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歴代最高への挑戦編

https://44163.mitemin.net/i842955/挿絵(By みてみん)


話は五十嵐いがらし健斗けんとが中学一年になるまでさかのぼる。


五十嵐健斗と、小松有希こまつゆき綾小路あやのこうじ文香ふみかの三人は同じクラスメイトだった。


美男で有名な兄を持つ小松有希。その血は間違いなく妹の有希にも備わっているのだった。五十嵐健斗も元気で明るく、しかも優しい性格だったためクラス内での人気は相当なものだったが、小松有希ほどではなかった。




「やっぱり小松有希って可愛いよな」


「どうすれば彼女と仲良くなれるかな」




クラスの会話には小松有希の噂が絶えないのだが、五十嵐の意見は全く違うのだった。周囲からの羨望せんぼうに近いまなざしをうける有希にではなく、いつも隣にいるおとなしい女の子。綾小路文香がとても気になるのだった。


いつも元気な小松有希の横で絶えずニコニコしているのが印象的だ。ちょっとれ目で、なんとも優しい感じのする女の子なのだった。一言で言えば、文香は「いやし系」といったところか。




そんな五十嵐は、小松有希になら気軽に声を掛けることができるのだが、文香に対しては緊張が先走ってしまう。文香も口数がかなり少ないため、近くにいるにはいるのだけれど、今までまともに話をすることはほとんどなかった。


いつも通りに、小松有希に話しかける五十嵐健斗。




「小松、お前ってほんと落ち着きがないな。小松先輩とは大違いだな」


五十嵐は水泳部に所属しいて、同じ水泳部の小松兄とは顔見知りの仲だった。




「なんかバカにされてる気分なんだけど」


「綾小路もあきれてるだろ。なっ」


「・・・そんなこと全然ないよ」




ふと文香と目が合ってしまった。話しかけたのだから当然のことなのだが、五十嵐は内心ドキドキが止まらなかった。




今日一日は、いい日になりそうだな。


そんなのほほんとした余韻よいんに浸っていると、その余韻が一瞬で吹っ飛ぶ事態が発生してしまった。




「五十嵐君っていつも有希ちゃんに話しかけるよね。ほんとわかりやすいね」


「ちがうって」




「えー。うそだぁ」


「断じて違うからな」




「可愛いもんね」


「本当に違うから」




本当に違うのだが、文香に言われた恥ずかしさから、赤面が止まらない。傍から見ると説得力のかけらもなかった。


文香とまともに話をしたのは、今回が初めてに近かったが、まさかの勘違いが発生してしまうのだった。








太陽の日差しが柔らかくなり始めた十月初旬。五十嵐にとっての大事件が起こってしまった。


なんと綾小路文香が一年生ながらにして、生徒会の文化委員長に立候補してしまった。それは、普段は大人しそうな文香が見せた意外な行動力なのだった。俺はこっそり文香を応援していたが、二年生の立候補者である菊池優也に木端微塵こっぱみじんに負けてしまった。


なんと菊池優也は、全校生徒が920人いる中で、902票もの票を奪い取ってしまったのだ。逆に文香はたったの18票しか票を集めることが出来なかった。




選挙結果が校内放送で流れる中、机に座ったままの文香が硬直こうちょくしている。文香はクラスでも特に人気がない訳ではなかった。むしろ大人気の小松有希の親友として、クラス内でも友人は多いほどだった。そんな彼女であるならば勝てるとまではいかないにせよ、もう少しまともな勝負になると俺は勝手に思っていたのだった。


そんな彼女がまさかの大敗北をきっしてしまった。




完全な無表情。こんな文香は今まで見たことがないのだった。五十嵐はそんな文香の姿に、胸を打たれてしまうのだった。


一年生で生徒会に立候補したのは彼女だけだった。そんな立派な文香をこんなに悲しませるなんて。


だれも、文香に声を掛ける者はいなかった。


当然だった。こんな状態の彼女に声をかける勇気がある者などいるはずがないのだった。






なんとか彼女を守りたい。俺が何とかしなければ。


五十嵐は、周りの雰囲気に呑まれることなく、勇気を振り絞って文香に声を掛けたのだった。




「そんなに気にすることは無いよ。綾小路あやのこうじが頑張ったのは皆がわかっているからさ。今回は相手が悪かった。綾小路は二年生相手によく頑張ったよ」


「・・・」


「一年生で生徒会に立候補するだけでも凄いことだよ。一年で立候補したのは綾小路だけなんだからさ」


「・・・」




「俺は綾小路を尊敬する。本当だ」


「・・・ありがとう。もう大丈夫だから」




声を掛けたことで文香は泣いてしまうかもしれないと思っていたが、意外に冷静な返事をしてくれたのだった。




これで、少し元気になったと勝手に思っていたが、次の日、文香は学校を休んでしまった。


文香が負った選挙結果のダメージは、やはり俺が少し声を掛けたくらいでは消えることは無いのだと思い知らされてしまうのだった。




そして更に困ったことが起こってしまった。文香の気持ちなんかまったく知らない生徒会が、何と自分を生徒会副会長に指名してきたのだ。




文香のことを思うと気が乗らない五十嵐ではあったが、生徒会長になった小松先輩の頼みを無下むげに断れないのであった。


そして、五十嵐は一年生ながらにして生徒会副会長に就任した。










それから約一年が経過した。五十嵐健斗中学二年生。もうすぐ次の生徒会選挙シーズンがやってくる。




一年生ながらに生徒会実績のある五十嵐健斗は、生徒会兼文化委員担当の片山先生から生徒会長になる様に執拗しつように勧められたがそうは問屋とんやおろさないのであった。




待ちに待ったこの時が来たのだ。俺は菊池優也きくちゆうやの文化委員長に強いこだわりを持つのだった。


あの文香に屈辱くつじょくを与えた菊池優也。話を聞くところによるとあの時の得票数は、生徒会選挙での過去最高だということが分かった。逆に言えば綾小路文香が過去最低だということになるのだ。そんなことは絶対に許せない。菊池優也が歴代最高なんて絶対に認めない。菊池優也の902票を絶対に抜いてやる。




五十嵐健斗にとって昨年のあの選挙結果をそのままで終わらせるわけにはいかなかった。




文化委員長の伝統の話は知っていたが、その力を借りるつもりは毛頭もうとうなかった。




自分だけの力でやってやる。


一年での生徒会実績のある自分であれば、それは可能なはずだった。


これで、文香だけに惨めな思いをさせずにすむんだ。文香を救い、そして告白するんだ。




並々ならぬ闘志を内に秘めた五十嵐健斗の902票への挑戦が始まろうとしていた。








選挙週間が始まった。その候補者を見て、五十嵐は狼狽うろたえてしまうのだった。


なんと、綾小路文香が再び文化委員長に立候補してきたのだった。




こんなバカなことはなかった。昨年あれだけ惨めな思いをした彼女が再び生徒会に立候補するとは到底思わなかったのだった。しかもまた文化委員長だ。




彼女の強心臓きょうしんぞうには驚くばかりだ。こんな女の子は今までいないと五十嵐は思うのだった。


こんなことなら、初めに文香に生徒会に立候補するかどうか聞いておけばよかったと後悔することになるのだった。(恥ずかしくて本当に聞く勇気はないのだが・・・)




しかし相手は自分なのだった。このままでは、文香はまた大敗北をきっしてしまうことになってしまう。




そうなれば、彼女がふたたび立ち上がることなど出来るのだろうか。


でも、自分だって一度立候補したからには、負けるわけにはいかなかった。文香に告白するために、菊池優也を抜いて文香を救い、文香の相応ふさわしい彼氏になるためにわざわざ文化委員長に立候補したのだ。そんな自分が負けるなど、本末転倒ほんまつてんとうもいいところだ。でもしかし・・・。




五十嵐は、初めどうしたらよいのか全く分からなかった。しかし、よく考えると自分が文化委員長に当選後、文香を書記や会計などの役に推薦すいせんしたらどうかと思うようになっていた。俺の推薦すいせんであるならば、一人くらいの融通ゆうずうは利くはずだ。文香も生徒会に入れるのであれば、傷はそこまで深くならないだろう。


中々の名案めいあんを思い付いたと思っているうちに、綾小路文香の応援演説をあの菊池優也がするということが判明したのだった。






まさかあの菊池優也と文香が組むなんて全くの想定外だ。しかもこれは、菊池優也から文香を誘うなんてことは絶対にありえない。よってこのペアの誕生は文香が菊池優也に依頼したということになるのだ。あんなにボロ負けにされた相手に自分の応援演説を依頼するなどとても考えられなかった。


実際には、確かに五十嵐の考えとおりに、文香には菊池優也に応援演説を依頼するという発想はなかったのだが、有希のとんでもない提案により文香と菊池優也ペアが誕生してしまったという訳だった。


しかし、そんな事情を五十嵐が知る由もなかった。




なんでよりによって菊池優也なんかに依頼するんだ。




文香は一体何を考えているんだという嫉妬しっとに近い思いが五十嵐の頭の大半を占めていた。そのわずかな残りの頭の中に、文香を傷つけたくない思いと、勝ったらどのように告白するかという思いが自分のなかで交錯し、五十嵐の頭の中には文香しかいなくなってしまった。





そんなことを思いながらも、よもや、文香に負けることになるとは夢にも思わない五十嵐なのであった。

文香中学1年生のイメージイラストです。

AIイラストのアプリを使用しました。

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