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協力するぜ

 可愛かったなぁ…と思いつつも俺は仕事を続ける。いきなりほっぺにチューされてテンションが上がらない童貞がいるだろうか、否、いるわけがない。

 しかも女の子らしい良い匂いまでした。

 ムラムラがこんにちはしてしまったじゃないか。

「ムフフフ」

 おっと、笑みが漏れてしまった。なんな良かったという感想しか出てこない。自分のボキャブラリーが貧弱すぎるのか、それとも童貞がいきなりチューされたら必然的にこうなるのか、どっちだろう? きっと後者だろう。

 だめだ、ニヤニヤが止まらない。自分でも気持ちが悪いってことぐらい分かってる。それでもニヤニヤが止まらない。

「なにニヤニヤしてんですか?」

「まっ………!」

 ドアの隙間からサキナが覗いていた。しかも若干ひいている。いや、結構ひいている。

 お決まりだけども、結構精神的にキツイものがある。

「ちょ…! ノックしてよ!」

「しましたけど、リファスのムフフフって声が聞こえてきたんで」

 これもお決まりである。でも泣きたい。

「まぁ別にいいです。それよりも忘れてませんか? 明後日は国王誕生日ですよ」

 そう言えば忘れていた。

 国王誕生日とはその名の通り、その国の国王の誕生日である。その日は祝日とされ何故か俺は国王の特権がフル活用できるようになる。国中のほぼすべての施設が二割ほどの値段で使用できるようになる。こんなに太っ腹で大丈夫なのだろうか、あくまで俺一人だけなので大した問題ではないらしい。

 と言っても国王の仕事とはブラック企業レベルの仕事量なので、俺はいつも道理に仕事がある。ただ午前中で仕事を終わらして、午後からは少しは特権を使うために街へ行く。

 というわけで明後日は屋内プールに行くことになった。この後の夕飯の時にみんなに言うつもりだ。因みに行くことになったと言ったが、俺が勝手に今決めた。

 夕飯まではまだ三時間程ある、ちゃっちゃと仕事を終わらよう。

 サキナも仕事があるために自室に戻っていった。



 そして夕飯が出来たとリニアから連絡が入ったために、俺はキリがいいとこで仕事を終わらせていつもの場所に向かう。既に全員そろっていて、ご飯も並べられていた。

 そして俺が席についてからみんなで一緒に食べだす。最近はメイドや執事も都合がつく者は一緒に食事をするようにした。そのため毎回大所帯になってしまう。それでも楽しいからオールオッケーだ。


 ご飯を食べ始めて少し経った時、俺は国王誕生日に屋内プールに行くことにしたという事をみんなに伝えた。

「プールですかぁ!」

 真っ先に反応したのは優愛だった。満面の笑みである。

「プールか、しばらく行ってなかったからたまにはいいかもな」

 お姉さまは興奮を抑えながら落ち着いたようにそう言った。でもだいぶソワソワしている。

「そうだ! 今回はメイドと執事もみんなで行きませんか? 貸し切りにしてもらって」

 それはいい案だな。そして簡単に貸し切りにしてもらうと言えるお金持ち発言。毎年数人だけお付きの者をつけるだけで、使用人の殆どはお城で留守番らしい。

「本当ですか?」

「マジですか!?」

 リニアとジニアも嬉しそうに立ち上がってそう言った。

「はい、みんなで行きましょう。ただしジニア、てめーはだめだ」

「………ッ!!」

 ジニアの方に右手の掌を向けて冷たく言い放ったサキナの突然の発言に、ジニアはさっきとは一変してショックを受けてフリーズしてしまった。ショックのあまり声もでないようだ。

 なんとなく理由は分かるけど、一応聞いておこう。ジニアの為にも。

「何でジニアはダメなの?」

「だってジニアは水着の私達をエロイ目で見てくるじゃないですか。いつも以上に」

 想像道理だよね。

「お願いします私も行かせて下さい! このとうりです!」

「「「「ダメ」」」」

 フリーズが解けたジニアが見たこと無いくらいピシッと綺麗な土下座をしたのだが、正室と側室の皆さんが声を合わせて拒否をした。

「お願いします!」

 だがそれでもジニアは諦めない。

「「「「ダメ」」」」

 だが即答である。

 その後何度か同じやり取りが行われた。

 結局ジニアが留守番という結論でまとまった。予想道理だが。

 因みに言うと俺も水着の皆さんをいつも以上にエロイ目で見ます。が、それでも行っても大丈夫とはこれが主人公補正か。ヒロインたちにスケベなことをしようとも何故か好感度が下がらずに逆に上がることもある、それが主人公補正。俺が主人公かは分からないけど、憧れのあのお方に少しは近づけただろう。

 …え? あのお方とは誰かって? あのお方とは尻尾の生えた宇宙人の三姉妹とか、兵器の美少女姉妹とかアイドルの宇宙人とか、ツンデレ巨乳風紀委員とか普通の女子高生とかとハーレムを築こうとしてるあのお方です。

 さしずめジニアのポジションはあの校長って事になるな。こっちはすぐに服を脱がないけど。

 ジニアが留守番と言う形になったが、多分どんな手を使ってでもついてくるだろう。

「ジニア、食事が終わったら俺の部屋に来てくれ。仕事を頼みたいんだ」

 というわけで俺はまだ少し落ち込んでいるジニアにそう頼んだ。ジニアはテンション低めに「はい」とだけ答えると残りのご飯を食べ始めた。



「お前は、諦めるのか?」

 部屋に来たジニアに俺は唐突だがそう言った。

「なんのことでしょうか? 頼みたい仕事とは……?」

「みんなの手前そう言ったが、本題は別にある」

「はぁ……」

 俺はいつもの執務机のところのイスから立ち上がってジニアに歩み寄る。

「プールだよ。本当にお前はいかないつもりか?」

「……だって皆さんがダメって…」

 俺は下を向くジニアの両肩を掴む。

「お前は本当にそれでいいのか!? 水着が見たいんじゃないのか!!!」

 ジニアをまっすぐと見つめて俺は力強くそう言った。

「み……見たいに決まってるじゃないですか!! プールに行きたいですよ!!」

 俺はジニアの肩を離して落ち着いた口調で話し始める。

「その気持ちがあれば十分だ。協力するぜ」

「ありがとうございます」

 俺はジニアとガッチリとアツい握手を交わした。


 勿論俺は俺でちゃんと別の目的がある。言い方は悪いがジニアを利用しよう思っている。だから協力してもらう。

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