触らせて
俺達はなんとかお城のほうに戻ってきた。なんとか誰にもばれないように自室に戻ろうと、裏口からお城に入った。が、入った瞬間サキナに見つかった。
「……ハロー」
苦笑いでそう言った瞬間、サキナは俺と優愛の手を無言のまま掴んで俺達はそのまま自室に連れていかれた。
俺の第六感が言っている、多分この後自室にて説教だと。いやでも一応病人だから寝かしてくれるかな?
俺の部屋にはシャルルにトーカ、ジニアにリニアとお姉さまにマキュリそれにジワブとクリオネまでいる。
「えっと……皆様おそろいで、何か始まるんですか?」
誰も答えてくれずに、じっと俺達を見つめるだけ。少しの間の後に、トーカ俺を見つめながらがベッドを指さした。座れってことかな?
俺は指示道理にベッドに座る。するとトーカが歩み寄ってきて俺の上着をめくってきた。
「ちょっ! ちょっ!?」
「どこも怪我ないですか? 体調は…元々悪いか」
一応心配してくれたのか、ありがとうございます。
「大丈夫」
「なら良かったです。とりあえず今は寝て体調を戻して下さい。それまでお説教は待っててあげます」
なんだ説教するんかい。いやでも今はしないだけ優しさなのかな。
その後俺はお礼を言ってからベッドに横になる。多分自分が思っていた以上に体力を消耗していたのだろう、すぐに眠ることができた。
その後俺が起きてからもう一度キャメルが診察に来てくれた。案の定体調は悪化しており薬をよく飲んで安静にするように、と厳重注意を受けた。
余談だが、キャメルは「仕事を増やさないで下さいよ…」などと文句を言っていた。本当にごめんなさい。
自分が感じている以上に体調は悪かったみたいで、完全に体調が回復するまで一週間程かかった。
因みにその一週間の間、トーカの命令で交代でメイドと執事が一人づつ部屋の中で俺を監視していた。理由は説明されなくともすぐに分かった。俺がまた勝手に部屋から抜け出さない為だろう。
優愛自身はなにかしら吹っ切れたらしく、以前よりもよく笑うようになった。俺が寝込んでいる間にトーカとリニアにこっぴどく説教されたみたいで、何度か優愛が俺に「ごめんなさい」と謝りに来た。俺自身体調が悪化したもののそこまで気にしていないし、なにより優愛に「ハル」と呼ばれたのが嬉しかった。
体調が回復した後は、やっぱり俺もトーカとリニア、おまけにサキナとシャルルにも長々とお説教してくれた。勿論俺は正座だ。
俺は、というか大体の人はそうだと思うが説教と言うのは好きではない。だから聴力強化の魔法を使っていた。それじゃよく聞こえちゃうじゃん? と思うかも知れないが、強化と言っても周りの音を聞こえないように強化することだって可能だ。例えばだが、雑音がひどい時などはその雑音をシャットダウンすることで必要な音だけを聞くことが出来る。
今回はほぼ全ての音をシャットダウンしただけの事だ。そして頃合いを見計らって聴力強化の魔法を解く、これで完璧。と思ったけど、何故か全く聞いてなかったのがばれてトーカにグーで殴られた。
流石に痛かったので、その後の説教はちゃんと聞いた。
結局すべてが終わるまでに五時間程かかった。よくまぁそんなに喋れるもんだなと思ったが、勿論口にしなかった。案の定足が痺れて、歩くどころか立つことすらできなかった。
そして風邪を引いた原因である『胸触らせて事件(今命名)』の被害者(?)のお姉さまに土下座しに行った。
お姉さまは長々と説教はしなかったけど、「いい大人なんだから…」と大分まともなことを言われた。そして最後に「嫁さんに触らせてもらえ」とおっさんみたいな事を言って許してくれた。
トーカかシャルルかサキナあたりに今度言ってみようかな。でもトーカに言ったら光の速さで殴られそうだし、シャルルは…どうだろう? 多分笑って流されるだろうな。そしてサキナは少しの間の後に、小声で「無理です」って言いそう。
ていうか俺達夫婦だよ!? なんで今まで一回もそういうイベントないの? 俺既婚なのに童貞、泣きそう。いや卒業イベントはないまでも少しのエロイベントくらいあっていいはず。
それに忙しすぎて自己処理もまともにできてないんだよ。現在平均して二週間に一回レベル。元の世界では二日に一回かそれ以上くらいだよ。溜まるんだよね。
あと良いオカズがない。マイPCに保存されたお宝の数々が恋しい。
だから今はなんとか妄想でやってるんだよね。童貞の妄想力なめんな。とはいえそろそろ限界なんだよね。本当に殴られるの覚悟でトーカにお願いしてみようかな。いや、シャルルとサキナなら殴られないからそっちに頼んでみようかな。いや待て、第三の選択肢としてリニアにクリオネがいる。そして伝説の第四の選択肢、マキュリと優愛もある。うーん、第三と第四の選択肢に関してはどういう反応するか分からないんだよね。正確に言えばリニアはなんとなくわかるがクリオネは全く想像できない。リニアは多分殴られるか蹴られる。
これだけ聞くと誰でも良いみたいに聞こえるが、ムラムラしてしょうがないのだ。しょうがないじゃないか、童貞だもの。
と、言うわけで言ってみる事にした。でも今あげた人達に言うのはとても緊張してしまうので、一度一緒にお風呂に入ったカガリとイサリに言ってみることにした。別に二人なら恥ずかしくないというわけではないが、練習?
あぁ、俺っていつからこんなに変態になってしまったのだろうか?
小学生の時はこんなことは頭の片隅にもなかった。友達とサッカーしたり野球したり、ゲームしたりするのがすごく楽しかった。
中一の頃、初めて自分で処理した。そのぐらいから色々な知識を得るようになった。
高校二年の頃には既に出来上がっていた。
普通の男子の成長なのだろうが、多分必要以上におかしな方向に成長してしまったのだろう。
二人を自室に呼び出した。
「胸触らせて下さい」
勿論土下座だ。国王の土下座だ。国を背負う者が簡単にはするべきではない土下座だ。
「それはご命令ですか?」
カガリの単調な声。
「お願いです。嫌なら断って下さい」
断るなーと念じながらこう口にしたのは言うまでもない。
イサリは俺に頭を上げて、立ち上がるように指示する。
そして突然カガリが俺の頭を胸のところに引き寄せて、抱きしめる。
一瞬何が起きたのか分からなかった。いや、今も分からない。
カガリが手を離すと、次はイサリが俺の頭を自分の胸に引き寄せる。
洋服越しでも柔らかいのが分かる。最高だ、昇天してしまいそうだ。
「これで…満足ですか?」
優しいイサリの声が頭の上から聞こえてくる。俺が頭を上げると、そこには可愛らしくほほ笑むイサリの顔があった。
「みんなには内緒ですよ、リファス様」
カガリはウインクして、人差し指を自分の口の前に立ててそう言った。
その後二人は通常業務に戻っていった。
しばらく俺は頭が働かずに、一人になった自室でフリーズしてた。
「メイド…バンザーイ……」