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「どうですかー?」

「ぼちぼちでんなぁ」

 屋根の修理の事である。魔法庫の二つ名を持つ俺でも修理の魔法は使えなかった。

 少し話が逸れるがこの世界の総人口は約八十三億人、国の数は二百五十以上ある。魔法はこの世界で生活する人間が例外もあるがみんな使えるもので、人間の数だけ魔法がある。つまり簡単に言うと魔法の数は約八十三億もの数がある。

 因みに一人につき使える魔法の数が平均二~三なので少なからず二つ目、三つ目の魔法は必ずしも誰かと同じ魔法を使う事になる。

 いくら俺が、リファスが『魔法庫』なんて呼ばれてても使える魔法の数は精々百~二百くらい。一般人からしたら勿論すごいことなのだが、八十三億分の二百。つまり使えない魔法が八十二億九千九百九十九万九千八百あるのだ。使えない魔法の方が断然多い。


 つまり何が言いたいのかと言うと、釘打っていたら思いっきり指を叩いてしまいめちゃめちゃ痛いという事だ。

 俺は胸の前でパンッと両手を合わせて、その後手の平を屋根の上に置く。

 これをやったら一瞬で直るような気がしたんだけど、無理だった。

 というか俺は一国の国王だ。自分で壊してしまったとはいえ、こういう事は国王の仕事ではない気がする。国王に修理を要求する男達も男達だが、それに応じてしまう俺も俺だ。前々から思っていたが俺は自分で思うほど国王としての威厳はないのかも知れない。

 良く言えば親しみやすいが、言ってしまえば国王らしくない。そもそも国王らしくってどうしていたらいいんだ?

 どーんと構えてほとんどの事を使用人たちに任せておけばいいのか? 権力を利用して何かすればいいのか? でもそれだと思いつくのは勿論エロい事と悪い事が殆どだ。

 そんなことを考えていたらまた指をハンマーで叩いてしまった。

 因みにトーカは手伝ってくれない。男達と一緒に帰ってきた子供たちと一緒に遊んでいる。正確に言うと男達をパシリに使いつつ、子供たちと遊んでいる。

「飲み物買ってきて」

「はいはいただいま」

 まるで女王様だ。勿論SMのじゃないですよ。

 とらえ方の問題なのだろうが『王女様』と言うとファンタジーな感じがするが、『女王様』と言うとエロチックな感じがする。俺はMだがドMではない。鞭で叩かれたりロウソク攻めなどはあまり好きではないが、言葉攻めや踏んでくれるのは大好物です。

 …え? 興味ない? ですよね分かってます。

「リファスー。そろそろ休憩したらどうですか?」

 俺はお言葉に甘える事にして屋根から降りた。

 修理は大体七割程終了しているのであと少しだけど、休ませてもらおう。

 俺はイスに座ってトーカからストッカーと市販のお茶をいただいた。

「あ~、お茶がうめぇ」

 俺はおっさんだな、精神的にも肉体的にも。

「おじさんなにしてたの?」

 この保育所の子供だろうか、ズボンのすそを引っ張ってきた。

 それよりもおじさんと言われて何も抵抗を感じなかった。まぁ五歳、六歳くらいの子供からしたら十八の俺なんて十分おじさんだろう。リファスは二十三だっけ?

「屋根の修理だよー」

 笑顔で俺は答える。

「ふーん」

 男の子は興味なさげに答えると前方転回してからどこか行ってしまった。思わず二度見してしまった、だって五歳くらいの男の子がスキップするくらいの感覚で前方転回したから。俺は当然のようにできないぞ。

 そろそろ俺がここに来てから一時間が経つ。二人の子供もそろそろ起きてきてもいい時間なのだがよほど疲れていたのだろうか、いまだに起きる気配がない。

「そう言えばなんだけど、この街で医学に詳しい人とか知らないですか?」

 まだ時間があるので少しでも記憶を戻す方法を探しておこうと思った。

「……心当たりはないですね。でも少し遠いですが医療大国であるラッド王国なら、医学に関することは他の国より技術なんかがしっかりしてると思いますよ」

 ラッド王国か…。初めて聞く名前だな。国に戻ったら少し調べてみよう。

「何か病気でも抱えてるんですか?」

 厳つい顔とは正反対の優しい声で男は話しかけてくる。

「…実は俺、記憶喪失でして。どうにか記憶を戻す方法を探しているんです」

 男は触れてはいけないと思ったのか、少し控えめに「すいません」と言ってきた。勿論俺は紳士な対応で「大丈夫です」と答えた。


 とりあえずそろそろ出発しないと待ち合わせの時間に間に合わなくなる。因みに場所は俺達が別れたところだ。

 というわけで二人を起こそう。

 俺は二人が寝ている奥の部屋に入って行って、二人に優しく声をかける。でももぞもぞっと動くだけでやっぱり起きなかった。

 本当に疲れたんだな。

 俺は仕方ないからカブト君をおんぶして、トーカにはユスリカちゃんをおんぶしてもらって戻る事にした。

「今日はありがとうございます。それと修理途中ですけどそろそろ時間になってしまうんで申し訳ないです」

 俺は軽く頭を下げる。それに続くようにトーカも頭を下げてくれた。

「こちらこそありがとうございます。屋根の方は職員で修理の魔法使える者がいるんで大丈夫ですよ」

 じゃあ俺が直す必要なくない? いやでも自分で壊したんだから自分で直すのは当然か。そこに国王だとかの立場は関係ない。


 寝ている子供が重いっていうのは本当だったみたいだ。親戚も、兄弟もみんな年が近かったから小さな子供をおんぶや抱っこしたことなど今までなかった。

 でも重いと言っても子供の体重だ、歩けない程ではない。

「では、ありがとうございました」

 俺達は深く頭を下げてからその保育所を後にした。


 帰る途中でカブト君が寝ぼけて手から炎を出してしまい、服の胸の部分が焼け焦げてしまった。すぐに消したから火傷はしなかったけど。因みにユスリカちゃんも寝ぼけて手から水を出してしまい、トーカの服がスケスケになってしまった。予想だにしなかったハプニングにトーカは少し焦っていたけど、俺からしたら服が濡れたことで思いもよらずにスケブラを拝めたので、心の中でユスリカちゃんにお礼を言っておいた。と言うかスーツって透けるんだな、この世界だからかも知れないけど眼福です。

 俺も子供が出来たら真っ先に水の魔法を教えようかなとか思ってたらトーカに殴られた。正確に言うと顎にアッパーをくらった。一割程度の力だったらしく痛いで済んだがむやみやたらに殴らないでください。普通の女の子は一割程度の力なら痛くもなく、「ははっ、やめろよ~」で済むはずだと思ったが勿論俺は口に出さなかった。

 とりあえず途中の店で着替えとおやつを購入して、着替えてから集合場所に向かった。勿論着替えは新しいスーツだ。

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