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セレス大樹海が滅んだ真実

一部修正してます。

 サンダーフェニックスがこの森にまた帰ってきたいと言ってた。それはつまり


 《お前はセレス大樹海で暮らしてたのか?》


 《はい。四千四百年以上前まで世界樹と精霊の宿る桜の木である精霊樹と共に暮らしてました》


 《そうだったのか。と言うことはお前は生き残りの一人なんだな》


 《えぇ》と頷くサンダーフェニックス。


 カルラからはほとんどの亜人が死んだと聞いた。世界樹がこの森を滅ぼしたということも。なんとか逃げ延びた者がいたということも。


 他にも生き延びた人がいてくれて、こうして会えたことが嬉しい。


 僕はセレス大樹海があった時のことをもっと知らなければならない気がする。どんな些細なことも。


 《無神経なことを聞くが、お前はどうやって生き延びることができたんだ?》


 《それは精霊樹に宿る精霊のドライアド様からこの地から逃げるように言われたからです》


 苦い記憶を思い出しながら語ってくれた。


 《そっか。悪いけどその時のことをもっと教えてもらってもいいか?僕はかつてセレス大樹海があった時のことをもっと知らなければいけない気がするんだ》


 《……分かりました》


 と了承してくれた。


 《セレス大樹海に世界樹と精霊樹の2本の御神木を狙って、東の森を除いて三方向から人間族が攻め入ってきました。東以外の森が焼かれ、多くの同胞は東に逃げていきました。しかしこれは罠だったのです。東に逃げた同胞、男は殺され、女は捕まり奴隷へとされました。そういった状況の中、ドライアド様から残った同胞を連れて逃げるようにと言われました。私も残って戦おうとしましたが、生き残った同胞を救うためには私のような空を飛べる者が必要だったのです。そして空を飛べる同胞が生き残った空を飛べない同胞を連れ、北東の奥地に何とか逃げ延びることができました》


 人間は狡猾な生き物だ。



 しかし、気になることが。


 確かカルラから聞いたのは、

 『プランダラ王国の国王が欲の為に世界樹と精霊樹を手に入れようとし、そのことを知った他の国々がプランダラ王国に遅れを取らせまいと、セレス大樹海に軍を引き連れやってきた。そして集まった人間族が他の国に奪わせない為、森の中で戦争を始めて森が燃やされた』と聞いた。


 でもサンダーフェニックスから聞いた話だと、森を襲った国々は連携して、わざと亜人が東に逃げるように誘導したように思える。


 どういうことだ?他の国々は争っていたのではなかったのか?


 《なあ。この森を襲ったプランダラ王国と他の国々は争っていたんじゃないのか?僕はそう聞いてたんだが》


 聞いてた内容と違うから、サンダーフェニックスに聞いてみる。


 《えぇ。争っていました。しかし、この森を襲った国々はプランダラ王国の属国だったのです。北に位置する冒険者の国アルフォート王国、西に位置する商業の国マーキュリー共和国。プランダラ王国は南から南東に広がる大国です。その三ヵ国は属国から外れる為に争い続けていたのです。四百年経った今でも……》


 とのことだった。


 つまり、属国であるアルフォート王国とマーキュリー共和国はプランダラ王国の命令で使われたということだ。だから属国がある側の森は燃やされながら、セレス大樹海は進軍されてしまったということか。


 《そういうことだったんだな》


 《はい。私は生き残った者達を北東の奥地まで連れて行った後、急いで森に戻りました。しかし、そこは既に何もない荒野になってしまっていたのです。本当に……何も……残ってなかったんです……》


 《そうだったんだな》


 《……それから何百年も経った後、ドライアド様に偶然遭遇し聞いたのです。世界樹は森に侵入した者を一層するべく、自身を枯らせ森に瘴気を放ったのだと。その瘴気は触れたものすべてを塵に変えてしまうものだったとのことです。そして世界樹はドライアド様にこう言ったそうです。「あとは任せる。いつの日かこの地に戻って来られる日が来る。だからそれまで頑張って生き延びておくれ。みんなと共に」と》


 《そっか。じゃあお前達は今までドライアド様や同胞達と暮らしてたのか?》


 今もその者達と暮らしてるのか?そのことが知りたい。これはとても大切なことなんだ。


 《えぇ。北東に隠れ里を作り、そこでひっそりと暮らしています》


 とのことだった。


 《そっかそっか。良かったよ》


 安心した。生き残りがいてくれたことに。


 《それで、どうするんだ?お前達は僕の眷属になったんだ。その隠れ里には戻れないことになるかもしれないんだぞ。本当にいいのか?》


 《はい。構いません。私達の望みはいつかこの森に帰ってくることでしたから》


 《分かった。ならこれ以上のことは言うまい》


 これ以上僕が言うことはないだろう。


 サンダーフェニックスは明るい表情になり、お礼を言ってくる。


 《ありがとうございます。……ええと》


 と思ったら、困ったように目を泳がせ、両人差し指を突き合うように両翼の端を突いてもじもじし出す。


 《?どうした?トイレか?》


 と言うと


 《違います~。トイレじゃないです~》


 なんだトイレじゃないのか。じゃあなんだ?


 《貴方の名前を聞いてなかったなぁと思いまして~》


 そういえばそうだ。それに僕もこの魔獣達の名前を知らないや。


 《そういえばそうだったな。僕はまだ名前がないんだ。一応トレントだから、トレントさんと呼ばれてはいるが。だから、とりあえず、トレントとでも呼んでくれたらいいぞ》


 と伝えておく。


 《えっ!?トレント!?ホントのホントに!?》


 と驚いて聞いてくる。


 《ああ。トレントで間違いないよ》


 サンダーフェニックスとサンダーバード達の目に涙が溜まっていく。


 《トレント様~!!お会いしとうございました~!》


 と言って、みんなが飛び着いてくる。



 なんだ?どうしたどうした?


 なんだってみんなして泣いてるんだ?



これまで読んで下さり、ありがとうございます。

少しでも面白い、暇つぶしになったと思って下さっていれば幸いです。


次の投稿は明後日を予定してます。

今後とも宜しくお願い致します。

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