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異界結晶の不適性者~適性がなかった俺は『それ』を取り込む~  作者: 蒼井ゆう
一章:二話、亡国の魔女(ルイン・ウィッチ)
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剣閃

 《魔戦祭トーナメント》とは異界からの魔物ヴィアヌスに対抗できる様に年に一度、『ソロ』『デュオ』『パーティー』の三種類がローテーションしながら開催される訓練祭だったのだが、最近はエンターテイメントとしての側面のほうが強くなってきている。


 異界との裂け目によって大きく近く変動を引き起こした日本と言う国は現存国家の補助ありきで今日も統治をしている訳だが学園都市はそんな日本の元東京から数百キロメートル離れた水上に造られている。

 《魔戦祭(トーナメント)》はそんな学園都市の中にある五つの学園それぞれの学生たちが武器を手に覇を競う過激なものだ。


 と言っても実際に命のやり取りをするわけではない。


 敗北条件は複数あるが一番簡単な勝利方法は常に身につけている長さ五センチ、厚さ一ミリ程度の携帯端末、正式名称をRIONPDAと呼ぶが、これから発されるバリアシールドを破壊し、『携帯端末を破壊すること』で勝ちとなる。


 しかし大半の生徒はバリアシールドが破壊された時点で痛みを嫌いリタイアする。


 もちろん携帯端末は攻撃が届く場所ならどこにでも隠して問題はない為、時折とんでもない場所に携帯端末を隠す者もいる。意図的な残虐行為は禁止されているが、戦闘力を削ぐ為であれば肉体攻撃も認められているし、肉体攻撃が認められている以上当然怪我人も出る。


 そして戦闘が起こる機会は《魔戦祭》だけではない。

 学内の序列も含め学園都市ではルールに則った私闘が許可されている。

 それが決闘デュエルシステムだ。


 戦闘ルールは《魔戦祭》と全く同じで、携帯端末の破壊によって勝敗が決まる。携帯端末は硬質加工されていて素手で折ろうとしても簡単には折る事ができないレベルの強度だ。


 そして同じ学園に所属する学園の生徒同士の決闘ではその勝敗によって序列が変動するので、単なる私闘以上の意味がある。

 

 リリスも数え切れない程の決闘を勝ち抜き深淵の十人(アビス・サベル)と言う立場を獲得した。そんなリリスには戦闘経験や長年培ってきた感がある。しかし目の前の少年──天久悠里にはその全てが通じなかった。


 悠里の全く読めない実力にリリスは思わず口角を上げる。


「穿て、業火の(モラルタ)!」


 リリスは細剣を持つ手とは逆の手を空に伸ばす。すると悠里の立つ位置まで伝わる熱波が発され気が付くとリリスの手には長く真っ赤な槍が顕現していた。


 そしてロケットのような勢いで槍は悠里を目掛けて飛んでくる。


「くっ!」


 悠里は剣を縦にして槍の軌道をずらしたが熱波だけで悠里のバリアシールドが削れていき、そのまま衝撃で大きく吹き飛ばされた。


 辛うじて受け身をとったものの随分と息が上がっているようだ。

 そして悠里の背後には槍が突き刺さった跡ができているが、槍を中心に五メートルほど草の根も無くなるほど抉れていた。


「うおっ。びっくりした。あの元お姫様はギャラリーの事なんてどうでも良いのかねぇ」

「さぁ? それにしてもあの男意外とやるな」

「確かに。大抵のやつなら最初の一撃で火だるまだしな。ギリギリ避けたって感じは否めないけどな」


「腕はそこそこってところかな。良くも悪くもない」

「元お姫様、手加減してんじゃねーの?」

「バカ言え。あのクレータ見てみろよ。結構本気だぞ」


 悠里の背後から先程の攻撃に驚いたギャラリーの声が聞こえてくる。

 そんなギャラリーの声にリリスは眉をわずかにひそめた。


「燃やし尽くせ、火炎の爆焔虎(エクスプロージョン)!」


 リリスの隣に全てを燃やし尽くす灼熱の虎が顕現する。


「撃ち抜け、焔の(プロメテウス)


 リリスが細剣を振ると宙に火の玉が浮き、悠里に目掛けて飛んで来る。


「お前も行け」


リリスが灼熱の虎に対して命令すると火球と平行して虎が走り悠里を目指して飛んできた。

今度は逃さないという強い意志がリリスの目を見れば伝わってくる。


そして虎が一直線に悠里を目掛けて飛んでくるのをみてギャラリーがざわめく。


「やばいぞ! 大技だ。逃げろ逃げろ!」

「冗談じゃないぞ!」

「こんな所でぶっ放すか? 普通」


巻き込まれて火傷しても自己責任だ。ギャラリーは我先にと慌てて距離を取る。

しかしそんな野次馬に目もくれず、リリスの攻撃を回避した悠里の真上を通り過ぎる火球と虎を睨みつけるように見つめる。


「爆ぜろ!」

「──!」


 火の虎はその命に従い熱波を放ちながら爆発する。さらにそれに誘発された火球もまとめて爆発し、灼熱の焔が悠里を飲み込む。


 回避したと油断させて、あとから爆発させれば、攻撃を完全に回避するのは不可能だ。至近距離であの攻撃を受ければ流石にしばらくは動けないだろう。


 そうでなくてもバリアシールドの全損は確定だ。あのなよっとした少年ならバリアシールドが破壊されれば自らリタイアを申し出るだろう。


 吹き荒れる焔で視界は真っ赤に染まる。嵐のような横風から顔を守りつつ、リリスは自らの勝利を確信した。


 ──しかし。


「“天獄(てんごく)“!」


 聞き慣れない単語と共に剣閃らしきものが煌めき、焔の爆風が跡形も無く消滅した。


「なっ……」


リリスが絶句する中ギャラリーは大賑わいしている。


「おいおい。まじかよ。あの生徒無調整品の神装武装で星応技術(ステラスキル)を使いやがったぞ」

「いや、無調整の神装武装でそんな事をやってのけるならそいつは人間じゃない。化け物だ。別のからくりがあるんだろ」


 リリスはギャラリーの言葉を聞きながら戦慄していた。全身から血の気が引いていき鳥肌が止まらない。恐怖で体も硬直し始めた。


 ギャラリーの言う星応技術(ステラスキル)の発動に必要なモノはトロンコアとの同調率が90%を超える事、そしてそのトロンコアに慣れる為のそれ相応な修練と、綿密な調整が必要となる。


 それを難なくやってのけたのなら彼は人間ではない。──化け物だ。


しかしそんなリリスの恐怖を更に煽るようにもくもくと立ち上がる黒煙から黒い影が一息で間合いを詰めてきた。


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