the sound of the bell
深夜、十二時の鐘が鳴る頃、墓場は一夜のみのお城となり替わる。
一年に一度の使者たちの祭典、それがハロウィン・パーティである。
――ゴーン。
教会の鐘、夜中の十二時を告げた。多くの魂が一夜のみのダンス・パーティのお相手を探そうと墓場をさまよう。
蝙蝠の飛び交う、月明かりもない夜。その墓場の中で、一人の乙女が相手を見つけることができず、さまよっていた。
彼女は約一年前に亡くなっており、今夜が初めてのハロウィンである。それに加えて、彼女は彼氏に捨てられた挙句の自殺であり、死んでからもずっと嘆いていたため、他の魂と交流をすることがなかったのだ。
その少女が墓場の上をうろうろとさまよっていると、一人の少年の声がした。
「僕が相手になってあげるよ」
ありがとう、といおうとして、少女は声を出せないことに気付く。どうやら死者には声は与えられていないようだった。
それならばなぜ、この少年はしゃべることができるのだろうか。
「あはっ。僕が生きている人間じゃないかって疑っているの」
少女の思いを見透かしたように少年は笑う。
「大丈夫だよ、お姉さん。
僕はもうすぐ死ぬんだから」
少女は驚いた。
「僕の手を握ってよ、お姉さん」
少女は少年に言われるがままに手を握った。
すると少女にはある光景がはっきりと見えてきた。
――白い部屋。体中につなげられたチューブ。心臓が動いていることを示す、ピッピッという無機質な音。
その隣で疲れた表情で、うつむいている、男女。
「あれはパパとママ」
少年が説明をしてくれる。
「僕、どうやらこのあたりで交通事故にあったらしいんだよね」
それで、これが見えたのか、少女は納得する。
「僕は、どうせもうすぐ死ぬんだ。だから、ね」
少年はそこで言葉を切り、少女をまっすぐに見つめた。
「さあ、残り少ない『人生』を楽しもうじゃないか」