本当に生まれ変わってた。でもトレントって...
一部修正をしています。
【ステータス!】
目の前にウインドウ画面のようなものが表示された。
種族:トレント(魔樹)
名前:神桜大樹
称号:転生者、不幸な人生を乗り越えた者、世界初のトレントに転生した者、耐え忍ぶ者
レベル:1
スキル:光合成…光を蓄え成長促進する。
:ハードニング…体を固くする。
:アブソーブ…あらゆる物を吸収する。
とある。
なんと僕は転生してトレントになったようだ。
『転生』ということは向こうの世界では死んだということになるんだろう。
死んだ原因はやっぱり過労か?
ま、今となってはどうでもいいか。
もうあんな過酷な日々を送らなくていいんだ。
悲しんでくれる人はいない。あっちの世界に未練もないしな。
それより念願の木になれたことを喜ぶとしようか!
喜ぶ?木は木でもトレントは魔樹だ。
……?
魔樹って何?魔物や魔獣とは違うのか。
この世界には変わった生き物がいるということだな。
僕はトレント。トレントは木。だからここに根付いていることになる。
ということはだ。
僕はここから動くことができないだろう。
木なんだから寿命は長いよな。
となると僕はこの地から動くことができず永遠にこのままということか?
この荒れた何もない場所で?
誰もいないのに?
木になったらなったで色々と思うことが出てくる。
なんで僕は木になりたいなんて願ったのだろうか。
はぁ……。こんなことなら、普通に人間の姿で転生して、チート能力で無双するか、便利な生活魔法でスローライフがしたかったよ……。
ま、折角第二の人生ならぬトレント生が始まったばかりだ。
この先どうなるかなんて分からないし、これ以上うじうじ考えても何も始まらん。なるようにしかならないだろう。
ということで、トレントとしてこの世界での楽しみを見つけることとしよう。
転生してから二ヶ月程経った。
この二ヶ月スキルの検証していた。
暇すぎてそれしかすることがなかったからな。
で、アブソーブした。
何に対してアブソーブしたかと言えば大気だ。
なんでそんなものを吸い込んだかって?
そこに風があるから。だって他に何もないし。
他に何もないとはいえこんな荒れた大地にも風は吹いてる。呼吸ができてるから空気はある。なのでアブソーブを使った。
そしたら意外と効果があった。
効果があると分かれば吸って吸って吸いまくった。
だって暇だったから。
この二ヶ月間、四六時中使いまくったせいで今では意識しなくても常時発動してる状態だ。
それである時気付いた。体の中を何かが巡ってる感覚があるなと。
気持ち悪いものではない。むしろ心地いい感覚だった。
まるで肩凝りが解れたような、血流が良くなったような感覚。
その感覚が日に日に増していった。
それから僕は大気に意識を集中させると、大気中にキラキラした何かが漂ってることに気が付いた。
なので大気中のキラキラ光ってる物のみを対象にアブソーブを使った。
そうしたらキラキラしてる物のみを吸収することができた。
すると、体内を何かが巡る感覚が強まった。心地よさも増した。
これがなんなのか分からないが、体に悪い物ではないだろう。
こんなに心地いいんだから。
というわけでこれからも吸収し続けた。
それと光合成も使用した。
僕は一応植物でもあるから常に光合成をしてはいるけど、スキルを意識して使用したのは初めてだった。
そうしたら、いっきに僕の体はかなり成長した。高さが二十メートル超えてるし、幹回りも二回り以上大きくなってるし。
……成長早すぎでしょ。
そのせいで枝もかなり伸びた。
意識すると少しずつだが、枝を動かすことができるようになった。
最初はぎこちなかったが、今では自分の手足のように動かせる。
根っこの方は動かないけど。根っこも自由に動かせたらなぁ。
そういえば、光合成が影響してるのか分からないが、視野が以前よりも広がり、視力も上がったような気がするんだよな。
見え方だけじゃなくて、枝も日に日に動かしやすくなってるし。
今では幹の部分も揺らすことができるようになった。
今までピクリとも動かなかったのに。
今は僅かだが動かせるようになった。少し揺らす程度だが動くようになってきた。
ハードニングは体を固くさせることが可能なようだ。防御力向上だな。
これがなんの役に立つのかはまだ分からないが。
更に三ヶ月後、遠くで土煙が上ってるのが見える。角を生やした巨大な狼の群れがこっちに向かって走ってきてるのがよく見える。
(転生してから、今まで何の生き物も見なかったのに珍しい。何かに追われてるようには見えないし、たまたま大移動してるだけなのかも)
それから三十分位すると近づいてきた狼の大きさがよく分かる。全長ニ.五メートル程ある。
その巨大狼三十頭がまっすぐ僕のところに迫ってくる。
だいぶ近づいてきたことで、狼たちがよく見える。
巨大狼三十頭の内、四頭は他の物と比べて更に一回り大きく毛色も違うし、独特な見た目をしている。
毛色が違う四頭。
赤い毛色で体に炎を纏った狼、青い毛色で氷を纏った狼、銀の毛色で電気を纏った狼、淡緑の毛色で風を纏った狼。
残り二十六頭の毛色は灰色だった。
まさか戦闘になったりしないよな?
何も起こらず、素通りしてくれたらいいけど。
思考していると、巨大狼との距離が百メートル程となった。
僕は戦闘になった時に備えて、ハードニングで体を固くする。
五十メートル離れた位置で立ち止まる巨大狼。
毛色の違う巨大狼四頭を先頭に他の灰色巨大狼二十六頭はその後ろから僕を警戒して唸っている。
しばらく対峙していると巨大狼達が突進してきた。
嫌な予感を感じた僕は攻撃に出ることにした。
ハードニングで固くした枝を鞭のようにしならせ狼達に叩きつける。
叩きつけた狼達は次々と吹っ飛んでいく。
更に硬化スキルでを硬くした葉っぱをトランプ手裏剣のように狼達に向けて飛ばす。
飛ばした葉っぱは、狼達の頭や体へと突き刺ささり、切り裂いていく。
そうしてあっという間に全ての灰色の巨大狼を仕留める。
色違いの赤色巨大狼は纏う炎を大きくさせ、
青色巨大狼は犬歯が伸び氷でコーティングされ定期十センチメートル程の牙を作り出し、
銀色の巨大狼は角の間に電気を収束させていき、
淡緑の巨大狼は小石を飲み込んだ小さな竜巻を作り出し、僕に飛び掛かってきた。
ハードニング発動してるから大丈夫だろう、と身構える。
そういえば試したいことがあった。
ちょうどいい。こいつ等には実験台になってもらうか。
巨大狼達を枝を使って拘束する。
本当なら根っこで拘束してみたかったが、動かせないんだから仕方ない。
そして、アブソーブ発動。
生きた物に対してこのスキルを使ったことはなかった。
だから今回試させてもらう。
すると巨大狼達が干からびて動かなくなる。
体内の水分という水分がすべて吸われたようでミイラのように成り果てた。
……狼さん、ごめんなさい。まさかこんなことになるとは思いませんでした。
うん。誤って済むなら、警察も医者もいらないよね。
強力すぎるでしょ!このスキル!
まぁでも脅威は去ったということで良かったということにするか。
全ての巨大狼が動かなくなるのを確認すると、初めての魔獣が現れ、襲われそうになって、何とか倒したという実感が沸いてきた。
無事でいられたことに感謝し強く安堵した。
僕はそう一息ついていると、
『ピコーン』
と頭の中で鳴り響き、目の前にステータスウインドウが表示された。
少しでも面白い作品になるように皆様のご意見を聞かせて頂けると幸いです。