表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

甲子園に出てみたいね。

是非、最後まで読んで頂いて評価等お願いいたします。

 部屋のテレビには、地方の高校野球が映し出された。光り輝く高校球児はまさに青春である。それを見ていた二人の男子高校生は、青春など知らなさそうだ。


「高校生で甲子園に出場したい」

 夢を語ったのはテルヨシだ。テレビに釘付けになった漢の目は輝いていた。

「いや我々の高校弱いしムリだろ」

 青春など興味なさそうなトシキはバッサリと切り捨てた。

 彼らの通う高校は、一回戦敗退が当然の実力だ。そんな夢が叶うはずもない事はわかっている。


「だから今から甲子園常連校に入るためにオーディションの練習しようよ」

「選考基準はオーディションとかじゃないから。この時点で入部不可能だよ」


 しかし、テルヨシはこんな否定に負けずオーディションを始めた。

「こんにちは。パワーポイントを作ってきたのでぜひご覧ください」

「パワポじゃなくてプレーを見せろ」


 間を置き、呼吸を整えて仕切り直す。練習でも少しばかり緊張感を持って挑んでいる。

 パワポ自体は用意されておらず、そこにあるという体で行われるようだ。


 そして、オーディションの幕が開けた。

 およそ15秒の沈黙。オーディションが始まっているのにも関わらず、お互い何も喋らない。静寂に包まれる部屋に、カラスの元気の良い声が届く。

「何この間は?」

「スライドのアニメーション終わるの待ってんだよ」

「アニメーション付けすぎだろ‼︎この時点で失敗してるわ!」


 どのタイミングで喋れば良いか図っているようだが、全く意味のないものだ。

 すでにタイミングを見失っていると言った方が正しいのだろうか。

「バットを遠くに飛ばすリキを見てください」

「バット飛ばすなよ。力をリキって読んでるやつを孫悟空以外で初めて見たよ」

 さっぱりなことを言ってもオーディションは続く、というより無理矢理続けている。


「ポジションはセンターから左か右です」

「いやどこだよ。もっと詳しく言えよ」

「クォーターバックって言ってんだろうが‼︎」

「言ってねえし、それアメフトだよ‼︎」


「マジメな話をするとセカンドしかやった事がありません」

 トシキは強く感心した。

 セカンドが出来れば大したものだ。おそらくオールマイティにこなせるだろう。

「なんだ野球やったことあんのかよ」

「いやモンハンの話」

「モンハンかよ!何がマジメな話なんだよ!」

 

「正確なパスと当たり負けしない体幹が持ち味です」

「やっぱアメフトじゃねえか!何しに来たんだよ」

「甲子園ボウルに出場しに来たんだよ!」

「甲子園ってアメフトの方かよ!」


 テルヨシが一旦、静止をかける。彼には何か引っかかるものがあるのだろう。

「お前がさっきから言ってるアメフトって何?」

「アメフト知らないで甲子園ボウル知ってるやつ初めて見たわ。アメリカンフットボールの略ね」


「アメリカンフットボール…?初めて聞いたわ」

 そう言われてもピンと来ていない様子だ。

「すごい有名だぞ。お前マジか」

「似てるア〆リ力ソヲッ卜木一ノレなら知ってるけど」

「あしめりちからそをっぼくきいちのれって何⁉︎そっちのほうがマイナーだろ‼︎」

「小学校の頃やったでしょ?クラスのレクリエーションとかで」

「普通やらねえよ!何をするんだよ!」

 

 素朴な疑問だ。この世にア〆リ力ソヲッ卜木一ノレのルールを知っている人間は、そう存在しないだろう。

「ア〆リ力ソヲッ卜木一ノレってどれだけ綺麗に言えるか競うんだよ」

「教室が地獄‼︎ ア〆リ力ソヲッ卜木一ノレが木霊するの気持ち悪いわ‼︎」


 テルヨシは手をパーにして言った。何かの数字を暗示している。

「ちなみに俺は15位だった」

「クソ微妙な成績だな!そんな成績で思い出すなよ!」


「そこまでいうなら高校野球で甲子園目指すわ」

「野球未経験のお前には難しいって」

「こう見えても半年くらいは野球やりたいと思ってたんだぜ」

「スタートダッシュ遅れてる!半年て!」

 本気でアメフトでの甲子園出場を目指していたのか。

 そんなことを思ったトシキである。

「タックルが得意なので乱闘いけます」

「結局アメフトかよ!まだオーディション続いてたの⁉︎」

 衝撃の事実が発覚した。ア〆リ力ソヲッ卜木一ノレのくだりは、オーディションでもやるようだ。


「入部した暁には四番でエースをやりたいです」

「うんムリだよ。早く帰れよお前」

 大きすぎる夢は、時に人を潰してしまう。自分を客観視することは大事だろう。

「そんなこと言うなよ。だったらプロ目指すわ」

「もっとムリだわ」

読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ