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ー序章(プロローグ)ー
人生なんてほんのちょっとの偶然で、どうなるかなんてわかったもんじゃない。
それまで平々凡々に生きてきて、自分に見合ったごく普通の人生を、ただ真っ当に堅実に歩んできただけなのに、一体どこをどう間違ったらこんな事になるのか…。
元の世界では常に脇役に徹し、決して目立つ存在ではなかった俺が、まさかこの世界では一番の有名人になろうとは思わなかった。
俺は斎藤 元彌、日本人。
二十九歳、独身で、元の世界では三流大学出のしがないサラリーマン。
好きなものはゲームとアニメ、いわゆる世間様に “オタク” と呼ばれる人種である。
そしてそんな俺の今のあだ名は、“精霊王”。
四大最上位精霊を従え各地を流離い、時に魔物を倒し、時に勝負を挑んでくる奴等を蹴散らし、世界を旅する冒険者の一人である。
これはついうっかり異世界に迷い込み、何故か “精霊王” とまで称される事になってしまった、一人のごく普通のオタクの話である。
続く