運命の確率編
文化委員長同窓会。
九人の文化委員長から桐生耀へ送った花束に、ガーベラの花言葉をのせてメッセージを送る神田きらり。
耀は、その花束の中から一本のガーベラを抜き出して、きらりへメッセージを送り返すのであった。
「あ、いいこと思いついちゃった」
そう言った耀が、花束から残りの五本のガーベラを一本ずつ取りだして、文香以外の文化委員長に振り分けた。
「はい、皆さん。これが最後のサプライズです。この一本のガーベラをお互いの相手と交換してください。俺は皆さんがそうだと信じています。当然俺ときらりも交換します」
「どういう意味?」
「その答えを自分から言うのは差し控えたいと思います。ヒントは、ピンクのガーベラの花言葉は「感謝」っす」
「因みに、文香ちゃんと五十嵐先輩には、敢えてこの交換イベントは「なし」ということにします」
ピンときた千聡がスマホでガーベラの花言葉の検索を始める。そして千聡は簡単に正解にたどり着いてしまった。
「イヴに一本のガーベラを交換し合うなんて、耀君ってかなりロマンチストなんだね」
「ちょっとカッコつけすぎっすかね」
「そんなことない。やっぱり耀君は最高ってことだよ。ほらみんな、耀君の指示には疑う必要なんてないからね。ほらやるよ」
こうして、耀と千聡の強引な指示により、文香以外の文化委員長同士による一本のガーベラの交換が行われた。
「桐生のやつ、やってくれるじゃないか。俺達は違うんだってさ」
スマホ検索で、正解にたどり着いた五十嵐君が、文化委員長のガーベラの交換を横目に文香に問いかける。
五十嵐君に正解を教えてもらった文香は、複雑な表情をしながらも、五十嵐君に同調するのだった。
「本当に失礼な子だね。私の教育がいけなかったのかな」
文香はそうは言ってくれたが、確かにこの同窓会で文化委員長ではない俺が一本のガーベラを文化委員長の文香と交換する資格はないだろう。
文香の本当の気持ちを知りたいと思いつつも、話を桐生の気持ちの方に持っていくことにする五十嵐だった。
「ま、文香が一本のガーベラを他の誰かに渡す姿を見たくないっていうあいつの気持ちも分からなくはないがな。その相手が文化委員長じゃないなら尚更か」
「あの子にはもう神田きらりって子がいるんだから、私なんか眼中にないって」
「そうだったな」
「・・・。なんかメッチャ悔しいんだけど」
前から思っていたが、文香は、かなりの負けず嫌いの性格のようだった。
「そうだな。なぁ文香、この後一緒に花屋に寄らないか」
「そうだね。実は私も同じことを思っていたんだ」
その後花屋に行った二人は、スマホを駆使して、自分達に合うぴったりの花言葉を検索するのだが、恋人というには大げさな微妙な関係の二人である。どの言葉も恥ずかし過ぎたり、物足らなかったりとぴったりくる花言葉が見つからない。
でも、このままでは文香は無難な方を選ぶ危険があった。折角、花屋まで来ているのにそれでは元も子もないのだった。
そんな五十嵐が、文香に思い切って提案する。
「みんなと同じものにするのはどうかな」
「そうだね。そうしようか」
結局みんなと同じという理由で、ピンクのガーベラを一本ずつ交換することにするのだった。
「あなたが私の運命の人」
しかし、このメッセージは五十嵐にとって、今の二人の関係からは考えられない最高の送り言葉になるのだった。そして文香にとっても同じ思いでいてくれることを願う五十嵐なのであった。
「正解にたどり着かない鈍いペアがいるから、正解を発表しまーす」
「よろしく頼むよ」
いくら待てども、正解が分からない智佳と秀太ペアに痺れを切らした千聡が、大声を張り上げるのだった。
兵藤秀太が申し訳なさそうな顔をしている。
「じゃあ、先輩。これを読んでください。心を込めて」
そう言って、千聡がスマホを隣にいる智也に見せるのだった。
「なるほど、ガーベラの花言葉で一本を検索するのか。なになに、「あなたが私の運命の人」。ほんとかよ。もう渡しちゃったじゃないかよ」
「はい。私は私の運命の人からガーベラを一本確かに受け取りました。もうこれは運命です」
周りからやんや、やんやの声が聞こえる。千聡が片手を上げてこれでもかと言うほど勝ち誇った顔をしている。
「村上智佳先輩、正解が分かった感想はどうすか?」
「ジュースで酔っぱらってるんじゃないよ。バカヤロー」
そうはいった智佳ではあるが、顔を赤くしただけで渡したガーベラを秀太から返してもらおうとはしなかった。
生徒会室の部屋全体に、幸せオーラが充満されている。
文化委員長同士による一本のガーベラの交換。
これは、本当に運命の交換のようにきらりは思えてきた。
「耀先輩。あんなに悲しい伝統のはずなのに、こんなに幸せな結果になるんですね」
「そうだね。予想以上の結果になったね」
「耀先輩のやること為すこと全てが私の想像を越えています。耀先輩は本当に凄いです」
「そうかな。おれはただみんなが幸せになって欲しいだけなんだ。でもそうだな、本当に最高の結果になったな」
耀は、今回の同窓会を開いたことに、これ以上ない達成感と満足感を味わうのだった。
これで、文化委員長の伝統は
初代と二代目の村上智佳と兵藤秀太とのペア
更に四代目と五代目の綾小路智也と紺野千聡のペア
そして最後に八代目の俺と九代目のきらりのペアで終結した。
実に九代続いた文化委員長の伝統で三分の二の六人が文化委員長同士で結ばれる結果となった。
初代を想う二代目の兵藤秀太先輩からすると、その想いは七年続いたということになる。
生半可な想いでないことは、文化委員長を経験した者であれば誰でも分かることだった。
そしてそれは、当然綾小路智也と紺野千聡にも当てはまる。
文化委員長は、恋愛下手だと文香ちゃんは言っていたが、恋愛下手でもなにも問題はない。いや、恋愛下手なんてとんでもないのだ。
何年たっても、想い続けるこのひたむきさ。文化委員長の恋愛は絶対に本物だ。
八年目に実ったペアもあったとはいえ、文化委員長同士で凄い高確率でカップルが成立してしまったのだった。
この高確率は奇跡としか言いようがない。まさに運命がそうさせたのだろうか。
また、文化委員長同士でカップルにならなかった人も、素敵な相手を見つけているということだ。
「文化委員長って本当に恋愛下手なのかな?これって本当に悲しい伝統?」
耀は何が悲しい伝統なのか分からなくなってしまうのだった。
でも、この文化委員長の三組のカップルに幸せをもたらした愛のキューピットは紛れもなく耀であることを、文化委員長の誰もが認めているのだった。
イラストは、文化委員長同窓会の帰りに花屋に寄り一本のガーベラを交換したところです。
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