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その魔法、パンツ払いでお願いします!  作者: ダック


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虹の賢者、炎上

 俺が『魔導士の円卓』に記念すべき第一投を書き込んでから、数秒。

 静まり返っていたスレッドが、一気に爆発した。多くは名無しのモブからだったが、いわゆるコテハンも敏感に反応してくる。



55. <<詠唱分析官>>

 >>34

 ……何者だ、君は? ただの荒らしか?


56. <<魔道具コレクター>>

 >>34

 (笑)とかつけてる時点で、どうせ何も知らない厨房だろ。消えな。


57. <<王都の門番>>

 >>34

 神聖な議論の場だぞ。不敬な輩は立ち去れ!



(おっと、手厳しいご挨拶だな。だが、それでこそ燃えるってものだ)

 俺は、彼らの困惑と怒りを最高の娯楽として楽しみながら、さらに燃料を投下した。



58. <<虹の賢者>>

 >>55-57

 森の消滅も、大天使の降臨も、原因は同じだよ。

 君たちが、学校で習ったような古い『魔法レベル』や『ランク』なんていう固定観念に縛られているから世界の本当の姿(真理)が見えないだけさ。そもそも『精霊魔法』についてもちゃんと理解わかって使っているのかい?



 その、あまりにもったいぶった、しかし核心を突いているかのような物言いに、掲示板の空気が変わる。

 荒らしだと罵っていた者たちの中から、「まさか、本物の高位魔術師か…?」「賢者…?」と、色めき立つ声が聞こえ始めた。



「ぷふっ……ポルン、見てみろ。こいつら、どちらの現象も俺の仕業なのに……荒らし扱いかよ。よし、もっと煽ってやるかw」

「アークさん、ほどほどにしといてくださいよ……相手を怒らせてもいいことないんですから……」

 食いつきの良い反応に喜ぶ俺の隣で、かわりにハラハラしてくれているポルン。


「まぁまぁ、こいつらに話題を提供してあげてるんだよ、俺は」


 俺が最高の優越感に浸っていた、その時だった。

 その心地よい空気を、一本の氷のように冷たい矢が貫いた。



79. <<真理の探求者>>

 ……戯言はやめたまえ、虹の賢者とやら。

 現象には必ず法則と理論が存在する。君の言う「真理」とやらを、具体的な数式と論理で証明できないのなら、それはただのポエムだ。

 根拠を示せ。できなければ、君はただの詐欺師か、夢想家だ。



(……は?)

 その、あまりにも正論で、あまりにも身も蓋もない書き込みに、俺は思わず固まった。

 掲示板の中では「探求者が来た!」「おでましか!」などと盛り上がっている。

 それらの内容から推測すると、どうやらこの<<真理の探求者>>は、この掲示板でも有名な若き天才理論魔術師らしい。

 どんなオカルトも、その圧倒的な知識と論理で粉砕してきた、いわば「論破王」だという。


(……面白い。この超常現象を起こした本人である『俺』に喧嘩を売るとは、いい度胸じゃないか)


 俺は、キーボードを(心の中で)叩き返した。



80. <<虹の賢者>>

 >>79

 フッ……真理とは、数式で語るものではない。感じるものだよ。

 君にはまだ、その境地は早いようだね。


81. <<真理の探求者>>

 >>80

 逃げるのか? 議論の放棄は、敗北と見なすが。

 そもそも、君の言う「固定観念からの解放」とやらは、あまりに非科学的だ。魔力は、術者の魂の器の大きさに比例する。これが、この世界の絶対的な法則だ。それを無視した現象など、ありえない。


82. <<虹の賢者>>

 >>81

 だから、その「魂の器」という考え方が、古いと言っているんだ。エネルギー源は、なにも術者本人から供給する必要はないだろう? 外部から、全く別のエネルギーを借りてくればいいだけの話さ。



 俺は、『別のエネルギー』(パンツ)という核心ギリギリのヒントを、つい得意げに書き込んでしまった。

 しかし、彼女の反論は俺の想像の斜め上を行くものだった。



83. <<真理の探求者>>

 >>82

 外部エネルギー…? ほう、面白い仮説だ。

 だが、仮にそうだとして、そのエネルギーとは何だ? どこから来る? どうやって制御する? 変換効率は? 安全性は?

 その全てを、君は論理的に説明できるのかね?



(くっ……! こ、こいつ、頭が良すぎる…! 俺は感覚でやってるから、そんな小難しい理論で説明できるわけねえだろ……!)


 俺は、生まれて初めての「レスバトル」で追い詰められていた。

 なんとか抵抗しつつも、やがて、議論は平行線のままついに決裂の時を迎える。



98. <<真理の探求者>>

 もういい。君のようなオカルティストと話しても時間の無駄だ。

 私には、私自身の理論がある。いずれ、私がこの世界の真理を解き明かしてみせる。


99. <<虹の賢者>>

 フン、好きにするがいい。その古臭い陳腐な理論とやらでどこまでやれるか、高みの見物をさせてもらうとしよう。



 売り言葉に買い言葉で終わったものの、俺の内心は、屈辱に打ち震えていた。

(おのれ、あのインテリ野郎……! 俺をコケにしやがって……! こうなったら、あいつの言う『理論』とやらを、この目で見てやる。そして、その鼻っ柱を最高の形でへし折ってやる!)


 今の野郎はどこに居るんだ? 場所が分かれば偵察に行けるんだが……

 そういえば、この掲示板は微弱の魔力でアクセス出来たな。

 俺なら、その少しの特徴を感知できたりするんじゃないのか……?


 ――よし! これだな。

 各個別のレスに意識を集中すると、コテハンごとに共通の波長を感じることが出来た。

 もちろん、この <<真理の探求者>>って奴も同様だ。


 俺は、<<真理の探求者>>の書き込みに残された、微かな魔力の残滓を辿り、そいつの居場所を特定しようと試みた。ん?、かすかに分かるぞ……やはり微弱な魔力を使ってこの精神空間にレスを書き込むからか? では試しに……


 俺は、その残滓をたどるイメージで意識をその空間に飛び込ませる。


 ――俺の視界が、人間界の、とある研究室の光景に繋がる。

 そこにいたのは、白衣を纏い、山のような古文書を前に、必死の形相で数式を組み立てている、眼鏡をかけた、栗色の髪でおさげの……美しい少女の姿だった。


 女か!!

 しかも、俺の好みのロリ美少女!!

 突然の僥倖に俺は思わず笑みを漏らす。


(……見つけたぞ、『真理の探求者』ちゃん……。 お前のその自信満々の理論がどれほどのものか、じっくりと見させてもらうぜ……)

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