指示してからドラゴンの正面に立つ。

 何故暴れているのかは分からないが、なんとしてでも止めなければ。中身は違うとしても十賢大魔道の一人、自分の仲間を守らなくてはならない。

 ドラゴンとの闘いには始まりの合図などない。

 硬い鱗に覆われた太い腕を振り下ろしただけなのに、瓦礫などは吹っ飛び地面には五、六メートルほどの穴が空く。

 人ほどの大きさの瓦礫がまだ避難しきってないトーカ達の方に吹っ飛んでいく。

「あっ!!」

 シャルルが足をもつれさせて転んでしまった。トーカが気づいてシャルルの方に走り出すが、あのスピードではとても間に合わない。

 俺が今いる場所から全力で走っても間に合うかどうかだ。

「ウラァァァァァァ!!」

 脚力強化の魔法を使い、今までに出したこと無いくらいの強い力で地面を蹴る。もっとスピードを上げるために両手を後ろに向けて、両手から勢いよく炎を出してブースターにする。

「どりゃぁ!!」

 何とか瓦礫を殴って砕くことが出来た。シャルルは無事だ。

 俺はすぐに方向転換してドラゴンに向かって行く。

 鋼鉄化と巨大化の魔法を使う。ドラゴンと同じ大きさになった俺は肉弾戦に持ち込む。

 鋼鉄化の魔法を使ったことで体中が鋼と同等の硬さになった。これで並の攻撃は通さないし、強力な矛としても使える。

 右のストレートをドラゴンに打ち込む。

 でも効いているのだろうか、すぐにカウンターで炎を吐かれる。

 が、何故か炎の威力が弱い気がする。ドラゴンの力って大体こんな物なのか? 初めてのドラゴンだからよくわからないが。

 その炎を払ってからドラゴンから少し距離をとって魔法の矢を放つ。睡眠の(スリープアロー)、文字道理睡眠効果がある。

 丁度ドラゴンの腹あたりに命中する。

「クァァァァァァ……ァァァァ……」

 ドサッと大きな音をたててドラゴンは倒れる。

 俺はドラゴンが完全に眠ったのを確認し、ロープで固定してみんなの元へ向かう。

 皆をドラゴンの元へ連れてくる。

「だ…大丈夫ですか?」

 やはりみんな少し怯えている。

「この子……けがしてる」

 トーカがドラゴンの翼を触りながらそう言った。俺はそこを攻撃した覚えはないから、恐らく元々怪我していたのだろう。とみんなに伝えようとしたが、

「流石にやりすぎですよ」

「何もここまでやることは……」

「クズ」

「動物虐待」

「ゴミ」

 後半の方はただの罵倒だったような気がするが、マゾの俺にはすべてご褒美。

 シャルルやみんなが治療を始めるのを俺は遠くから眺めていた。

 危険だと俺は忠告したが、「このままではかわいそう」という女子達の意見におされてロープを外した。

 また暴れたら抑えるの俺なんだよなぁ…。正直メチャメチャ怖かったんだよね。

 睡眠効果がきれる五時間が過ぎた頃、ドラゴンが目覚めた。ドラゴンは暴れることはせずあたりをキョロキョロと見渡す。場所はさっきの場所と一緒だ。

 ゆっくりと起き上がったドラゴンは、俺の方に歩いてきた。

「先ほどは申し訳なかった」

 中々渋い声でゆっくりとそう言ってドラゴンは頭を下げた。

「喋った!?」

 まさかしゃべるとは思ってもいなかった。それと声がカッコイイ。

「この治療をしてくれたのは…キミか? 感謝する」

「いや俺じゃなくて…」

 俺はシャルルたちの方に視線を送る。

 思いの外丁寧で礼儀正しく、低姿勢だ。

「申し訳ない、自己紹介が遅れた。私はガイウス、見てのとうりドラゴンだ。先ほどは怪我の痛みと空腹で我を忘れてしまった」

 するとキリンが突然俺達の前からいなくなり、数分後に沢山の料理を持って俺達の前に再び現れた。

「良ければどうぞ、足りなかったらまた作りますので」

 ガイウスは涙を流し、何度も何度もお礼を言ってから食事を口にする。

 何度も何度もお礼を言い、沢山の涙を流しながら夢中で料理を貪る。



 数十分後、満腹になったガイウスはもう一度深々と頭を下げた。

「礼を言う、こんな美味しい料理は初めて食べた。」

「お粗末様でした」

 ガイウスは頭を下げた拍子にそのまま地面に頭をつけて倒れてしまった。

 俺達は一斉にガイウスの元にかけよる。

 どうやら眠ってしまったようだ。

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