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ハマってしまった

「ふぃ~、やっと終わったぁ~」

 やっとたまりにたまっていた仕事が片付き、一息つけた。昔の俺からしたら考えられない程働いた。

 さてと、一息つくためにお風呂にでも入ろうかな。時間は朝の六時だから朝風呂って事になるかな。

 脱衣所で服を脱いで、ハンドタオルを一枚持って浴場に入る。

「おぉ、お前も朝風呂か」

 この喋り方は最近出番が少ないラファスお姉さまだ。

「ここ男風呂ッスよ?」

 姉という立場でも、ロり体系でも俺が興奮するには十分な程の裸体です。本当にありがとうございます。

「聞いてねーの? 今女湯は工事中なんだよ」

 俺は「ふーん」と言いながら浴場から出ようとするとお姉さまに止められた。

「まぁ待てや、たまには姉弟水いらずで話そうや」

「ここは風呂だから水あるけどな」

 お姉さまは俺にボケを華麗にスルーして浴槽から出る。

 シャワーのところのイスに座ってお姉さまは頭を洗い出す。

 俺もその隣に座って頭を洗う。因みに隣に座った理由は間近で裸が見たいからとか言う理由ではない。断じてそんな理由ではない。ただ近くの方が話しやすいと思ったからだ。まぁ裸は見ますけど。

「どうだ? 仕事の方は?」

「まぁそれなりだな」

「記憶の方の手掛かりは何か見つかったか?」

「さっぱりだ」

「こないだな、優愛が言ってたんだ。私は何者なんだろうって、私はリファスさんの足枷にはなりたくないって」

「………」

 なんて言っていいか分からなかった。今俺が探しているのは俺や優愛がこっちの世界に来た理由だ。別に優愛を足枷だと感じたことなどない

 俺は頭を洗い終わったので体を洗い始める。お姉さまも俺より少し後に洗い始める。

「まぁ、なんて言ったらいいかわかんないよな。私はな…お前の事を姉弟だと思っている。リファスも、志木春也も」

「………」

「つーかさ、いつまで見てんの?」

 やっぱり視線に気づいていたか。因みにお姉さまは服を着ていた時は分からなかったが、脱ぐと意外にある。ロり巨乳って程ではないが、手から少しはみ出るくらいのサイズで揉んでみたい。ここで「姉弟だからいいでしょ?」なんて言ったら、世間では近親○○になってしまう。でも多分お姉さまの場合は、多分光の速さで無言の腹パンを入れられる。きっとそうだろう。でも男には、リスクを負ってでもやらねばならないことがある。

「胸触っていい?」

「………」

 言ってやったぞ、言ったぞ。でもお姉さまは無言で体を洗い続ける。

 僅かに続く沈黙。

「いいぜ、別に」

「へ!?」

 帰ってきたのは予想外の答えだった。

「昔は一緒にお風呂入って裸で取っ組み合って遊んだもんな」

 キタ―――――――――!!

「じゃあ遠慮なく」

 俺がそう言って手を伸ばした、その時。

 一瞬にして視界が周り、そして地面に頭をぶつけた。

「とでも言うと思ったか、バカ野郎が!」

 どうやらお姉さまが一瞬にして俺の座っているイスを引き抜いたらしい。そして俺は倒れた。

「実の弟に胸を揉ませる姉がどこにいる」

 お姉さまは裸のまま立ち上がり、俺の顔をグイグイと踏みつけてくれている。

 裸なので勿論秘密の花園も丸見えで、しかも素足で踏んでいただいているので一瞬もう死んでもいいと思った。

 お姉さまは俺を踏みつけながらずっと文句を言っているが、俺敵にはとても嬉しい状況です。本当にありがとうございます。

「なにニヤついてんだよ。気づかないとでも思ったか」

 やっぱり気づいてましたか、流石はお姉さま。

 お姉さまは突然踏むのをやめて、俺に立ち上がるように指示した。

 もっと踏んでほしかった俺は、渋々立ち上がる。

「知ってるか…? 最近街では『壁ドン』って言うのが流行っているらしい」

 知ってますとも。確かマンションとかでご近所さんがうるさい時にやるドン! ってやつだっけ。最近は女子がドキドキするシチュエーションって意味で使われてるみたいだけど? (※ただしイケメンに限る)

「そこでだ、私もお前にそれをやってやろう」

 ちょっと嫌な予感しかしないなー。なんて思っていたら、お姉さまに中腰になるように指示された。当然俺は従う。お姉さまは俺の頭を鷲掴みにするとそのまま少し後ろに引いた。

「壁ドン」

 目の前のコンクリの壁に思いっきり頭をぶつけられた。とっさの事に反応出来ずに、気づいた時には何故か風呂の隣にある脱衣所が視界に入っていた。

「…は?」

 目の前が赤く染まっていく。

 ……めり込んでるんだ。

 数分して目の前にお姉さまが現れた。

「メイドたちは呼んでやるから、しばらくそうしてろ」

 もう二度と、絶対に、お姉さまに向かってバカなことはしないと誓った朝の六時半であった。




「リファス様!!」

 二十分くらいしてメイドたちが慌てて脱衣所に入ってきた。何故かガスマスクをつけ、手には何枚も重ねたゴム手袋をしている。

「浴槽で脱糞したって本当ですか!? 国王ともあろう人がなんてことを……?」

 もっとマシな呼び方はなかったの? 俺もうくじけそう。

 メイドさんは当然のように俺の今の状態を見て首を傾げている。だって一応国王って立場の人間が、全裸で壁に頭がめり込んでるんだもの。しかも貫通済みだし。

「えっと…なにしてらっしゃるんですか?」

 当然の質問である。

「えっと…見てわかんない?」

 俺は何を言っているんだ? 分かるわけがないのに。多分十人中十人が「分からない」と答えるであろう。でもあまりの虚しさにこう聞かずにはいられなかったのだ。

 因みにメイドさんの答えは当然「分かりません」だ。

 俺はとりあえず引き抜いてもらう事にしたのだが、押しても引いても俺の体は抜けない。

 メイドの一人が俺の頭を脳天から思いっきり殴りまくっているが、俺を助ける為だと信じて口を出さないでおく。

 でももう一人のメイドが思いっきりけつを蹴り上げてくるので、穴から抜けずに俺の体が圧縮されていく。と言うか頭殴るのとけつ蹴り上げるタイミングが合ってるのって打ち合わせでもしたの?

 そろそろツッコミますよ? いいですね?

「なんでやねん!!」

 なんかよく分からないけど関西弁になっちゃったじゃないか。バリバリの関東人なのに。

「なんで二人して同時に前と後ろから叩くの? これじゃ出れるわけないでしょうが! どっちか片方から引っ張るなり押すなりしてよ!」

 浴場の中にいたメイドが脱衣所のほうに出てきて二人顔を合わせる。

 二人は声を合わせて「じゃあ…」と言うとさっき脱衣所の方にいたメイドが浴場のほうに、浴場にいたほうのメイドが脱衣所に行き、また同じことを始めた。

「だから何でだよ!!!」

 勿論ツッコミましたとも。

「二人の位置変えただけじゃないか! 途中からおかしいなって思ってたけどあえて口を出さなかったけど案の定の結果だよ!」

 俺って元々ボケの立ち位置なのに、ツッコミになるなんて珍しいよ? しかも個人的には結構良いツッコミが出来たような気がする。

「あんたら仕える主人になんてことしてくれてんの!? 給料三割くらい減らすよ!?」

 実際にはそんな事しませんけどもね。だってメイド大好きだもん。

「人にもの頼む態度じゃないけどさ、さっさと助けて下さいよォォォ!!」

 地面に足を思いっきりついて上半身を起こしてみると、壁がガラガラと音をたてて崩れた。どうやら抜け出せたようだ。

 最初っからこうやっておけばよかった。

 やっと抜け出せたために一安心していると、大きなくしゃみが出てしまった。

 ずっと裸でいたから体が冷えちゃったかな。もう一度湯船につかって体を暖めよう。

「あ、そうだ。二人ともありがとな」

 俺がお礼を言うと二人のメイドは頭を下げてから壁の修理を始めた。

「壁直すのは後でいいから二人も一緒に入らない」

 お姉さまにセクハラしてあんなことになったのに、どうやら俺はまだ懲りてないようだ。

 二人のメイドは一瞬見つめ合ってから笑顔で「じゃあお言葉に甘えて」と言って服を脱ぎ始めた。

 よっしゃ! ありがとうございます。

「では失礼します」

 二人のメイドは服を脱いでから、シャワーで軽く体を流した。そして浴槽の中に入ってきた。

「悪いね、迷惑かけて」

 一応手伝ってくれたので俺はお礼を行っておく。

「いえ、これもメイドの務めですので」

「そうか、えーと…」

「カガリです」

「イサリです」

 カガリと答えた方はロングヘアーの金髪で少しつりあがった大きめの目、そして瞳の色はきれいなブルーだ。鼻はそこそこに高く、右目の下にある泣き黒子と笑うと見える白い歯がチャームポイントと言ったところか。小顔で綺麗な桜色の唇で全体的に整った顔をしている。

 イサリと答えた方はきれいな銀色のロングヘアーに少し垂れている大きめの目で、瞳の色はきれいなグリーンだ。こちらも鼻はそれなりに高く、左目の下の泣き黒子とこちらも唇の隙間から除く白い歯がきれいだ。唇もきれいな薄ピンク色で、顔はカガリとよく似ている。

 二人とも胸は特別大きいわけではなく大体A~Bくらいってとこか。二人とも風呂なので髪をまとめている。湯船の中はタオル禁止なので俺も含めて全員裸だ。

「もしかして二人って姉妹?」

「はい、双子です。こちらのカガリが姉で、私が妹です」

「まだ私達はリファス様に仕え始めて三か月の新人ですので、至らないところもあるかと思いますがよろしくお願いします」

「いやいやこちらこそ」

 お互いぺこりと頭を下げる。

 その後は三人で他愛ない話をした。二人とも柔らかく透き通った声をしており、カガリの方は少し早口なようだ。

 二十分くらい経ったところで俺達はもう一度体をよく洗ってからお風呂を出た。

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