友だち
勝ち誇ったように鼻で笑うと、ナオコは教室をあとにした。そのうしろ姿は、いつになく厳かで凛々しい。
深閑とした放課後の教室で、ひとり取り残されたリカは唇を噛んだ。冬の寒さと相まって余計に屈辱を感じる。発狂しそうになるのを堪えるだけで精一杯だった。
悔しい。悔しい……、悔しい!
リカは廊下に飛び出して、ナオコを呼び止めた。
「ふざけんな、泥棒!」
ナオコが足を止め、ゆっくりと振り返える。
「私が泥棒?」
「普通、友だちの好きな人を横取りする? 考えられないし、信じらんない!」
「友だちねえ」
ナオコはため息混じりに言った。
「ごめんだけど、私は友だちと思ってな
かったよ」
冷たい刃物のような言葉が、リカの心を深く傷る。
「ひどい……」
とうとう堪えていた涙が堰を切って流れ出し、リカはその場で崩れ落ちた。床が冷たい。廊下の窓から吹き入ってくる隙間風が針のように冷たく、震える。風も空気も、全てなにもかも、みんなみんな冷たい……!
顔を両手で覆って泣くリカに、ナオコはゆっくりと歩み寄る。
「私は取り返しただけだよ」
リカははっと顔を上げた。
「今更リカとわざわざ友だちになる人いると思う? 勘違いも甚だしい。私だからって見くびってたんでしょ。全部見え透いてんだよ」
「その時は友だちじゃなかったから」
そう言ったリカの声は弱った虫の羽音
のように震えている。
「じゃあ、今は友だちだったんだ」
リカは返事をしない。無言でキッと見据える目には、必死の抗いが浮かんでいる。
ナオコは鼻で短く笑うと、リカにそっと手を差し伸べた。




