僕の森に魔獣がいないのは単純な理由だった
一部修正してます。
地下水発見!北東にあるという川をこの森まで引くため、森を拡張していたら地下水を見つけてしまった……
うん。嬉しい……水を発見したことはホント嬉しい……
だけどもう少し早く発見できてればなぁ……
うん。疲れた。トレントで植物であり、魔樹ではあるんだけど疲れた。
精神的に……
でもこれまで水なんてなかったはず。
おそらく、『アースチェンジ』で土壌化し森を創ったことで少しずつ、地下に水が溜まっていったのかな。
ということで地下水まで穴を開けることにした。
その開けた穴から、少しずつ水が地上に湧き上がってくる。
『アースチェンジ』を使い水を溜める溜め池を作る。その溜めた水が溢れてしまわないように水路を作っておく。
もっと水が増えれば、森全体に水が行き渡るようにしたい。
だから、川を引いてくるのはやっぱり必要だと思う。
地下水が尽きない保証はないんだしな。
というわけで、明日からまた森を拡張していくことにしよう。
そしてここまで川を引く。
空気中のマナも使用できることが分かったしな。足りない分は僕の蓄えたマナを使えばいいしな。
で、水の件はとりあえず良しとするぞ。
太陽が沈み、月が顔を出す。
次は、と。
カルラはもう寝てるのかな。
ベッドを作ったはいいんだが、布団が用意できなかったんだよな。
折角綿花や麻も作ってるんだから、綿で枕と布団ができればと思うが布がない。
毛皮でもいいけど。
でも毛皮となると、この前仕留めたウルフがいるけど解体も鞣すのもできない。
布があったとしても、それも僕には加工できない。
だって今の僕はトレントで手先不器用だから。
それに針と糸もないんだよな
そういえば麻から糸ができるんだったかな。
麻は花が咲き終えてたし、一度刈り取って、日当たりのいいところに置いとくか。
それでうまくいけば糸に加工できるだろう。
カルラは縫物とかできるのかな?
あと、問題は食料だよな。
果実だけだとあまりよくないよな。やっぱり肉や魚は必要だろう。
とはいえ、この森には魔獣はいないし、川がないから魚もいなんだよな。
川を引いて、ここまで魚が来たら食べれるようになるんだろうけど。
魔獣はこの辺りに生息してないのか?
あとで縫物の事と魔獣の事をカルラに聞いてみるか。
次の日、ようやく落ち着いたカルラが家から出てきた。
《おはようカルラ》
「おはようトレントさん」
寝不足なのか、少し眠そうだ。
《あまり眠れなかった?やっぱり布団がないとぐっすり眠れないよね》
布団がないせいでちゃんと疲れが取れなかったんだろう。
と思ったら違った。
「違う!昨日の貴方の出鱈目な能力のせいよ!あんなの見たせいで現実受け入れるのに時間が掛かったのよ!」
《それはごめん》
はい。朝から怒られました。
食事を終えたカルラに地下水を発見したことを伝える。
その地下水がある穴に入っていくカルラ。
お水が冷たくて美味しい、と言うカルラ。
水が飲めたみたいで良かった。
少しして穴から出てきたカルラに
《カルラは裁縫や毛皮を鞣したりできる?あと糸や布を作ったりとか》
「うーん。私はできない。やったことなし」
《そっか》
カルラもできないのか。どうしたものか。
「どうしたの?」
《いやね、カルラの布団を作ってあげたかったんだけど》
頭を傾げるカルラ。
「布団?なんで?」
《布団がないとぐっすり眠れないし、疲れも取れないだろうと思って》
「でも布団って人間が使ってる物でしょ?」
《なのかな。亜人達は布団を使わないの?》
「他の亜人がどうかは知らないけど、私達は布団なんて使ったことなかったわ》
本当に布団を使ったことがないようだった。
《じゃあ、寝るときはどうしてたの?》
疲れが取れないだろう。と思ってたら
「私達は洞窟の中や木の上で寝ていたわ」
とのことだった。
洞窟の中か木の上って、まるで外敵から逃てる動物みたいじゃないか。
《もしかして何かから逃げてるのか?》
そう聞くと目を大きく開けた。
「えぇ、まぁ。私達ハーピィ族は一つの場所に留まれないの。それで空を飛んで移動するから、あまり重たい物は持てないのよ」
だから布団も持ってないわ、と言うカルラ。
《一つの場所に留まらないって。放浪するのは何か理由が?》
「えぇ。人間に見つかると捕まる可能性があるのよ。人間に捕まると羽根を毟られて殺されるか、奴隷として売られたりするから。だから同じ場所に長くいるのは危険なの」
聞いて怒りが沸いてきた。
この世界の人間族は最悪だな。
《そうなんだな。大変だったんだな》
本当に大変だったんだろう。
この地に安心して暮らせる場所を作り、カルラの仲間が安心して生活できる環境を作ってあげたいな。
もしかしたら、他の亜人達もカルラ達のような生活をしている物がいるかのもしれないしな。
《それとこの辺りに魔獣はいないのか?あまり見ないんだが》
「魔獣はこの辺りにはいないようだけど、遠くに行けば魔獣は普通にいるわよ」
と襲えてくれるカルラ。
《結構いるならなんでこの辺りにはほとんどいないんだ?》
魔獣が多いならこの辺りにも現れてほしい。
レベル上げしたいのに。
「この辺りにいないのは単純な理由よ」
カルラが分からないの?みたいな顔をして僕を見る。
いったいどんな理由があるっていうんだ?
「餌がないからよ」
《……餌?》
「えぇ、餌。植物がないから草食魔獣はまず近づかない、草食魔獣がいないから肉食魔獣も来ない。鳥獣系や昆虫系の魔獣も同じような理由ね」
《あぁ、なるほどね》
そんな理由だったか。確かに食べる物がないとやって来ないか。
《でも半年前に巨大な狼魔獣がやってきたぞ》
と言うと
「群れで?」と返された。
《三十頭の群れだったな》
「それは多いわね。そこまでの大きな群れは珍しいわ。狼は多くても十頭位でしか群れないのに」
とのことだった。
「それだけの狼の大移動となると何かに追われていたか、拠点を変えてたのかもしれないわ」
《ふむふむ》
ここに魔獣が現れたのはあの時だけだ。
その時はこの森はできてなかった。
今はこれほどの森があるんだ。ならその内魔獣達がやってくるのかもしれないな。
その時を待ち遠しく思うことにする。
「それでその狼はどうなったの?」
《ああ、攻撃されそうになったから全て仕留めたよ》
「殺したの?」
《うん。だってあの巨大狼達、一斉に襲い掛かってきて怖かったから》
カルラは溜息を吐いて呆れている。
「私ならそれだけの狼に襲われたら一目散に逃げてるわ」
でしょうね。
僕だって本当は逃げたかったけど、根付いて動けないんだ。しょうがないじゃん。
「トレントさん無事で良かったわ。お陰でこうして貴方と会えたんだものね」
少し困ったように笑うカルラ。
カルラさん。よく表情が変わって可愛いんですが。
心配してくれてありがとう、カルラ。
僕もカルラと会えて良かったよ。
まだ二日目だけどね。