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異界結晶の不適性者~適性がなかった俺は『それ』を取り込む~  作者: 蒼井ゆう
一章:二話、亡国の魔女(ルイン・ウィッチ)
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夢空間

しかしそんなリリスの恐怖を更に煽るようにもくもくと立ち上がる黒煙から黒い影が一息で間合いを詰めてきた。


      ****


 頭上で爆風が起き耳鳴りがした直後、悠里は再び全てが真っ白な世界に来ていた。

 今朝の夢は夢では無かったらしい。


「ふむ。危なかったな。ユウリ」


 そう悠里に声を掛けてきた声は夢の中と同じ声だった。しかし今声を掛けてきた人物は夢の中で会ったモヤでは無かった。

 目の前には青と白が混じった水色に近い髪色、人間離れしたレモンのような黄色い瞳。すっと通った鼻筋と驚くほど白い肌。腰まで流れた長い髪はツインテールになっている。


そしてそんなツインテールを留めているのはゴムや髪留め、リボンなどではなく花型の魔法陣だった。

 魔法陣は髪だけではなく四肢にもアクセサリーのように付いている。まるで先程まで封印されていたかのようだ。


 そして彼女が人でないと分かる大きな理由は彼女が宙に浮いているからだ。


「君は?」

「今朝夢で会っただろ。ユウリ。私の名前を呼んでみろ」


それだけ言って少女はそれ以上口を開かない。どうやら名前を呼ばないと話は進まないようだ。


「えーと……ノア?」

「そうだ。ノアだ」


ノアは満足気に微笑むと宙をくるくると舞った。


「それでどうして俺をここに?」

「今朝、ノアは言ったはずだぞ。何かあったら私を信じて呼び出せって……なのにどーして私を呼ばないんだ! ノアはずっとお前が呼び出すのを臨戦体勢で待っていたと言うのに!」


 と、ノアは表情を一変させ不機嫌そうに頬を膨らませる。その姿はとても可愛らしいがそれどころではない。


「いや……夢かなって思ってさ。まさか本当だとは思わなかったよ。こんな真っ白な世界だから夢だと思うでしょ?」

「そうだな。ここはあまりにも白い。白すぎる。だけど今朝も言ったがここはお前の精神世界何だぞ」


「つまり、俺の心は空っぽって事?」

「まぁそうでもあるし違うとも言えるな。まぁいい。本題だ。本題」


ノアは悠里の方に近づくと上から見下ろすように指を指した。


「ほら。早く私を信じて呼び出せ。今のまま現実に戻ったらあの女の爆風に巻き込まれてバリアシールドどころか全身丸焦げになるぞ」


 そんな目の前にいる人物を信じて呼び出せなんて言われても困る。呼ぶ必要すら無く目の前にいるのに……。


 と、悠里は内心文句を言いながら、ノアの事を肯定的に捉えてみることにした。

確かにノアがいなければ悠里はすでに丸焦げだ。そう言う意味では助けてくれたのだろう。怪しい存在だが、それだけは信じても良いのかも知れない。


 直後、悠里は何かと繋がったのをはっきりと感じた。


「ノア」


悠里はノアに手をのばす。そしてノアが悠里の手を掴んだ瞬間、情報が爆発した。

悠里の知らない知識、知らない戦闘技術、未知の情報が幾重にも重なり入り込んでくる。

その中には今現在悠里の戦闘状況を説明する細かい情報も含まれていた。


様々な情報の中で唯一理解できたのはノアと言う存在はずっと悠里と共にいた異界結晶と言うことだった。


「ユウリ。現実に戻るぞ」


一瞬白いモヤが視界に覆い被さった直後、悠里は状況を素早く理解し、先程手に入れた知識を躊躇なく使用した。


      ****


「なっ!」


 目の前の少年が信じられない速度でリリスの懐に入り込む。少なくとも先程までとは別次元の速さだ。

──一瞬悠里の頭上に女の子が浮いていた気がするがそんな事に構っていられない。


「こ、この!」


反射的に迎え撃とうとしたリリスに悠里の鋭い声が響く。


「そこ、伏せて!」


リリスがその言葉を理解するより早く悠里がリリスを押し倒す。

息が掛かるほどの距離に迫った悠里の顔にドクンと心臓が跳ねる。

その瞳に映る光があまりにも真剣だったからだ。


「お、お前。一体何を……」


 リリスが講義の声を上げるよりも先にリリスの真上を通過した何かを見て、リリスは目を見開いた。

次の瞬間には悠里は立ち上がっていて、先程リリスを襲った生物に剣を向けていた。


「リリス。離れて」


 あまりにも真剣な悠里の瞳が映していたのは異界の生物であり、一度はこの世界を滅ぼした人類の天敵ヴィアヌスだった。

 リリスを襲った今回の個体は二メートル程度の大型の狼のような姿をしているが、全身は驚くくらいの漆黒で見ているだけで吸い込まれそうになる。


そんな魔物を見て困惑したのはリリスだけではない。この戦闘を見ていたギャラリーも焦り戸惑い我先にと逃げ始めた。


「ど、どうして魔物がここに!」

「いやぁぁぁぁぁ!」


そこは瞬く間に阿鼻叫喚の地獄と化した。自分の事しか考えない学生は生徒を押し飛ばし、踏みつけ逃げていく。


残った生徒は戦う意志のある生徒だけった。

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