ストラス卿の羽の騎士たち
昔々、今では地図の中に見つけることもできませんが、ティルヤンチという、言葉を話す不思議な動物たちが暮らす土地がありました。そこでは色々な動物たちが、人間たちがそうするように、いくつかの王国を築いて暮らしておりました。
そのティルヤンチに根付く貴族の一人に、ストラス卿というフクロウがおりました。ストラス卿は、ハーブ園と宝石のコレクションを持っていて、とても賢明なことで知られる君主です。誰もがこのフクロウのことを尊敬していましたし、彼よりも偉い王侯貴族も一目置き、敬意を払っていました。
「ぐごー、ぐごー」
このりっぱな剣を持ったまま居眠りをしている、りっぱでないアホウドリは、これでもストラス卿に仕える騎士で、アルバート・ロスという、たいそうな名前がありました。ロス卿は、おつむの方はいまいちで、しかも物怖じするきらいにありますが、いざ戦いとなれば誰にも負けないと、もっぱらの評判です。しかし、戦いがないときの仕事ぶりときたら、まあ、今見てもらったとおりです。
「起きろ! アルバート! このゴクツブシめ!」
一羽のニワトリが、怒鳴りながら、棒でアルバートの頭を打ちました。ティルヤンチにおいても、ニワトリというのは、夜明けを告げる生き物として知られています。われわれの知っているニワトリと違うのは、よく知られるようなコケコッコーという鳴き声ではなく、乱暴な言葉や、その他の乱暴な手段を使うことがあるという点です。
「やや、これはガーランド卿! もう朝ですか?」
アルバートは頭から血を流しながら、目の前のニワトリに対して敬礼をしました。
「ニワトリは朝にしか夜明けを告げぬ訳ではないぞ、アルバート。きさまは寝ずの番を任されていて、しかして居眠りをしておったから、おれが叩き起こしたまでのこと」
ニワトリの言うとおり、今はまだ夜更け、空にはお月様やお星様が浮かんでいます。
このニワトリの騎士は、トリスタン・ガーランド卿といって、戦士たちの名門として知られるガーランド家の出身です。またトリスタンという名前は、大昔の高名な勇者にあやかって名付けられ、彼もまたそのような勇者になることを期待されて育ちました。戦いの技ではアルバートに一歩及びませんが、代わりに恐れ知らずで名高いニワトリです。彼はアルバートを騎士の位に引き上げてもらえるよう、ストラス卿に進言した先輩騎士でもありました。
「きさまが居眠りをしている間に、大変なことが起こったぞ。これを見ろ!」
トリスタンが案内した部屋は宝物庫で、何者かによって荒らされておりました。かつてはきれいに並べられていた宝物があちこちに散らばり、何がどれだけ無くなったかもわからない、酷いありさまです。
「これはひどい」
「そうだろう。このことがストラス様に知られたら、おれたちはチョルバ・デ・プイ(ルーマニア料理。鶏肉のスープ)にされてしまう!」
「ひええ、どうしたらいいですか?」
ストラス卿は賢明で優しい君主として知られていますが、大事にしている宝物が無くなったとあっては、トリスタンが言うように、恐ろしいおしおきをするかもしれません。ティルヤンチには他にも多くの貴族や王様がおり、みな言葉を話す動物ですが、この辺りは、人間のやることと変わりません。
「ストラス様は、三日後にお戻りになる。それまでに宝石を取り戻すしかない!」
不幸中の幸いというやつで、ストラス卿は、他の貴族たちとの大事な会議のために、お屋敷を留守にしていました。戻って来るまでに事件を解決すれば、全て丸く収まると、この二羽は考えていました。
「何か手がかりはありませんか?」
「一つだけある。これを見ろ」
トリスタンが指差した先には、部屋の外に続く足跡がありました。
「猫の足跡ですね。となると外から入った物盗りでしょう」
ストラス卿のお屋敷で働く動物たちは、ほとんどが鳥の仲間で、猫はその中にはいません。となると、きっと外からやってきた泥棒に違いない。二羽はそう結論づけました。
「これを追って行けば、宝石を盗んだやつの居場所がわかるかもしれません」
「よし! 泥棒猫め、目にものを見せてくれるわ!」
こうして、二羽の騎士が旅立ちました。果たして彼らは、盗まれた宝石を無事に取り戻すことができるのでしょうか?




