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空から降ってきた

 あの事件(?)から一か月が経った。

 俺は少しづつだが国王の仕事に慣れてきて、同時にそれが楽しく感じるようにもなってきた。

 自分の中で元の世界に帰りたいという思いは小さなものとなって、代わりにこの世界で国王を続けたいと言う気持ちが大きくなってきている。

 元々の世界には未練はそんなになかったし、みんなが俺を受け入れてくれたし帰ろうとする理由もない。

 この世界で大変なことをしいてあげるとしたら、執事やメイド、シェフなどの人数が多すぎて名前が全然覚えられないという事くらいか。確か執事が三十人、メイドが三十五人、シェフが三十八人もいる。そんなに人数が必要なのか、と思うが必要らしい。


 あとこの世界についても少し詳しくなったような気がする。この世界は俺が元いた世界とは比にならない程科学技術が発達しており、ドラ○もんレベルのロボットなんかザラにいる。それに加えてガ○ダムやエヴァン○リオンのような巨大ロボット、サイボーグっぽいのやらトラン○フォーマ―顔負けの変形ロボットなどがいる。しかも当然のように魔法も普及しており、とんでもなく便利だ。それだけでも驚きなのにもっと驚いたのは犬やら猫やらが言葉を喋り、理解していることだ。因みに犬猫の姿形は俺が知ってるものとは若干違っていた。頭が二つ三つあったり、尻尾が九本くらいあったりと。あとカモメのような鳥が毎朝五時に朝刊を届けてくれる。

 はっきり言って異世界万々歳だ。


 そして俺は今、面倒な仕事を抜け出して敷地内(東京都とほぼ同じくらいの大きさ)をお散歩中だ。

「今日はいい天気ですね」

「気温二十三度、湿度三十五パー。比較的過ごしやすいですね」

「ん―――!! 気持ちいい~」

 勿論正室と側室の皆さんと。というか湿度三十五パーって過ごしやすいっけ? まぁいいや。

「皆さんお仕事は?」

 まぁ俺が言えた立場ではないんですが。

「面倒だったので」

「終わったので」

「飽きたので」

 うん、サキナだけちゃんと終わらせてきたんですね。


「そう言えばみんなはどうしてリファスに嫁いできたの?」

 最近は以前のリファスの事とかみんなの事を聞けるようになってきた。

「「「一目惚れからのゴリ押し!」」」

 聞くだけ無駄だったか。


「リファス様―――!! トーカ様―――!! サキナ様―――!! シャルル様―――!!」

「ジニアだ!! 逃げるぞ!!」

 みんなやましいことがあるので逃げる。

「さぁお仕事してください」

 五分で捕まったけど。

「サキナ様もですよ」

「え? 私終わってるんだけど」

「間違いが百三十六ヶ所ありました。至急直して下さい」

「そんなぁー!?」

 全員執事たちに捕まり、城に連れ戻された。

 それぞれの仕事部屋に連れ戻されて仕事をさせられる羽目になってしまった。けど俺はトイレを理由にもう一度抜け出した。


「あんな量の仕事やってられっか」

 ぶつくさと文句を言いつつも庭の中をお散歩中だ。今回は一人で。

 まぁ折角抜け出したんだから気分転換に歌でも歌ってみようかな。

「ゆっりゆっらっらっらっらゆるゆり♪ゆっりゆっらっらっらっらゆるゆり♪ゆっりゆっらっらっらっらゆるゆりだ・い・じ・け・ん…?」

 人が折角気分よくしようと歌ってるのに空からヒューという音が聞こえてきますね。

 何かが落ちてきてますね、何でしょうか。いやそれよりもこのまま落ちてきたらいい感じで俺の丁度上あたりに落ちてくるようなきがするんだよな。とか思ってるともう目の前に!!


 ドッゴ―――ン!!!


 大きな砂煙をあげて落ちてきたのは…何? というかすごい頭が痛い。だって丁度頭の上に落ちてきたんだもの。というか俺ってすげぇ石頭。本当に大事件にならなくて良かったよ。

 徐々に砂埃が晴れて行き、落ちてきたものの全容が明らかになる。

「えっ!!! 人!?」

 しかも女性だ。見た感じ年は二十歳くらいか…? ん? なんかこの顔見たことがあるな……

「あれ!? 優愛!?」

 夏海優愛(なつみゆあ)、向こうの世界の俺の知り合いだ。というか幼馴染である。彼女は黒くて腰まであるきれいな髪とぱっちりとした二重の目。視力が0.1の為にかけっぱなしだった少し薄めの赤い縁の眼鏡。あまり高くない鼻と右目の下の泣きほくろが特徴的だ。身長は女性にしては少し高めの163センチで胸は目測だが恐らくCカップ(何度か聞いたが教えてくれなかった)。

 正確は明るく誰とでも仲良くできるクラスの中心的な人物だった。でもある時、ちょっとした事件があり彼女も引きこもりになってしまった。

 どうしよう……。とりあえず城に連れてってジニアかリニアに説明をして保護してもらおう。あ、でも戻ったら仕事抜け出したことを怒られちゃう。まぁ状況が状況だから仕方ないか。もしかしたら話題が優愛の方に逸れてくれるかも。

 とりあえず俺は城に向かって歩き始めた。俺の今いる場所から城までは歩いて大体三十分くらいかかる。とにかくバカみたいに広いのだ、この屋敷の敷地は。


「あ、リファス」

 十分くらい歩いたところでトーカと出会った。

「リファスもまた仕事抜け出して……」

 俺がお姫様抱っこしている優愛に気づいたようだ。瞬間、トーカの右腕が赤く染まる。『赤腕』降臨だ。

「リファス…! その女は何ですか…! 二十文字以内で簡潔に答えなさい……!」

 言い終わるかどうかの瞬間に左腕も赤く染まる。

 恐い。俺は死を覚悟した。今までの出来事が頭の中で光速で駆け巡る。あぁ、これが走馬灯ってやつか。

「早く説明を…!」

 遂に身体能力強化の魔法まで使い始めました。

 そろそろ説明しないと本当に死ぬ。

「空から…降ってきました……」

 自分でも声が震えてるのがわかる。

「本当は…?」

「マジマジマジ!! 空からどーんて来たの!!」

 なんだこの幼稚園児みたいな説明は。

「マジ…なんですか…?」

(こくこく)

「…ふぅ。そこまで言うなら信じましょう」

 何とか魔法を引っ込めてくれました。


 とりあえず俺は震える声で何とか全部をトーカに説明した。

「そうですか……元いた世界の知り合い……人違いってことはないんですか?」

「多分ないと思う」

 とりあえず俺達は当初の予定通り城まで優愛を運ぶことにした。でもトーカは俺が優愛をお姫様抱っこしてるのが気に入らなかったらしく自分が運ぶと言ってきた。普通の女性ならば女性とはいえ、十八歳の人間を運ぶのは大変だろうがあいにくトーカは普通の女性ではないのでそこらへんの心配はしなかった。

 勿論お姫様抱っこで運ぶのかと思ったが、何故かトーカは優愛の右足をうつ伏せになるように持ってズルズルと引きずり始めた。

 何度も止めたけど中々聞いてくれず、終いには走り始めたので流石に全力で止めた。そのかわりに今度トーカにもお姫様抱っこしてあげるという条件がついたが。


 何とか城に着いたのでまだ目を覚まさない優愛をベッドに寝かせ、トーカにジニアとリニアを呼びに行ってもらった。

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