表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/26

プロローグ

拙い小説ですが、読んで頂けると幸いです。


一部修正してます。

「生まれ変われるなら木になりたい」


 そう思って目を閉じたら、異世界でトレントに転生していた。




 みんなは『生まれ変われたら○○になりたい』と、思ったことはないだろうか?


 そう思ったとしても実際に生まれ変われることなんてできない。


 できたとしても、生まれ変わったような自分になれるくらいだろう。


 自分は別の誰かに、別の何かに変わることはできないものだ。


 そんな事は分かってる。しかし、僕は常々思ってる。


 生まれ変わりたい、と。



 僕、神桜大樹かみざくらだいきは今日で28歳になる。


 両親はいない。


 父親は僕が生まれる前に事故で亡くなり


 母親は生活のため、無理をして働き、体を壊して、僕が物心ついた頃に死んでしまった。


 その後、僕は親戚に引き取られたが、いつも邪魔者扱いされてた。


 そこに僕の居場所はなかった。


 小学校、中学校では、親のいない僕は腫物扱いされたし、そのことをネタによく揶揄われてた。


 新しい服はなく、ほとんどが誰かのお下がりの物だった。


 鞄は小学校の時から使ってる物だから、ボロボロ。


 そのことも揶揄われる理由の一つだった。


 だから家と学校は居心地が悪く、高校入学したら、一人暮らしをしてバイトをすると決めていた。



 地元から少し離れた高校に入学して、バイトを始めた。


 高校時代は学費と生活費を稼ぐ為にバイトして、成績が落ちないよう勉強して。


 時間に余裕がなかったから、青春なんてできなかった。




 高校を卒業し、すぐにできる仕事を探し、とある観光地の旅館に就職が決まった。


「仕事を早く覚えないといけないぞ」と言われ、就職してから何ヶ月も休みなく働かされた。


 ようやく休みをもらえたと思った日も、上司からの電話で。忙しいから出勤しろ」と言われ、拒否できないまま仕事になる。


 そんな日々が何年も続く。何度も辞職したいと思った。


 しかし、高卒の僕が働けるところは少ない。


 新しい職場が見つかったとしても、今の職場より、職場環境がいいという保証はないし、今以上の給料が貰えるという保証もない。


 とはいえ入社してから給料は変わらず安いまま。それに、ここより酷い最悪な職場だったら……


 そういった思考があるから、僕は勇気を出せず新しい一歩を踏み出すことができない。


 こんな僕でも好きなことの一つくらいあるんだ。


 僕が住んでる場所の近くに樹齢千年以上だと言われてる大きな大きな桜の木が一本ある。


 仕事帰りによく立ち寄り、その巨大な桜の木に背を預け、腰を下ろす。


 それから空を見上げてる時間や、目を閉じ風に揺らされる枝葉の音に耳を傾ける時間がとても好きだ。


 今も仕事終わりに立ち寄り、いつものように桜の木に背を預け腰を下ろし、夜空を見上げている。


 空は冬の雲に覆われている。天気予報では雪が降る恐れあり、って言ってたっけ。


 一月半ばだから、桜の木に葉は一枚も付いてない。


 普段は昼間に来たら空を見て、夜に来たら星を見る。


 春は桜の花で癒され、夏は生い茂る葉の木陰で涼み、秋は紅葉を楽しみ、冬は雪に覆われれてる姿を見て、雪に負けずしっかり立っている姿を見て、自分もこうありたいと願う。


 そんな巨大な桜の木を見ていつも思う。


 木というのはただそこにいるだけでもの凄く役立っている。


 地にしっかりと根を張り、地盤の強度を上げてる。


 二酸化炭素を酸素に返還し、空気を清浄化してる。


 飛びつかれた鳥の羽を休ませ、鳥や他の小動物が巣を作ればそれを守る。


 木陰で涼しい場所を作り、人を休ませる場所を作る。


 花が咲くとそれを見た人を魅了する。


 その花から蜂が蜜を吸い、美味しい蜂蜜を作る。


 葉が落ちると時間を立て腐葉土となり、大地の栄養分を作り出す。


 伐採されたとしても、木材としてあらゆることに使用されている。


 ただそこにいるだけで多くの人に役に立っている。


 僕は何のために仕事してるのか、何のために生きてるのか。


 ちゃんと誰かの役に立てていたのか分からない。


 今まで自分のしたいことをする時間なんてほとんどなかった。


 僕にもっと自由な時間があれば。


 自分のしたいことを自由にできるようになればいいのにな。


 この桜のように、ただそこにいるだけで許される存在になれたら。


 誰かの心を楽しませ、休ませ、癒せる存在になれたら。


 常々そう思う。


 だからもし……もしも……生まれ変われるのなら、


『僕は木になりたい』この桜の木のような立派な木に。


 誰もが休めて、羽を伸ばす場所を作り出せる木に、見た人が癒される花を咲かせる木に。


 生まれ変われたなら今の地獄のような日々を味合わずに済む。


 そう思いながら雪がちらついている中、少し目を閉じた。







 ……少し目を閉じただけ……のはずなのに。目を開けると見渡す限り緑も水もない広い荒野にいた。


 突然のことで混乱している僕は立ち尽くしていた。


 上に目を向けると立派な枝葉が茂っていて、その向こうの空に大きな太陽とその左隣に太陽より二回り小さい月のような星が見える。


 下に目を向けると、巨大な木の幹が見える。あと地面までが遠い。十メートルくらいあるんじゃないだろうか。


 とりあえず体を動かそうとしたが動けない。足が見えなかったうえに足の感覚がない。


 腕も動かせないようだ。


 視界だけは自由に動かせるようで。365度回りを見ることができた。


 今、視界が365度回ったたんだけど!?


 えっ!?ちょっと待って!僕の体どうなってるんだ!?


 そういえばさっき下見た時、僕の体が見えなかった。巨大な木の幹しか見えなかった。


 もしかして僕の体が木になっているのか?


 足が動かないのは、根っこを張ってるから動けないのか?


 ふぅ……。いったん落ち着こう。

 ……これは………夢。そう。きっと僕は夢を見てるんだ。


 でも、もしも夢でないなら?僕は生まれ変わったということになるんだろうか。


 それに空がおかしいことから、ここは地球ではないのだろうと思う。


 ということは?


 ここは異世界なのだろうか?


 実は僕、異世界物が結構好きだった。


 もしもここが本当に異世界だとしたら、ステータスとかいうものはあるのだろうか?


 大抵の異世界物だと、ステータスと唱えるか、何か特殊な装置で自分のステータスを見ているよな。


 もしステータスが見れるとしたら、念じてみれば分かるかな?


 とりあえずダメもとで試してみる。



【ステータス!】


 すると目の前にウインドウ画面のようなものが出現した。


 そこには


 種族:トレント(魔樹)


 とあった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ