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第11話 空腹の始まり

こんにちは、市九郎です!

遅くなってしまい申し訳ありません!

第11話です!ではっ!

第11話


 何かおかしい。

 老婆はそう思い始めていた。過去を透視し始めてからある程度時間が経った。ディアの過去を視て、孫に抱くような同情を感じ始めていた老婆だったが、薄々とディアの過去がおかしい事に気付いていた。

 普通、学園の初等部に通うくらいの年齢なら、母のやつれていく姿、学園でのいじめ、父の訃報などの境遇は、精神をかなり不安定にさせる要素だ。

 しかし、ディアは一切の感情を感じていなかった。母に本当の事を隠していたのも、いじめで辛いと感じていたのも、心ではなく、頭で判断された結果でしかなかったのだ。

 では、心の働きが無かったディアの頭に、何がそれらを「苦痛」と判断させたのか。

 

 それは、「空腹」だった。


 ディアの原動力となっていたのは、空腹だったのだ。

 人は本能的に、空腹になると食べ物を探す。その為に移動し、労力を費やす。その関係を、ディアは頭と心の関係に反映させていた。

 

 心が空腹を感じると、頭が働く。

 

 普通の人間は、胃の中に食べ物が無くなり、生理的な欲求として頭が空腹を感じ、それによって心に食欲が生まれ、行動する。

 しかしディアの場合は、それらの順序が逆だったのだ。

 この奇妙な青年に、老婆は言い知れぬ不安を感じ始めた。



 「母さん……」


 泣き伏せる母を前に、俺は戸惑っていた。

 目の前で母親が泣いている。何かよくない事が起こった。幼いながらにもこの状況は理解できていたはずだ。しかし記憶の中の自分は、泣き伏せる母を前に、食事に戻ったのだ。

 理解できなかった。あんなに母さんの事を想っていたのに、こんな行動に出るはずがない。何故だ、何故この時の俺は……?

 

 「腹が……減った…………?」


 ふと、心に浮かんだ言葉。

 何だ、こんな時に。何を考えているんだ。ディアは自分の薄情加減に呆れ、その言葉を頭から振り払おうとした。

 しかし、振り払われるどころか、その言葉は、ただの言葉を通り越して、実際にディアに空腹を感じさせ始めた。


 「何だこれ……」


 初めて感じる奇妙な空腹。いや、初めてではない。


 「この感覚……これは……」


 はっきりと空腹を自覚した瞬間。ぼやけていた宿場村での記憶が鮮明に蘇った。


 「……っ! この感覚は……!」



 突然、安定していた過去の透視に、何かが侵入してきた。

 それと同時に、不安、恐怖、困惑、憤怒、悲哀、そして飢餓。あらゆる感情が老婆に襲い掛かった。


 「なっ、何じゃこれは……!!」


 グルグルと音をたて、記憶の映像が赤黒く浸食されていく。


 「うッ……ウググ……ッ!」


 喰われる。老婆は本能的にそう感じた。このままでは、喰われてしまう!


 「グッ……魂術解除じゃ……っ!」


 強制的に記憶との接続を切った瞬間、老婆には妙な囁きが聞こえた。


 「オレノ……タマシイヲ……ミタセ……」


 声の終わりと共に接続は切れ、水晶は粉々に割れた。


 老婆は戦慄した。

 最後に聞こえた奇妙な声。


 それは、ディアの声だった。


 つづく

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

忙しく、少し間が空いてしまいましたが、11話、いかがだったでしょうか。ディアの中に度々登場する謎の感情。その正体とは。これから少しずつ明かされていきますので、お楽しみに!

ご意見、ご感想、ご指摘等、お待ちしております!

ではっ!

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