the feeling of the boy
さびれたヴァイオリンが奏でる不格好なワルツ。時々断末魔のような叫び声をあげ、聞くものを不安にさせるような旋律。
それに乗って少年と少女は不格好なステップを踏む。
他の魂はそんな少女をあざ笑った。
とうとう生身の人間を相手にしたよ、と。
しかし少年がそこにいれば少女にはそんなことは関係がなかった。それだけで十分だったのだ。
死んでからこんな思いをするなんて、と少女は少し戸惑いを感じた。
少年は少女のそんな変化を読み取ったのか否か、ぼそり、とある言葉を告げた。
「お姉さん、僕を好きになっちゃだめだよ」
少女は一瞬止まった。その間も音楽は鳴り響く。まるで二人を嘲笑するかのように、断末魔の悲鳴をあげ、二人の間を切り裂いていく。
「そうすると、僕が死んでしまうから。別に僕は構わないんだけど、両親に僕の死に目にあわせてあげたくて。
そんなこともできない親不孝者じゃいやだから」
歌うように言葉を紡ぐ少年。
それを聞いていた少女は言葉とはなんと美しいものかと実感した。
カタカタ。カタカタ。
二人の間にそんな音が近づいてきていた。
かたん!
ひときわ大きな音を立ててやってきたのは、骸骨の青年。
歯をカタカタ言わせながら二人の間に割り込み、そこで一人で踊りだす。
それを見ていた周りの人は、拍手喝さいをした。
青年は、踊りがひと段落すると少女に手を差し伸べた。
少女はそれを拒んだ。
青年は少し困ったように少年に目配せをした。
少年は少し傷ついた表情をしながらも、うなずき、その場を去って行った。