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1話 LHR

1話1イベントを目標に

 夏休みがもう随分と昔のことだったように思えて、いつの間にかセミの声が消えて空気が冷たくなり秋の訪れを感じ始める頃。



「よし吉田。君に決めた」

「はぁ?ムリに決まってんだろ。体育委員とかマジダルいんだけど」



 公立蝶中(ちょうじゅう)高等学校2年1組では、7限の特設LHR(ロングホームルーム)で後期の委員会のメンバー決めが行われていた。教壇の上には教師ではなく最初に決められたHR委員の男子生徒が立っており、この委員決めの進行を担っていた。



「お前、前期なんもやってないだろ。どうせ何かやる事になるんだしやれよ」

「俺の他にもいるだろーが。ソイツらにしろよ」



 委員会には前期と後期があり、それぞれのクラスから委員会毎に1名ずつ出す必要がある。委員会メンバーは基本立候補制で被ったらジャンケンなどで決まるが、前期にメンバーになった者はもう一度なる事はできないというルールがあり、前期ならばともかく後期ともなると不人気な委員は誰も立候補者が出ない状況だった。



 HR委員の彼は終わりが見えない事に焦っているのか、吉田という男子生徒に強引に体育委員を押しつけようとしていた。しかし、吉田の言う通りクラス内にはまだ委員になっていない生徒がおり、それは残りの空いている委員の数より多いため必然的に誰かは委員にならない事になる。要するに「自分以外の誰かがやればいい」と全員が思っているのだ。かく言う俺もその内の1人であるが。



「ちなみに、2組の岡村由美が体育委員になりたいとか言っていたらしいな」

「だから何?面倒くせえよ。……チッ。仕方ねーな。早く終わらせたいしやってやるよ」

「じゃ決定するぞ」



 HR委員の彼が搦手を仕掛け、吉田がまんまと引っかかったことで決着はついた。男のツンデレとか誰得。しかも彼はその岡村が体育委員になるとは一言も言っていない。とんだ詐欺である。



「残りは、図書委員だけか。誰かやりたい人ー……はぁ」



 体育委員は授業中、大声で号令をかけたり授業で使う器材の準備などをしなければいけなく大変さから不人気な委員だ。それでも結局殆ど授業中で仕事が終わる体育委員と比べ、図書委員は昼休みや放課後に図書室の受付をする必要があり、群を抜いて誰もやりたがらない委員だった。



 前期は1人の女子生徒が読書好きだからと立候補したが、今回は皆無であった。そもそも残りは自分含め他人任せな者しか残っていないだろう。HR委員の彼には同情するが、立候補したのは彼自身だし頑張って任命して欲しい。



「あっ……」

「…………」



 ぼんやりと前を眺めていると、偶然クラスを諦めたように見回していた彼と目が合ってしまった。彼は短く声を上げ、教壇の上の座席表を眺め始めた。……嫌な予感がする。



「えーと……はっしょう?くんだよね。何もやってないし、良かったらさ。その、図書委員やってくれないかな?」

「…………」



 言い方は丁寧だが、彼からはやれやれオーラを発して俺に向かって圧力をかけていた。と言っても、そもそも俺は「はっしょう」なんて名前では無い。だが、ここで無言でいると肯定と捉えられてしまうかもしれない。それは嫌だ。そんな事態を避けるべく、俺は拒否しようと口を開いた。



「い」

「じゃあお願いね。はっしょうくんが図書委員って事で。先生、全委員決まりました」

「ご苦労。自席に戻れ」



 しかし、俺の言葉を遮るように一段と大きな声で彼は俺が認めたのを既定事項のように宣った。一瞬何が起こったのか理解ができなかったが、先生が話し始めた時に理解する。要は彼が俺に押し付けたのだ。



「巫山戯んな!」と叫びたいが、そんな事をして変に目立つのも嫌だった。苦し紛れの抵抗で俺は担任教師に訴えの視線を送るが、担任が俺の方を見ることはなかった。



 彼が自席に戻る途中、俺と目が合った。思わず罵倒したくなるのを抑え、怨みを込めて睨んでやると彼はビクッと肩を揺らし、俺の横を通らず遠回りで自席に戻っていった。怯えんなら最初からすんなと言いたい。



 もちろん怯えられた程度で俺の気が晴れるはずもなかった。



「ではLHRを終了する。今日の放課後、各委員に選ばれた者は集会が行われるので参加するように。参加できない用事がある場合は各委員の担当の教師に伝えること。以上、解散」



 今日は授業が6限までなので、LHRが終われば放課後になるのは知っていた。俺は担任に不正を訴えようと席を立つが、担任はスタスタと廊下に出て見えなくなってしまった。担任を諦め、俺は後ろ向くと……彼の机は既にもぬけの殻だった。



「…………くそ」



 苛立ちは募るばかりだが、幸か不幸か俺はこの手の被害を被るのに慣れていた。悪態をついて感情を吐き出し、少しばかり冷静になった脳で考える。



 図書委員の仕事は確かに面倒くさいが、毎日あるわけでもない。しかも俺は基本的に昼休みや放課後に用事はなく、強いて言えば時々バイトがあるくらいだがそれくらい言えば外してくれるだろう。それに受付といっても進学でもないこの高校の図書室は常に閑散としており、居れば良いだけの時が殆どだろう。その間は読書や勉強の類いならば自由にできるし、受付は飲食が自由になる特例が認められている。これは昼休みに当番になった者のために作られた規則だが。



 こう見ると、図書委員になることは特に大きなデメリットは無いように思えた。メリットが皆無で面倒なのは変わりないのでやる気は一切湧かないが。



 そして図書委員会になるか教師に訴えて何としても辞めるかを天秤にかけた時、どちらの方が面倒なのかは明白だった。



「……行くか」



 集合場所と時刻を確認してから普段よりも重く感じる鞄を手に取り、俺は図書委員会の集合場所である図書室へと足を向けた。

はっしょうくんが主人公のラブコメが幕を上げました。(んなわけ)



日本語変だなーとか思ったら指摘おなしゃす。直します。

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