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第10話 再燃の始まり

こんにちは、市九郎です!

ディアの過去に迫る第10話、お楽しみに!

ではっ!

第10話


 いかにもな水晶の前に座り込んだ老婆と俺は、神妙な顔つきのソニアが見守る中、怪しげな儀式を開始した。


 「ではいくぞ。この水晶は過去を巡る力を持っておる。過去を視れば、お前さんとあの男の関係も分かるというわけじゃ」


 「はい。お願いします」


 老婆の合図で目を閉じ、精神を集中させる。すると、周囲の物音が聞こえなくなり、俺は過去の世界へと心を馳せていった。


 目に映ったのは、父さんがいなくなってからの日々だった。


 「母さん、父さんはまだ帰ってこないの? もう少ししたら帰るって、この間言ってたよね?」


 「ええ、そうね。少し遅れているのかもね。きっと、もうすぐ帰ってくるはずよ、ディア」


 これは、母さんとの記憶。今にして思えば、この時すでに、父さんは行方不明になっていたはすだ。


 「それよりディア。もう学園に行く準備はしたの? お迎えの使者が来てしまうわよ?」


 「うわぁ! 忘れてた! 母さん手伝って!」


 「はいはい、慌てたら転ぶわよ。ふふ」


 父の仕事の影響で王立学園に通っていた俺は、そこで幼少期から最近まで過ごしていた。


 そこで一旦場面は途切れ、学園での日常へと意識が移る。


 「おいディア、お前の父上はまだ帰ってこないらしいな。へへ、実はもう死んでたりしてな!?」


 「ああ、きっとそうだ! 僕の父上も言ってたもん! ディアの父上は穢れた血だって! ディアもきっと穢れてるんだ!」


 父さんがいなくなってから、それまで仲の良かった友達は離れていった。

 父さんは王府の中でも優秀だったらしい。それだけに、反感や恨みも買いやすかったのだろう。特に実力もない俺が優遇されていたのは、父の後ろ盾があったからに過ぎなかったのだ。

 だが、学園でどれだけ貶されようと、俺には母さんがいた。全てを優しく包んでくれる、母さんが。


 「母さん! 今日学園でね、カエルを解剖したんだよ! 皮をこうしてね、こうすると、こうなるんだ!」


 「ふふ、どうなるのか全然分からないわよディア。落ち着いて聞かせてね」


 懐かしい日々、優しい母の顔。俺はこの頃から、母に本当の事を言わなくなった。

 学園での生活は辛いものだった。飽きる事のない同学年からの嫌味、罵倒。教師からも嫌われていた。しかし、仕事に忙殺され、日ごとにやつれていく母に打ち明ける事は、できなかった。

 楽しかった事だけを話し、何もなかった日には作り話をした。

 母は気付いていただろう。しかし、母も何も言わなかった。言う余裕が無かったのかもしれない。


 そして、場面は切り替わる。人生で最も忌まわしい日が訪れた。


 大雨の夜、食事中だった。扉を叩く音が聞こえ、母は玄関へと向かった。そのすぐ後、母のものらしいすすり泣きが聞こえてきた。

 スプーンを持ったまま玄関に行くと、倒れ伏す母がいた。初めて見る、母の姿だった。


 国の役人が伝えに来たのは、父の訃報だった。


 つづく

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

コロナウイルスでできることが少ない中、この物語で少しでも気を紛らわせていただけると幸いです!

次回も、お楽しみに!ではっ!

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