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お世話になりました

「にーさんジュースのむ?」

 お風呂から上がって二人で廊下を歩いていたら、カブト君がそう話しかけてきた。

 にーさんと呼んでくれるのが嬉しくて、ついついにやけてしまう。

「いいの?」

 俺がそう聞いたのだがカブト君は答えずにずんずんと歩いて行く。俺もそれについて行く。

 そのまま少し歩くと、到着したのはキッチンだった。カブト君は冷蔵庫を開けて、牛乳瓶のようなものを二つ取り出して一つを俺に渡してくれた。

 俺に渡してくれたということは飲んでいいよって事だろう。なので俺はありがたくいただく事にした。中身はピンク色の液体が入っており、まずそうには見えない。

 ふたは時計回りに回すことで簡単に開いた。中に入っているピンク色の液体を少し口に含む。味はイチゴジュースとカルピスを混ぜたような味で、それにあまり強くない炭酸が入っている。いわゆる微炭酸というやつだな。

 個人的な感想は「おいしい」だ。

「これなんて飲み物?」

 カブト君にそう聞いてみるけど、夢中で飲んでて口が塞がってしまっているために答えられないようだ。

 満足したのか、カブト君は瓶を口から離すと大きなげっぷをしてから答えてくれた。

「カルトス!」

 人の名前みたいな名前だな。別に珍しくないが。

 その後は、カブト君が寝落ちするまでずっと一緒に遊んでいた。

 個人的にはカブト君が可愛かったのでいつまでも遊んでいてもよかったのだが。しつこいようだが勿論可愛いと言ってもそういう意味ではない。俺はホモでもショタでもロりでもない。ロりになびきそうになったことは何度かあるが。つまり俺は女好きだ。こう言うと変態みたいだが、実際に変態なのでなんら問題はない。一時期変態紳士とか言っていたがもう変態でいい。俺は変態だ。変態で悪いか。


 とりあえず俺は自分の部屋に戻る事にした。確か二階で階段から見て西に三つめの部屋だったかな。因みにカブト君の部屋は一階の一番奥の部屋だった。部屋に到着したけどあってるか不安だったためにそぉーっと開けて中を覗いてみる。

 うん、間違ったみたい。サキナの部屋だった。中ではサキナが例の漫画を描いているようだった。反応に困るからあんまり触れたくないんだよな、あれは。実際困ったし。

 そもそも西とか東とか言われてもわかんねーんだよ。右とか左で言ってくれよ。かろうじで北と南が分かるくらい。でも三回に一回くらいは間違える。いや、もっとかな。

 とりあえず俺は反対側に向かって歩いて行って三つめの部屋のドアを開ける。今度は自分の部屋だったようだ。

 俺は部屋の奥の右端にあるフカフカのベッドにダイブした。思いのほかフカフカ具合が気持ちよくて、気づいたら窓から明るい陽射しが注ぎ込んでいた。

「うん? え!?」

 一瞬何が起きたのか分からずに素っ頓狂な声を上げてしまっていた。ダイブしてそのまま寝てしまったのだろう、と少しはっきりしない頭で自己分析をしてから顔を洗うためにドアの脇にある水道に向かう。出てきたお湯がいい感じに温かくて、手にお湯をかけ続けてるだけの状況なのに少し幸せを感じてしまう。

 五分ほど温まったところで顔を洗ってスーツに着替える。今日はサニア王国とディノポネラ王国との友好協定を結ぶ予定がある。実際のところ今回の会談はこれがメインだ。

 因みに今回の友好条約を結ぶことでの利点は二つある。一つ目は一般人がお互いの国を自由に行き来できるようになる。勿論簡単な検査などはするが、元いた世界で言うパスポートが不必要になる。因みに俺もこっちの国に来る時に検査員に自分の物を提示した。勿論入国料も他の国に行き来するときに比べて格安になる。二つ目はたまには二つの国合同でなんかイベントでもやろうねーって言うちょっとした約束だ。

 二つ目については利点なのか分からないが、俺は利点だと言い張るぞ。

 この協定の話は本物のリファスがいた時から進めていたのだが、後は同意の印を押すだけって時にリファスが死んでしまった。なので今になってしまった。

 因みになんでスーツを着たかというと、勿論正式な場だからという理由とメディアが来るからという理由がある。

 十一時から始まる調印式(仮)の為に俺は朝食を食べて、今までにないくらい全力で歯磨きをした。

 全て用意が終わっても三十分以上余裕があったため、俺は落ち着けずにそわそわしていたらしい。(トーカがあとで言ってた。)

 ガチガチに緊張していた調印式(仮)もアッという間に終わってしまい、それでも少し疲れた。

 はっきり言って説明するほどの事が無かった。ただペラッペラの神にこちらの文字で『リファス』と彫られているハンコを押してから、リオックさんと握手してる様子をメディアに写真らしきものを撮られただけだ。しいて言うならメディアの人は全員が身長が五十センチにも満たない、髭もじゃもじゃのおっさんばっかだった事くらいだろう。あれが最近よく聞く小さいおじさんというやつか。

 十一時スタートなのに午前中にすべて終わってしまい、午後には帰ることになった。リオックさんの城にではない、俺の城にだ。


「短い間でしたがありがとうございました」

 俺達全員は深々と頭を下げる。

「ふふふっ、こちらこそありがとうございました」

 トーカと夫人は握手を交わし、俺とリオックさんは握手を交わす。

 数秒してお互いに手を離して俺達は車に乗り込む。

「次皆さんが来るときまでにお風呂の壁はもう少し高くしときますね」

 ばれてたんだ…もうしない、覗きは絶対にもうしない。

 俺とジニアだけ作り笑いで冷や汗を流し、女性陣はニコニコと笑っていて逆に怖い。リオックさんは何のことか分かってないみたいだ。

「と、とりあえずありがとうございました!」

 俺は話を逸らすように言ってから車に乗り込む。

「それはどういう意味のですかぁー?」

 夫人が呼びかけるように言った。

 逸らせていなかったようだ。

「次はうちの国にもお越しください。お風呂の壁は高いのでご安心下さい」

 トーカはまだ引っ張るようだ。


 全員が車に乗り込んだのを確認してから、レオが車を走らせる。

「よし、帰るか」

 なんとなく締めてみた。

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