表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

コクゴノジュギョウ

作者: 栗野庫舞

タイトルは、国語の授業をカタカナにしただけです。

 自室のベッドを椅子代わりにして、あなたは見ていた。


 あなたの前には、女子高生の制服を着た人物がいる。紺色のブレザーをきっちりと着ており、スカートの丈は長い。長い黒髪を左右で三つ編みにし、眼鏡をかけていた。


 一方、女子高生のあなたのほうは、白と緑のセーラー服姿だ。


「では、これから国語の授業を始めましょうか」


 あなたの前で立っている彼女は、しっかりと通る声で言った。


「今回は、校則問題を取り扱います。校則の中でも人権侵害の疑いが強い、いわゆるブラック校則の問題ですね」


 あなたは彼女の話に耳を傾ける。


「まずは、問題になっているブラック校則の例を()げてみましょう。髪を染めたりお化粧をすることを禁止したり、特定の髪型だけを指定したり、男女交際、帰宅時に特定の場所への立ち寄りを禁じたり等々(とうとう)、内容は多岐(たき)に渡ります。また、学生に()されるそれらの違反は、校則が適用されない側に立つ教職員が定期的にチェックをおこない、違反があれば厳しく指導をします」


 彼女は黒い三つ編みの片方を持ち上げて強調しながら、あなたに説明していた。


「学校によっては、スカートの下にジャージやオーバーパンツを着用することを禁止することもあります」


 彼女はスカートを両手でたくし上げる。中には紺色のハーフパンツを穿()いていたのを、わざわざあなたに見せつける。


「さらには、下着の色は白だけに限定する、といったものまで存在します」


 そう言うと、彼女はハーフパンツをあなたの前で(なま)めかしく脱いだ。綺麗に折り畳んで、ベッドの上に置く。


「こちらの下着をご覧下さいませ」


 彼女は再びスカートをたくし上げて、今度は下着を見せつけてきた。先ほどよりも高い位置までスカートを上げており、顔は恥ずかしそうだった。


「……下着の全体的な色は白で、小さな装飾のリボンも白でございます。ですが、こちらの部分は、薄い緑色になっていますよね?」


 白いフリルで縁取られた、左右の縦状の薄緑色部分。


 左手でスカートの持ち上げを維持したまま、彼女は該当部分を右手の人差し指でそっとなぞった。


 次に彼女はスカートを下ろしてくるりと回り、あなたに背を向ける。スカート後部の端っこを両手で持ち、下着のお尻側を丸見えにした。


「また、後ろ側全体は、正面の装飾部分と同様、このような薄い緑色になっています。前だけでしたら、白い下着と呼んでも嘘にはならないと思いますが、後ろから見たら、薄緑色の下着なのは明白です。白い下着以外を禁じる学校でしたら、校則違反になるでしょう」


 あなたのほうに振り向きながら述べた後、彼女はスカートを戻す。


 彼女はあなたの正面へと向きを直すと、ブレザーを脱いだ。首元の赤いリボンを外す。それらもベッドの上に置いた。


 目の前の彼女は、今や白いブラウス姿だ。ベッドに座るあなたに再び背を向けて、床で正座した。


「あなたはじっくりと目を()らしてご覧下さい。白いブラジャーが()けて見えるでしょう? 下の薄緑色ショーツと上下(そろ)いのブラジャーは、なぜか後ろ側が白一色なのです。ですが、前から見たら、こうなります」


 彼女は座ったまま、紺色の靴下を履いた両足を動かして、あなたのほうへと向きを戻す。ブラウスのボタンを一番上から外し、正面を左右に開く。


 ブラジャーが大胆に(さら)された。胸部はそこそこ大きい。


「ブラのストラップとバックベルト、それにリボン、フリルは白ですが、カップ部分が薄い緑色なのです。前から見た場合ば、薄い緑色の割合が高く、こちらも白い下着とは言い難いですよね」


 頬を染めながら言い終えた彼女は、ブラウスを着直した。


「私の下着は、はたして白い下着だったでしょうか? その結論に関しては、個々の教員の判断になります。――ですが、良かったですね! あなたの通う高校には、白い下着のみに限る、なんて校則はありません。そもそも、ブラック校則も存在いたしません。あなたは校則に縛られず、のびのびと青春あふれる高校生活を送れることを、神様に感謝するべきでしょう」


 彼女はベッドに置いていたハーフパンツを手に取って、あなたの前で再び(なま)めかしく穿()いた。


「以上で、本日の私の特別授業は終了とさせて頂きます。いかがだったでしょうか? 何か質問はございますか?」


 丁重な彼女の問いかけに対し、あなたは口を開いた。


「……なんでお姉ちゃん、制服着てるのかな?」


 あなたは八歳も離れた成人女性の姉に問う。


 彼女の見た目は、あなたとの年の差はさほど離れていないように見える。


「私が制服を着ているのは、校則で禁止されていないからですよ?」


 三つ編みで制服といった姿では、下手をすると同級生に間違われるかもしれない。


「ここは学校じゃないし、お姉ちゃんは先生なんだから校則には縛られないでしょ?」


「はい、高校教師の私は取り締まる側です。校則には拘束されませんので、あなたを高速で拘束します!」


 姉は素早くあなたの左側に座り、あなたの両手を持った。


「ご質問にお答えいたしましょう。私が制服を着ているのは、私のことを国語の教師をしている姉ではなく、別の高校の女子生徒で親愛なるあなたの百合の相手だと思ってほしいからです」


「……いつも心配してるんだけど、本当に先生のお仕事、きちんとやれてるの?」


 姉の職場は、あなたの通う高校とは別だった。


「ご心配をして下さって、ありがとうございます。あなたに私の教師姿を監視して頂けるのでしたら、お金を払ってでも喜んでご依頼しますよ! 明日の月曜日、私の高校に潜入してもらって、一日中、教師を立派にやっている私の姿をご覧になられますか?」


 姉はあなたの両手を挟み込んだまま、眼鏡越しの瞳を輝かせる。


「潜入したら、それこそ校則違反じゃない?」


「おっしゃる通りです。校則違反をすればあなたは退学になり、潜入を勧めた私も退職になり、仲良く一緒でいられる時間が増えますね! お互い無職になったことを(なぐさ)め合いましょう!」

「それはイヤだ!」


「……私のこと、嫌いですか?」

「ここでその質問はズルい!」


 姉の近い顔がかわいい。


「私はあなたのことを、愛しています。ですから……本日は、こちらをご用意いたしました」


 姉はあなたを解放し、細長いもの……耳かき棒を出した。


「唐突だね」


「はい」


 姉はベッドから立ち上がって、ティッシュペーパーも用意した。床で正座をする。


「さあ、私の膝の上で寝て下さいませ」


「うん……」


 ベッドから離れたあなたは横になりながら、姉の膝の上に頭を乗せた。


「きゃああああああああっ! 私の上にっ、かわいいお顔が寝ましたあああああぁ!」


「はやくしろ」


「分かりましたぁご主人様ぁ!」


「私は妹であってご主人様じゃない。あと、いちいち叫ばないで」


「はい、分かりました。それでは、始めさせて頂きますね」


 こうして耳かきが始まったのは良かったのだが……。


「んあっ、あんっ、うぁんっ、いやんっ」


「小声で変な声出さないでよ、お姉ちゃん」


「叫んではいませんし、校則では禁止されていません」


「また校則なんだね」


「はい。……では、しかたなく、あなたのお姉ちゃんは静かにやりますよ」


「それでお願い。あと、姉じゃなくて百合の相手がどーのこーのって設定は終わったの?」


「静かにして下さい」


 あなたは一瞬イラッとした。


 それ以降は、静かな中で、あなたは耳掃除をやってもらう。耳かきが耳の中で泳ぐように動いていて、とても気持ちがよい。


「……こちらは終了です。反対側を向いて下さい」


「うん」


 あなたは寝返りをし、反対側もやってもらった。


 それなりに硬さのある棒で、中を的確にかいてもらう心地良さ。この上ない時間を、あなたは過ごすことが出来た。


「こちらも終了です。まだかゆい部分はありませんか?」


「ううん、だいじょうぶ。ありがとうお姉ちゃん」


 体を起こしながらあなたはお礼を言う。


「こちらこそ、ありがとうございます」


「なんでお姉ちゃんが私に感謝するのよ?」


 あなたは疑問を口にした。


「……すみません。とても素敵なものを見させて頂いたからです」


 姉は恥じらいの表情だった。


「実は……あなたのセーラー服の襟から、あなたの白い下着がチラリと見えていました」

「何そんなとこ見てんの!」

「それが耳掃除をやってあげた一番の目的でした」

「えーっ!」


「ご安心下さい。そのような清らかな白い下着なら、黒い校則も通じないでしょう」


 最後には清らかな笑顔になっていた姉。


 妹に対しても言葉遣いがいつも丁寧で、妹に対する愛情が常に異常な姉。


 あなたは、自分が校長だったら絶対にこの変態教師をクビにすると言おうとしたが、また一緒にいられる時間が増えると歓迎される気がしたので、やめた。


 姉が高校ではまともな国語の先生でいることを、あなたはただ願う。


「お次は、国語の教師による、算数の授業をお受けしますか? 1たす99は、百ということで、百合でございます」


 あなたはまた眼鏡の国語教師に拘束された。


                    (終わり)

実はこのヒロイン、姉だった、というお話でした。


最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ