これからのこと。
一部修正してます。
しばらく沈黙が続いた。
人間の自分勝手な欲のせいで豊かだった森はなくなり、亜人や魔獣の住処は奪われてしまったのか。
人間族がどれだけ死んだのかは分からないが、他人の住む領域に土足で踏み込んで散々暴れまわったんだ。
人間族が死んだのは自業自得と言えるだろう。
だが巻き込まれた亜人達は……。
《『セレス大樹海(世界樹と精霊の森)』で住んでた亜人はどうなったんだ?》
気になったことを聞いた。
「亜人はほとんどが死んでしまったと聞いています。生き残ったのは僅かで、森の外に逃げた者達だけだと」
絶滅したわけではないことを聞いて安心した。
「私も生き残りの子孫なのです」
《そうなのか。生き残った人達の証が残っているんだな。よかった》
「どうして貴方が喜んでるんですか?」
《理不尽に奪われた尊い命のことを思うと悲しすぎるけど、でもその理不尽に負けず生き延びた命があって、それがこれまで紡がれてたんだ。そしてその紡がれた証はこれからも続いていく。そう思うと嬉しいに決まってるじゃん。》
「ふふっ。変わった人ですね。あっ、人じゃなくトレントさんでしたね」
とカルラが優しく、笑みをこぼす。
《かつてあったという『セレス大樹海(世界樹と精霊の森)』を見てみたかったな。たくさんの亜人にさぞ愛されて。いい森だったんだろうな》
……僕も誰かに愛される存在になりなたい。
「私はお爺様とお婆様から『セレス大樹海(世界樹と精霊の森)』の話をよく聞かされました。とても大きな世界樹と桜の木があったよと。変わった植物もたくさんあったんだよって。だから、この森を見て思います。とても大きな貴方と見たことないたくさんの木々。緑豊かに広がっている森。かつての森はこのような姿だったのではないでしょうか」
カルラはかつての森の姿を想像し、今の森の姿を見て話す。
「さすがに念話で話しかけてくるトレントはいなかったでしょうが」
森がもっと大きくなり、昔のように豊かになれば、昔のように亜人や魔獣が集まり一緒に生活できるかな。そうなるといいな。
たくさんの人で賑やかになる僕の森。
想像すると楽しそうだ。
「もし……もしもこの森が昔のように広大で豊かな森になれば、昔のように多くの亜人が集まって暮らすことができるでしょうか?」
《僕も同じことを思っていた。みんな今の生活があるのだろうけど、またこの地に集まってくれたらいいな》
本当にそう思う。
生き残ってる人はどのくらいいるんだろうか。
《そういえばカルラはどこから来たんだ?》
ビクッと体を震わせ、目が明後日の方に向く。
?どうしたんだろう
「えーっと、それは……」
と言いたくないようだ。
《まあ無理に答えなくてもいいけど》
と僕が言うとほっとした顔をしてる。
《カルラはこれからどうするんだ?》
「うーん。どうしましょう」
困ったような表情でつぶやくカルラ。
《どこか行く場所があったんじゃないのか?》
「行く当てなんてないです。本当にどうしよう」
困ったように。寂しそうに目を伏せて言う。
そんなカルラが迷子の子供のように見えてしまった。
《行く当てがないならここにいてもいいぞ》
「え!?いいの?」
《うん、全然いいよ》
僕ずっと一人で寂しかったからな。
《その代わり、また話し相手になってくれないか?》
「うん!わかったわ!ありがとう、トレントさん!」
《じゃあ決まり!そうと決まれば家が必要だな》
「家なんていいですよ。雨風凌げれたらどこでもいいから」
《そうか?でもカルラみたいな女の子を野宿させるとは嫌だからな》
夜は寒いだろうし、安心して休めるところで休まないと体もしんどいだろう。
そう思って、僕の横少し距離を取ったところに、アースチェンジで木々の間隔を空けて土を均す。
そして屋久島の縄文杉のような超巨大な杉の木を創り出す。
超巨大杉の中で人が住めるような空間、そして備え付けのベッド、ミニテーブルとイスも一緒に創造する。
すると創造した通りの仕上がりになったと思う。
《これでよしっと。これでどう?最低限住めるようにはなってると思うけど》
確認してみてと言いつつカルラを見ると、ポカーンと口を開けて固まっていた。
《どうした?》
「……は?今の何!?」
《何って杉の木を創って家を作っただけだよ》
「いやいや、創っただけって。なんでそんなことできるの?」
《できるよ。さっきもやったじゃん。それにこの森は僕が作ったことも言ったじゃん》
カルラ、僕がこの森を創ったこと、まだ信じてなかったんだ。ちょっとショックだ。
《ま、その話は置いといてさ。カルラ、家の中見てみてよ、布団がないのは申し訳ないけど》
「ええ。分かったわ」
そうして杉の木ハウスの中を見に行くカルラ。五
五分程して、カルラが杉の木ハウスから出てくる。
「ちょっと!なんでベッドにテーブルとイスまであるのよ!」
《えっ!?気に入らなかった?ごめん》
「とっても気に入ったわよ!こんな家に住めるなんて嬉しいに決まってるじゃない》
どうやら気に入ってくれたみたい。
……なら怒らなくてよくない?と思う僕。
果樹をいくつか植えてて、実はいつも付いてると思うから好きに食べてね。
ただ肉はないんだ。この森に魔獣が全然来ないからね。
「分かったわ。何から何までありがとう」
《どういたしまして》
(お肉がないのは残念だけど)
と小さくつぶやくカルラ。
こればかりは、僕にはどうしようもないからな。すまんカルラ。
でもよかった。カルラの役に立てた。そのことが嬉しかった。
《そういえばカルラ。話し方が砕けてきたね。フレンドリーな感じでとても嬉しいよ》
そういうとカルラは顔を赤くしていく。
《もしかして自覚なし?》
「あっ、いや、あの」
顔を赤くしたまま、オロオロするカルラ。
《堅苦しいのは苦手だから、カルラさえよければ、今みたいに砕けた口調で話してくれるといいな。友達になれたみたいで嬉しいんだよ》
「もう。分かったわよ」
とまだ片頬を膨らませて照れくさそうにカルラは頷いてくれるのだった。