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友だち

作者: 美紀
掲載日:2025/10/28


 勝ち誇ったように鼻で笑うと、ナオコは教室をあとにした。そのうしろ姿は、いつになく厳かで凛々しい。

 深閑とした放課後の教室で、ひとり取り残されたリカは唇を噛んだ。冬の寒さと相まって余計に屈辱を感じる。発狂しそうになるのを堪えるだけで精一杯だった。

悔しい。悔しい……、悔しい!

リカは廊下に飛び出して、ナオコを呼び止めた。

「ふざけんな、泥棒!」

ナオコが足を止め、ゆっくりと振り返える。

「私が泥棒?」

「普通、友だちの好きな人を横取りする? 考えられないし、信じらんない!」

「友だちねえ」

ナオコはため息混じりに言った。

「ごめんだけど、私は友だちと思ってな

かったよ」

 冷たい刃物のような言葉が、リカの心を深く傷る。

「ひどい……」

とうとう堪えていた涙が堰を切って流れ出し、リカはその場で崩れ落ちた。床が冷たい。廊下の窓から吹き入ってくる隙間風が針のように冷たく、震える。風も空気も、全てなにもかも、みんなみんな冷たい……!

 顔を両手で覆って泣くリカに、ナオコはゆっくりと歩み寄る。

「私は取り返しただけだよ」

 リカははっと顔を上げた。

「今更リカとわざわざ友だちになる人いると思う? 勘違いも甚だしい。私だからって見くびってたんでしょ。全部見え透いてんだよ」

「その時は友だちじゃなかったから」

 そう言ったリカの声は弱った虫の羽音

のように震えている。

「じゃあ、今は友だちだったんだ」

 リカは返事をしない。無言でキッと見据える目には、必死の抗いが浮かんでいる。

 ナオコは鼻で短く笑うと、リカにそっと手を差し伸べた。



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