小説書いてみました。読んでください。
ギャグしか書いていません。
ぜひ読んでください。
テルヨシの右手には複数のA4用紙が存在していた。
「小説書いてみた。読んでくれ」
トシキはそう言われ、渡されたA4用紙に目をやる。縦書きで書かれたそれは罫線こそないが、原稿用紙の使い方に沿って書かれていた。
I am a cat
I am a cat.
I don't have a name.
トシキは中学生レベルの英語で書かれたそれに頭を抱えた。そして、一つの結論に辿り着く。
「これパクリだろ」
紛れもなく夏目漱石のパクリだ。おそらく英語についての知識が一㍉でもあれば、パクリだと気付くだろう。
「参考程度に真似てみたんだが似すぎてたか」
頭を掻きながら反省をするテルヨシ。
もう反省とかではないと思うトシキ。
そんなトシキは提案をした。
「オリジナルのやつ持ってこいよ」
そう言われるとテルヨシはクリアファイルを取り出す。
「実は色々持ってきてんだよ」
その中から複数のホチキス留めされたものを渡した。
Bottilyann
「ローマ字の打ち方気持ち悪!これも坊っちゃんのパクリじゃねえか」
「坊っちゃんじゃなくてbottilyannな」
「これそのまま読むの⁉︎」
淡々とテルヨシはあらすじの説明を始めた。
「主人公bottilyannがキヨこと清原◯博と一緒に山荒らしを撃退するストーリーだ」
「色々ツッコミたいけど実在の人物出すのはダメだろ」
トシキは冷静に考えてみる。というか冷静でなくてもダメだと考えた。
「それについては問題ない。“キヨこと清原◯博”が名前だからな」
「普通に大問題だよ」
トシキは次の作品を迎え撃つために身構えた。何が来てもおかしくない。そんな覚悟を決め、パラリとめくった。
生前に助けたクモが恩返ししてくれたようです〜キレたら糸も切れました〜
「これもパクリ‼︎世界最速のネタバレだよ!」
「今の流行りに乗っかったけどダメか」
「全然乗っかれてねえよ」
先程からおかしな存在感を示す作品があった。読まなくてもわかる嫌な予感だ。異様な雰囲気を醸し出す一作に手を出した。
鬼滅の刃
「いやこれは本当にダメだよ‼︎今すぐ処分しろ‼︎」
バシンと音をたて、ゴミ箱へと放り込まれた。資源の無駄使いとは、このことだろう。
「これも流行りに乗っかったけどダメか」
「乗っかったとかじゃねえから!モロだから!」
疲労が溜まってきたトシキ。適当に作品を要求した。九割白紙の紙を渡された。この時点で破り捨ててやろうと思ったが、とりあえず目を通す。
新桃太郎物語
「パクるにしてもこういうのだよ。何も書いてないけど」
「タイトル思いついたけど、何も書けなかった」
「こういうの中身から考えるんじゃないのかよ」
十秒前と同じ状況だ。またしても九割白紙。
新金太郎物語
「味を占めるな!またしても白紙!」
「タイトルロゴも考えたけど、どうかな」
それなりのクオリティで作成されていた。しかし、それどころではない。
「『どうかな』じゃねえよ。先に中身考えろ」
テルヨシは、実は隠し持っていましたと言わんばかりに、カバンからファイルを取り出した。
「じゃあ今から本気で考えたやつ見せるわ」
「先にそれ見せろや」
いちいち勿体ぶるなとトシキは思う。しかし、ここまで本気ではなかったのか。この男の本気というものが楽しみだ。
The strongest man〜神をも超越した男〜
「ダッサ!‼︎ゴールデンタイムに流れるCMかよ‼︎」
「ていうかCMから着想を得た」
「お前は自分で何か考えることはできないのか」
切実な願いであった。自分で新たなものを作り出すのが、クリエイターではないのか。そんな願いを込めた言葉はきっと届いたはずだ。
「本当にこれが最後の作品ね。自信作だから絶対読んでほしい」
その言葉はまさに真剣そのもの。テルヨシの覚悟に、トシキは「わかった」と首を縦に振る。
緊張感。真剣な空気は、今までのふざけた空気を消しとばした。
いざ、拝見。
魔法使いが打撃攻撃力に全振りしました
「いやパクれよ‼︎!」
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