新たなる事業計画
レティシアの一件から、数日が経った。
精霊界で俺は相棒のポルンと共に、掲示板『魔導士の円卓』で巻き起こっている「祭り」の様子を最高の娯楽として楽しんでいた。
【スレタイ:【伝説】あの日の"天才少女"の奇跡について語るスレ Part.5】
351. <<王都の門番>>
現地にいた俺が改めて報告する。
あの日、壇上で見たあの方は、まさに女神だった。以上だ。
352. 名もなき魔術師
>>351
うおお、現地組羨ましい! 仕事で地方にいたのが悔やまれる……!
353. <<魔道具コレクター>>
>>351
同感だ。特に奇跡を起こした後、力尽きて壇上に座り込み、感極まって涙を流しながら、スカートを押さえていたあのお姿……。あれこそが、世界の真理だった……。
354. <<虹の賢者>>
>>353
フッ……彼女の理論が証明されて、本当によかったね(笑)
355. 名もなき魔術師
>>354
は? 虹の賢者、負け惜しみか?
まぁ、現場に居なかったんだろうから、信じられないんだろうな。ご愁傷様w
あの場にいた俺は、あの奇跡の光を浴びたおかげで、太ももにあった古傷がすっかり治ってしまったよ! 彼女はまさに聖女だ!
356. <<王都の門番>>
>>355
なんだと!? それは本当か!
357. 名もなき魔術師
>>354
あんだけレスバしてたから、聖女様の誕生に顔真っ赤なのが草生える
かなりの人間が実際に見たんだ。聖女様の御業はお前の空想理論を吹き飛ばす威力だったな。
これに懲りたらおとなしくしとけw
と、一日たった今でも、スレの勢いは止まらない。
「やれやれ、聖女様の御業は俺のPPブーストのおかげなんだがな。まぁ、こいつらはせいぜい掲示板で愉悦に浸っていればいい」
「アークさん、本当に意地が悪いですね…」
「いいんだよ、ポルン。こうやって、飢餓感を煽っておくのが、次のビジネスに繋がるんだ」
俺は、上機嫌でポルンに魔力を分け与えながら、レティシアの【監視】ウィンドウに視点を移した。
あの日以来、「合成魔法の天才」として一躍時の人となった彼女だが、その成功を二度と再現できず、再び研究室に引きこもっているらしい。
(……まあ、当然だな。俺という『触媒』がなければ、彼女の理論は未完成なのだから)
俺は、時折「虹の賢者」として、掲示板でそれとなくヒントを与えている。
完全に絶望させず、しかし、決して自力ではゴールさせない。適度に希望を持たせ、定期的にPPを供給してもらう。彼女は、俺にとって最高の「研究開発部門」兼「定期収入源」なのだ。
俺が盤石になりつつある経営基盤に満足げに頷いていると、ふと、ある考えが頭をよぎった。
(……待てよ。俺は、これまで何をしてきた?)
俺は、これまでの顧客たちとの契約を、一つ一つ思い返した。
アンナからは 偶然のパンツで、PPブーストの基本を学んだ。
セシリアからは 交渉術と、権力者(団長)への対処法を学んだ。
ミャーレからは 競合を買収し、排除する方法を学んだ。
レティシアからは この世界の魔法理論の限界と、俺のビジネスモデルの絶対的な優位性を、再確認した。
――点と点が、線で繋がった。
これら全ての経験は、バラバラの成功体験ではない。
全ては、より大きな目的のための、布石だったのだ。
(そうだ……俺は、いつまでも一個人を相手にした、個人商店のままでいいのか? いや、違う! 俺が本当にやるべきは、この世界の魔法インフラそのものを、俺のシステムに置き換えることだ! 全ての精霊魔法が俺を経由するようになれば……! 全ての美少女魔術師が、俺にPPを捧げざるを得ない状況になれば……その時こそ、俺はただ「呼びかけ」を待つだけの存在から、最高のパンツを最高のシチュエーションで「選べる」立場になるのだ!)
「――ポルン!」
「は、はいぃ! なんでしょう、アークさん!」
俺の、ただならぬ覇気に、ポルンがびくりと光を震わせる。
「これより、我々は新事業に乗り出す。目標は精霊界の完全なる市場独占だ!」
「し、市場独占……!?」
「そうだ! そして、ポルン。お前を、このプロジェクトの『営業担当』に任命する!」
「え、ええええええっ!? ぼ、僕がですか!?」
俺は、記念すべき最初のターゲット市場を『顧客管理システム』のマップ上に表示させた。
アンナが所属する、辺境の街「ハースウッド」。
ここは、高ランクの精霊がおらず競争も緩い。俺たちのビジネスモデルの有効性を試し、最初の拠点を築くには、まさにうってつけの「ブルーオーシャン」だ。
「いいか、ポルン。俺たちのビジネスプランはこうだ」
俺は、震える相棒の肩を(ないけど)叩き、悪魔の囁きを吹き込んだ。
「お前は、この街の精霊たちにこう提案しろ。『我々の傘下に入れば、お前たちの取り分(保有魔力)を、今の三倍、保証する』と」
「そ、そんなこと、できるんですか!?」
「ああ。俺がPPでブーストすれば、顧客(人間)の満足度は上がり、結果的に『呼びかけ』の回数も増える。その増加分の一部を、そいつらに還元するだけだ。Win-Winの関係だろ?」
ポルンは、まだ半信半疑ながらも、その壮大な計画に、ゴクリと息を呑んだ。
俺たちの、いや、俺の世界征服(パンツハーレム計画)への、本当の第一歩が、今、始まろうとしていた。
俺の冒険はこれからだ!
アークの冒険はここで一旦終わりです
読んでいただきありがとうございました!
ノクターンで「盗賊の覆面を被った全裸忍者の俺が異世界ダンジョンで欲望の全てを満たすまで」
という作品を完結させていますので、これが気に入った方は楽しんでもらえると思っています。
ぜひ読みに来てくれると嬉しいです。




