ドキドキMAX2回目デート編
菊池優也と小松有希。今度は、京都の宝ヶ池公園にボートを乗りに来ていた。
二回目のデートである。
ボクは、有希ちゃんはもっと、遊園地などのテーマパークみたいにはしゃげる場所が好きなものと思っていたが、全然そんなことは無かった。
大人しい乗り物でも十分楽しんでくれる有希ちゃんだった。
ボートに乗り終わり、二人でベンチに座っていると、有希ちゃんが勝負をかけてきた。
「ここで問題です。私が今、優也くんとやりたいことは何でしょーか」
「・・・なんだよ」
「パンパカパーン。これです」
有希ちゃんがごそごそと鞄をまさぐりポッキーを出してきた。
「一緒に食べるってこと?」
「ポッキーゲームでーす」
「ポッ・・・。バカか」
「だって、優也くんとやるのが夢だったんだもん」
「誰かに見られたらどうすんだ」
「だれもいないじゃん。それに見られても良いじゃん。私は全然気にしない」
「わかったよ」
「先に罰ゲーム決めておこうか」
「なんかいやな予感がする」
「また、そんなに警戒しなくても・・・」
「じゃあ、負けた方が、何でも私の言うことを聞くってことで」
「私のじゃなくて勝った方のだろ」
「ばれたか。でもどっちでも関係ないもんね、絶対勝つ自信があるから。早速始めるね」
有希ちゃんが、ポッキーを一本くわえてこっちを見る。
「は・や・く」
こうして、有希ちゃんの強引な要求により、二人はポッキーゲームをすることになってしまった。
それにしても、ポッキーゲームとは。
どさくさに紛れてでもキスがしたいと言うことなのか。
ボクは好きが先だと思っていたが、有希ちゃんはキスを先にしてしまえば、ボクが有希ちゃんを好きになってしまうと思っているのだろうか。それともその後の罰ゲームが本当の狙いなのか。
有希ちゃんの真意は分からなかったが、ポッキーゲームくらいでは、どうもならないだろうとボクは完全に高を括っていた。
しかし、ポッキーをくわえあった状態では初めは分からなかったが、この後、ポッキーゲームの神髄を一瞬で理解してしまう優也なのであった。
有希ちゃんがポッキーを噛み砕いた瞬間に、有希ちゃんのその唇の動きがポッキー越しに、ボクの口の中に直に伝わってくるのだ。
なんとも言えない弾力だった。そしてこの感触は、唇の動きだけではい。ひょっとしてあれなのか。有希ちゃんのあれが、その弾力がボクの口の中にもぞもぞと入ってきている。
優也はフレンチキスの経験さえないが、それを一気に飛び越えていきなりディープキスしているような感覚に陥った。
そしてそれだけではなかった。
一口進むと有希ちゃんの顔が大きくなり、また別の緊張がやってくる。その直後にまたあの弾力が優也を襲うのだ。
これが、有希ちゃんが本当にやりたかったことなのか。
天然?それとも本当に狙ってやっている?
優也は、完全に脳が溶けてしまい、とても冷静ではいられなかった。
一口、更に一口と進むにつれて有希ちゃんのとっても可愛い顔が瞬く間に近づいてくる。いつの間にかもうポッキーは見えなくなってしまっていた。
目の前にさっき迄はポッキーを見ようとする有希ちゃんの顔が見えていたが、それをあきらめた有希ちゃんの瞳が真っ直ぐにこちらに向けられた。
「・・・」
「・・・」
超至近距離で見つめ合っている状態だ。見つめ合っているとなんかいい雰囲気になってきた。もうキスをする直前の恋人の距離にまできている。
「こ、この雰囲気は・・・」
もうこの雰囲気は完全に恋人同士が醸し出すものだった。そしてこのまま進むと確実に有希ちゃんの唇に当たってしまう。しかもそのもぞもぞと動く唇がだ。
さらに一口近づいた。有希ちゃんのプルンとした唇がもう直ぐそこだ。今度はポッキー伝いに有希ちゃんの唇の柔らかさまでが感じられるようになってきた。もう絶対にあと一口で到達してしまう。
実際に唇には当たっていないが、もう感覚的には完全にディープキスだった。
これがポッキーゲーム
優也は一瞬、軽いめまいの症状に陥った。
ポッキーゲームとは、こんなにも素晴らしいものだったのか。しかも、このゲームにはまだ続きがある・・・。
あと一口で、有希ちゃんと本当に・・・
そう思った瞬間。優也の心臓が飛び跳ねそうな事態が発生してしまった。
なんと有希ちゃんの手が優也の顔を掴んできたのだ。
ポキッ
有希ちゃんのその行為が想定外すぎて、優也はポッキーを折ってしまった。
優也は、何もかもが恥ずかしくなっていた。この場から逃げ出したい気分になっていた。
「バ、バ、バ、バカ。いきなり顔を持つなよ」
「だって、顔の位置を確かめたくなって」
「ビビったわ」
「もう。そんなに怒ることないじゃん。こっちだって結構ショックなんだよ」
そうだ。そんなつもりは当然ないのだが有希ちゃんからしてみれば、ボクは「拒否」ともとれる行動をしてしまったのだった。
「・・・ゴメン。悪かった。何でもいうこと聞くから、機嫌直ってくれないか」
「ほんと、やった。勝利のブイ」
「お手柔らかにお願いします」
一瞬で有希ちゃんの機嫌が直ってくれて一安心する優也だった。
「どーしよっかなー」
有希ちゃんが考え込んでいたが、遠くを見つめていたと思うと「あっ」という声とともに急にこっちを振り向いた。
「アレがやりたい」
「ちゃんと主語を言ってくれないか。その言い方紛らわしいんだよ、本当に。いつも言ってるじゃないか」
「主語?」
「そうだよ。主語だよ」
「「私は」やりたい」
「違うだろ。「何が」だよ」
「私は「ナニが」やりたい」
「ちがーう」
「なんでそんなに怒るの。もう。わけわかんない」
優也の顔が更にポッキーゲーム以上に赤くなる。でも、その意味を分かっているのは優也だけだった。
しかし、有希ちゃんにその理由を説明する気にはなれない。
そんなことばかり考えていると思われたくはないのだった。
「・・・とりあえず、人前でその言い方は絶対するなよ。で結局何がやりたいんだ」
「あれだよ」
有希ちゃんが公園の奥の方で遊んでいる親子を指さす。その親子の方に顔を向けると、小さな女の子が父親の腕にぶら下がってキャーキャー言っているのがこちらにもうっすら聞こえるのだ。
「なんだよあれかよ」
「だから初めからあれだって言ってるじゃん。あれの名前が分からなかったんだからしょうがなくない?」
「そうか。そりゃそうだよな。やっぱり」
優也が、納得と少しの落胆との入り混じったため息を漏らすのであった。
そんな優也を有希ちゃんがじっと見つめている。
「今、私のことまだまだ子供だって思ったでしょ」
「そんなことないよ。俺も面白そうだなって思ったよ。よおしさぁ来い」
優也が、足を肩幅まで広げて有希ちゃんに向って腕を差し出した。
「キャー」
宙に浮きながら優也くんの腕にしがみつき、ひとしきり優也の腕を堪能する有希。
結果的に、今日も有希に翻弄される優也であるが、そんな有希を見ているだけで、優也はとても幸せな気分にさせられる。
喜んでいる有希、過去で一番落ち込んでいる有希、勢いに乗っている有希、すっとぼける有希、一瞬で沸騰する有希、もぞもぞと唇が動く有希、そして真っ直ぐボクだけを見つめる有希。
有希と一緒にいるだけで、ボクはドキドキの連続だ。
どんな有希もたまらなく愛おしい。
「絶対に私のことを好きにさせてみせる」と豪語した有希ちゃんは伊達ではなかった。
たった二回のデートで完全に菊池優也のハートを射止めてしまったのだ。
優也はもう、完全に有希のことが大好きになっていた。
イラストは、小松有希がポッキーゲームを誘っているところです。
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