開戦準備
「おい! 今からこいつと決闘をするんだ。誰か神装武装を貸してくれないか⁉」
そう、リリスが叫んだ直後、騒ぎを聞きつけてきた生徒が集まり始めた。
「なになに? 何事?」
「《亡国の魔女》が決闘するらしいぜ?」
「え? マジで? 深淵の十人じゃん。これは見逃せないな」
「だけどそいつのお相手さんは誰よ?」
「知らない。見たこともない顔だな。検索してみて」
「今やってる……。禁書序列には入ってない見たいだな」
「序列外かよ。これはすぐ終わるな。お前どれくらい持つと思う?」
「五分持てば良い方じゃないか?」
「そうだな。俺は一分で負けるに掛けるわ」
「まじか。おっ。ネットでオッズが出てるぞ。……ふむ。二分で三倍だな」
「もう開いてるブックメーカーがあるのか。随分と耳が早いな」
「そりゃあ男子寮の前だしな。ほら八雲も目を輝かせてるし、報道系のライブ実況が入ればこんなもんだろ」
人が人を呼び気が付くと悠里の周囲は人集りになっていた。
そんな外野の声をききながら悠里は困ったように眉をひそめた。
軍に所属していた悠里はずっと隠密な任務を受けていたので衆目を集めるのは苦手なのだ。
「決闘ってこんなに注目されるものなの?」
「そうだな。これが序列外同士の戦いならそこまで話は大きくならないが私が《深淵の十人》だからな。情報収集に躍起な奴らがすぐに食いつく」
……なるほど。
「ふむ。それにしても野次馬ばかり増えて誰も神装武装を貸す奴は居ないのか? 確かお前は剣を使っていただろう?」
「そうだね」
「誰か、武器を貸してくれないか? 剣がいい」
リリスが再びギャラリーに向かってそう問いかけると、今度はすぐに反応が帰ってきた。
「しかたねーな。ほらこれ使え」
そんな言葉と共に、ギャラリーから悠里にむかって神装武装の発動体が投げられた。
受け取ってみれば悠里が使っていた神装武装の発動体より細身で短かった。更に悠里が使っていたモノと比較するともう一つ大きく違う点が一つ。
先端には白色のトロンコアがはめ込まれている。戦闘用としては最低レベルのトロンコアだ。
「さて、それで戦えるな。早く起動しろ」
リリスはそう言って不敵に微笑む。
「はぁ……」
悠里は大きく息を吐くと、手にした神装武装を起動させた。
神装武装本体に記憶された元素パターンから「鍔」と「刀身」が何もない空間から出現する。さらにトロンコアに星応力を流し込むと「刀身」が淡く光り始め、先程までの数倍の強度に変化した。
そこでふと悠里は違和感を覚えた。
普段ならトロンコアを使用した瞬間に胸に穴が空いたような激痛が走るのだ。それを利用して決闘から逃げようとしたのだが、なぜかこういう時に限って胸に埋め込まれた異界結晶は反応をしない。
それを見たリリスも制服に付いたホルダーから発動体を取り出し、神装武装を起動させる。
もっともこちらは悠里のものと違って、補足しなやかなレイピアだ。
「さて、準備はいいか?」
細剣を優雅に古いながらリリスは悠里を見据える。
「……我、天久悠里は汝リリスの決闘を受諾する」
悠里は空間ウィンドウに手を伸ばし『OK』ボタンを押した。
受諾した直後、リリスと悠里の立っている丁度中間部分にカウントタイマーが出現し、カウントが零になった瞬間、始まりのゴングが鳴り響いた
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