決戦前のフィナーレ編
文化委員長同窓会の出欠をめぐり、もう一組のカップル。
菊池優也と小松有希。
有希が眠れない日々を過ごしているうちに、月日は流れ、ついにイヴの前日になってしまった。
その日、優也くんが慌てたように連絡をしてきた。電話ではなく直接話がしたいと言う。有希は家の近くの公園に呼び出されてしまうのだった。
まさか、紺野千聡に会う前に、私に「もう会えない」ときっぱり言うつもりではないだろうか・・・。
そして私とのことを清算して、紺野千聡に会うつもりではないだろうか。
直接会いたい。ではなく話がしたいということは、そういうこと・・・。
普段は、そのような発想にはならない有希だが、今回ばかりはどう考えても悪い方向に思考が向いてしまう。
そんなのは、どうしてもイヤなのだが、駄々(だだ)をこねたところでどうしようもないことは分かっていた。
結局私の想いは、優也くんにはどうしても届かなかった。
とても寒い日だった。公園は近い筈なのに、たどり着くまでの道のりは限りなく遠く、歩いていると北風が心臓に突き刺さるほどの寒さだった。
「いきなりだけど、明日予定ある?」
「え、どうして」
「イヴだから一緒にいたいなって思って」
「そうなんだ」
「そうなんだじゃないだろ。いつもは有希の方から誘ってくるから油断していたんだ。ずっと予定を空けて待っていたけど気づけばもうイヴの前日になっているじゃないか。イヴなのに、なぜ今回有希は俺の予定すら聞いてこなかったんだ」
「同窓会」
「え」
「だって、明日は、文化委員長の同窓会があるんでしょ。優也くんは、てっきり文化委員長の同窓会に出席すると思っていたから」
「・・・どうしてそう思ったの」
「紺野千聡が来るから」
「・・・ゴメン。ちゃんと言うべきだった」
「同窓会は、とっくに断ったんだ」
「どうして」
「イヴに、好きな人と一緒にいたいと思うのは当然のことだろ」
「え・・・」
「ボクが好きなのは、有希だけなんだ」
「うそ・・・」
「有希は「絶対に好きにさせてみせる」って言っていたよね。負けたよ。完敗だよ」
「・・・」
有希が目を見開いてこちらを見ている。まばたきするのも忘れるほどに見つめている。
「ボクは有希に沢山のドキドキをもらったよ。この感情はもう間違いない。ボクは有希が好きになってしまったんだ」
「うそ」
「本当だよ。本当に好きなんだ」
「うそ」
「本当だって、ボクは有希と一緒にいてこれ以上ないくらい幸せなんだから」
「うそ」
「うそじゃない。何回言わせるんだ」
「・・・本当に私だけを見てくれるの」
「あたりまえだろ。ボクには有希しか見えない」
顔を近づけて、優也くんの瞳を除きこむと優也くんの瞳には、私だけが映っていた。
さっきまではあれだけ寒かったはずなのに、今ではその寒さが全く気にならなくなっていた。繋いでいる優也くんの手がものすごく暖かいのが原因かもしれない。
もっと近づくと更に私が大きくなった。
もっともっと近づいた。
フッと優也くんが見えなくなった。顔を近づけすぎた私たちはいつの間にか瞳を閉じていた
クリスマスイヴの前日の十二月二十三日は、私の特別な記念日になった。
イヴ当日。
「はい、プレゼント」
少し小さめの袋を開けると、手のひらサイズのものすごくカワイイラッコのぬいぐるみが顔をのぞかせた。
「うわー。カワイイ」
いつもの嬉しそうな笑顔を見せる有希に戻っていて、優也は一安心するのであった。
しかも、昨日のことでボクたちは一つ階段を上がってしまった。
そんな二人のこれからに、期待で胸が膨らむ優也なのであった。
「さてここで問題です。イヴの夜に恋人たちは一体何をするでしょーか」
「イヴの夜って・・・」
「なんかいやらしいこと考えてるでしょ」
「そんなことないって」
「だったら何をするでしょーか」
「・・・降参です。教えてください」
「正解は、パッパカパーン。ポッキーゲームでーす」
「またかよ。でもポッキーなんて持ってないよ」
「私も持っていません!」
「え、持ってないの?だったらどうするの。買いにいくの?」
「ああっ。やっぱり本当はやりたいんだ」
「でどうするんだ。買いに行かないと出来ないぞ」
「そんなに焦らなくても大丈夫。エア・ポッキーゲームでもOKです」
「それって、ただの・・・」
「でも、するでしょ。ハイ」
有希がポッキーをくわえる仕草をする。
有希のちょっと尖った口がどうしようもなくカワイイ。
有希がボクの顔を掴んできたが、もう逃げることはしなかった。
イラストは、エアポッキーゲームをするために、有希が口を尖らせている所です。
spellaiアプリとAIイラストのアプリを併用しています。




