新たな来訪者。…やっぱりこうなるか
一部修正してます。
カルラから魔法のことをもっと教えてもらおうと思っていたら、森に何かが侵入してきた。
北東の森に複数の気配を感じる。
「トレントさんどうしたの?」
急に黙り込んでしまったからとカルラが聞いてきた。
《どうやら客のようだ。北東の森に何が入ってきた》
「えっ?そんなこと分かるの?」
《うん。ただ何が来たかまでは分からないけど》
カルラが本当?と疑うような目で見てくる。
僕ってそんなに信用されてないのだろうか?
ま。いいや。
《ここからじゃ見えないなぁ。よし、ちょっと見てくるよ》
と言い残し、
「え?あ!ちょっ―」
ん?カルラなんか言った?なんだろ?ま、いっか。後でなんだったのか聞けばいいし。
ということで意識を飛ばした僕は北東の森にある杉と感覚共有で視覚をリンクさせる。
視覚を杉とリンクさせた僕は、森の侵入者を見る。
その侵入者は北東の森に創っていたモンキーポットの上にいた。
それは金色の羽毛に覆われた巨大なワシのような鳥の魔獣だった。全部で十羽いる。
大きさはニメートルくらいだろうか。
しかしその内の1羽だけが他の巨大鳥魔獣と比べて一際大きい。三メートルくらいありそうだ。
それにしてもこんなに大きい鳥を見るのは初めてだ。羽毛は金色に輝いて綺麗だし。
とそんなこと思っていると一番大きな鳥魔獣がピュルルルル~と鳴くと他の鳥魔獣も一斉に飛び上がり、森の中心に向けて飛び立っていった。結構速い速度だ。
森の中心。つまりは僕のいる所だ。
前に狼魔獣に襲われたことがあるからなぁ。
……なんだか嫌な予感がする。
急いで杉とのリンクを絶ち、トレントに帰ってくる。
《ふう。ただいま》
「あ、トレントさん!急にどうしたのよ。いくら声かけても反応しないし。まったく反応ないから心配したわよ」
と心配そうに言ってくれた。
《あぁ、ごめん。北東の森にある杉と視覚をリンクさせてたんだ。侵入者を見てきたよ》
と言うと、「は?」みたいな顔をされた。
「なによそれ。そんなこともできるなんて、トレントさんってつくづく常識外れな存在よね」
と呆れられた。
常識外れって失礼な。僕はちゃんとした常識人だよ。と思いながらも口にはしなかった。
それよりも―
「それでその侵入者は何だったの?」
そう。そのことを伝えようと思ってたんだ。
《金色に輝く巨大な鳥魔獣が十羽いたよ》
と言うと、カルラの表情が曇っていく。
「それってサンダーバードじゃないかしら?」
サンダーバード。雷の鳥。かっこいいじゃないか。
《そいつはどんな魔獣なんだ?》
私も聞いたことしかないのだけど、と前置きして
「サンダーバードには伝説があるの。①羽ばたくことで嵐を巻き起こす。②天候を自在に操る。③羽毛の色を変えることで身体能力を変えることができる、と言われているわ」
とのことだった。
《伝説の鳥魔獣。かなりやばそうな魔獣だな》
まさか、ここ襲われたりしないよな?
「で、そのサンダーバードはどうしたの?」
《ん?サンダーバードなら》
あそこ、とサンダーバードが飛んでくる方角に枝を指す。
「あぁ、あれがサンダーバードなのね。初めて見るわ」
一番大きなサンダーバードを先頭にV字フォーメーションで飛んでくるのを見たカルラはのんびりした様子だ。
「それにしても本当に大きいわね。ここから見ても分かるわ」
うん。翼を広げたらかなり大きい。七~八メートル位あるんじゃないだろうか。
それにしてもあれだけの巨体で空を飛ぶなんて、それにかなりの速度で飛ぶなんて凄いじゃないか。
「って!のんびり見てる場合じゃないわ!もうすぐそこまで来てるじゃない」
サンダーバードがすぐ近くまで来ていることをようやく認識できたカルラは慌ててぐるぐると飛び回る。
《落ち着けカルラ。あの鳥魔獣がこっちに飛んでくること伝えようとしてたんだよ》
「だったら早く言ってよ!」と怒ってくる。
《すまん。とりあえずカルラは家に隠れてて》
そう言ってカルラは家に飛び込む。しかし入り口から顔を覗かせていた。
サンダーバード近くまで来たことで、そこでサンダーバードだけではなく、他にもいることに気がついた。
なんとサンダーバードの足に白い大きな芋虫が捕らえられていた。
あれはサンダーバードの餌だろうか?
観察しながらそう思っていると、サンダーバード達は僕に向かってきながら体に電気を纏う。
……これ、やばい?ひょっとして僕襲われる?
なんかデジャブ。以前狼に襲われた時もこんな感じだったような。
はぁ。素通りしてくれそうにない。
感傷に浸っているとサンダーバードが急降下し、僕に向かってV字フォーメーションで突っ込んでくる。
僕は全身にオドを纏い、更に『ソフトニング』で枝を柔らかく、『ハードニング』で葉を硬化させていく。
オドを纏い『ソフトニング』をかけた枝はしなり具合がよくなる。
そして枝を思い切り振りぬき、葉を飛ばしていく。
《行け!葉っぱカッター!なんちって》
無数の葉がサンダーバードに飛んでいく。
先頭のサンダーバードが急激に高度を下げて僕の攻撃を避ける。
他のサンダーバードに直撃し、飛行速度が落ちる。
今度は体全体を『ハードニング』で硬化させる。
速度の落ちたサンダーバード達に硬化させた枝を勢いよく振り下ろし、サンダーバードを地面に叩き落としていく。
サンダーバードが地面に叩きつけられ、動かなくなったのを確認した。
よし、後は一番大きなサンダーバードだけだ。
どこに行った?と辺りを見渡すが見つからない。
上空に飛び上がったのか?と見上げてみるが見つからない。
どこに行ったんだ?もしかして逃げた?
逃げたなら逃げたで全然いいんだが。
ピュルルゥ~
と、どこからかサンダーバードの鳴き声が聞こえる。
聞こえた鳴き声は小さかった。やっぱり逃げたということかな。良かった、と一安心したところで、視界の端にキラリと輝くものが見えた。
あれは?と目を向けると、一番大きなサンダーバードはそこにいた。
どうやらドラゴンツリーに突っ込み、頭が嵌って抜け出せず動けない状態のようだ。
……なんと間抜けな姿か。……本当にあれが伝説の生き物なのか?
あの。僕はどう反応したらいい?……とりあえず放置しとくか。




