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フェンネとの会話

一部修正しております。

 集落の代表者が来る日になった。



 ヒイの家で寝ていたフェンネが僕の枝に上ってくる。


「話に聞いてはいたけど、この場所にこれほどの森ができているとはね。ここは荒れ野だったはずなのに」


 僕の枝に上ってきたフェンネは高い位置から、辺りを見てそう口にする。


「トレントって珍しい名前だと思っていたけど、まさか絶滅したはずの魔獣であるトレント本人だったなんてね。予想もしてなかったわ」


「ははは。確かに僕がトレントと呼んでくれとは言ったが魔獣のトレントとは言ってなかったからな」


 今の僕はトレント本体に戻っている。


 本体のままでも、念話ではなく声を出して会話することができている。


「そうそうトレント。貴方は転生者なのね」


「……えっ?」


 えっ?フェンネは今なんて言った?


「ごめんフェンネよく聞こえなかった。今なんて言ったんだ?」


「だから貴方は転生者でしょ、って言ったの」


 聞き間違いじゃなかった。


 どうして僕が転生者であることがばれたんだろう?


「違う、と言ったら?」


 なんとか誤魔化せないだろうか?


「違うと言われても、神様からお告げがあったから。貴方が転生者だって」


 無理でした。神様から聞いたそうです。この世界には本当に神様が存在するのか?


 だとしたら誤魔化せない。正直に話そう。


「そうだよ。僕は転生者だ。僕が転生者だあることを他の皆は知らない。だから秘密にしておいてくれ」


「分かってるわ。誰にも話さないと約束するわ」


 まあ、皆にばれても大丈夫だとは思うが元人間だというのはあまりいい気はしないだろう。かつてセレス大樹海を焼いたのは人間なのだから。


「もし迷惑じゃなければ、トレントの前世の事を聞いてもいいかい?」


「別にいいけど、面白いことは何もないよ?」


「それでも聞いてみたい」


 僕は分かった、と言って何を話すかな、


「僕はね、この世界とは別の世界で暮らしていたんだ。魔獣や亜人は存在してなく、魔法やスキルも使えない世界。魔法は使えないけど、科学というものが発展していて、色んな機械があった。地上を早く走る乗り物、水の上を走る乗り物、空を飛ぶ大きな乗り物。穴を掘る機械や農作業を楽にしてくれる機械とかね」


「へ~。魔法が使えず、魔獣や亜人がいないというのは驚きね」


 フェンネが興味深く聞き入っている。


「あれ?魔獣がいないのにトレントは存在してたの」


 僕が現在魔獣だから、前世でも魔獣だと思っているようだ。


「僕の前世はトレントじゃないよ」


「そうなの?」


 フェンネは不思議そうに聞いてきたから、僕は頷く。


「じゃあ、何だったの?」


 言っても大丈夫だろうか?でも言った方がいいのかもしれないな。


「僕は前世では人間だった」


 そう聞いたフェンネの動きが止まり聞き返してきた。


「人間?」


「そう。人間」


 フェンネは黙っている。


「そうだったのね。トレントはどんな人生を歩んだの?」


「えっ?」


 フェンネがあっさり流すから、今度は僕が言葉に詰まった。


「ん?どうしたの?」


 フェンネが僕に聞いてくる。


「僕はフェンネを襲った人間と同じ種族だったんだぞ?平気なのか?」


 そう。人間達はフェンネ達を襲ったんだ。フェンネは殺されそうになって、子供達は連れ去られそうになって。


 人間を憎んでいるんじゃないのか?


「トレントはあの連中とは違うでしょ?」


 何言ってるの?とフェンネは言った。


「貴方は前世では人間だったとしても、今はトレントで、私達を助けてくれた。貴方はあの連中なんかと同じじゃない。だから大丈夫」


 フェンネはそう言う。


 そっか。少し肩の荷が下りたよ。


「ねえ。そんなことより、貴方が前世でどんなことをしたのか教えてよ」


「しょうがないな。でも本当に面白い話じゃないからな」


「いいよいいよ」


 フェンネは興味津々だ。


 僕は正直気が進まない。が、話しておくか。


「僕の前世の人生は、ずっと独りだった。家族は早くに死んで、親戚の所に行ったけど、虐待されて育った。同世代の友達もいなかった。大人になって仕事をしたけど、休むことなく散々こき使われてね。ある日大きな桜の木の下でぽっくり死んだんだ」


 話すとたったこれだけのことなんだな。


 楽しいこと嬉しかったことなんて覚えてない。あったのかすら分からない。


「大変な人生だったのね」


 うん、大変だった。


「でもそんな大変な人生でも何かこうなってほしいとか、こうなりたいとか。そういう望みや願い事はあったでしょ?」


 そう言われると、死ぬ間際に願ったことがあると思い出した。


「あったな。神様を祭る御神木の下で願ったよ。死ね間際だったけどな」


「じゃあ、その時の願いを神様が聞き届けたんだろうね」


 そうだな。そうだろうな。だとしても……


「……だとしても、なんでトレントなんだろな」


「トレントに転生してるということは、木になりたいとかそういうことを祈ったんじゃないの?」


「うぐっ……」


 その通りです。


「ねえ、トレント。良かったら貴方の前世の名前を教えてくれる?」


「別にいいけど。神桜大樹かみざくらだいきだ」



「神桜大樹。貴方は転生できて……この世界に来れて、良かったかい」



 凄く久しぶりに名前を呼ばれた。


 それはそうだ。だってこの世界に来てから誰にも教えていないのだし。


 前世では僕の名前を呼んでくれる者は誰もいなかった。


 名前を呼んでもらうのがこんなに嬉しいことだったなんて知らなかった。


 それにこの世界に来て、一緒に暮らす仲間が増えて、とても楽しい日々を送っている。


 前世は地獄の日々だったけど、この世界は天国の様だ。だから、


「うん。この世界に来れて良かったと心から思っているよ」


「それは良かった。それを聞いて神様も喜んでくれていることでしょ」


 だといいな。


 神様が僕をこの世界に連れてきたんだろうか?


 分からないけど、一つ言いたいことがある。


 この世界に連れてきてくれて、ありがとう。


 この世界では精一杯楽しく生きるよ。




 そうして話しているうちに、上空にアルファ達の姿を発見した。


 集落の代表者が到着したようだ。


 さてと、お出迎えに行くとするか。



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