3話
私は1度、家に帰らせてもらう事になった。
この屋敷に住むには色々と準備が必要だったからだ。
着替えや学校で使う教科書。
窓から外を見ると、もう夕暮れ時になっていた。
「ヤバイ! 親が心配するから急いで帰らなきゃ」
すっかり時間が経つのを忘れてしまった。
「僕が送って行くよ。ご両親と上手く話しをしておいで。明日、学校の近くの公園で待っている」
ん!? 私と私の親の事を気遣ってくれてるの!?
以外と紳士的なところもあるんだ。
少し関心した。
と同時に、安心感も生まれてきたのであった。
彼は突然私を抱きかかえた。
「ちょっ! 何するの?」
「このほうが早い。麗香、しっかりと掴まっているんだ」
彼は窓から私を抱きかかえたまま外に出た。
部屋の中からだと分からなかったが、凄く大きな屋敷だった。
そして、彼はいきなり空を飛びはじめた。
私はとっさの事にびっくりした。
「きゃ~~~っ!! 怖い! 高いの怖い~!」
私は怖くて急に暴れだした。
「あはは! 大丈夫だよ。そんなに暴れたら、麗香を落としてしまうじゃないか!」
「え!? そんなのヤダ!! だって、怖いんだもん」
私はそう言って、必死になって彼にしがみついた。
屋敷の周りにある森の中の木に、次々と降りては飛んで、を繰り返していた。
あ~、この人は本当に吸血鬼なんだ。
こんな事が出来る人間なんているはずがない。
彼は時々、私がちゃんと掴まっているか確かるように見ていた。
「大丈夫かい? どうやら少しは落ち着いてきたようだね」
そう声をかけてくれた。
彼の優しさが垣間見れた瞬間だった。
優しい所もあるのね……
しばらくすると、街並みが見えてきた。
「麗香、ここまで来れば君の家がわかるだろう。近くまで行くから道案内してくれないか」
「わ、わかったわ」
人目につかないように、わざと高い所を選んで飛んでいるようだった。
そして家の近くまで連れて行ってもらい、降ろしてもらった。
「じゃ、明日。僕のメイド。麗香」
く~~~っ! なんてキザなやつ!!
明日からあの屋敷でメイドをするのね。
まさか、吸血鬼に惚れられちゃうなんて……
最初は変態かと思ったけど、以外に紳士的な面もあるみたいだし。
優しいところもあるみたい。
顔はイケメンだし~。
あのナルシストぶりを思い出すと
「ふふっ!」
と、つい笑みがこぼれるのであった。
(かっこつけてるのか? 本当にナルシストなのか? 変なやつだったな~)
私は今日あった事をふり返りながら家路に着いた――
帰りが遅かった事に、やはり両親は心配をしていた。
少しお説教をされたが、それは仕方のない事だった。
私は、友達の両親が海外に仕事の関係で行くことになった。
しばらく帰れないので、女の子1人だと可哀そうだからと嘘をつき、友達の所に居候したいと伝えた。
両親は、そういう事ならと快く聞いてくれた。
嘘をつくのは心苦しかった。
(お父さん、お母さん、嘘をついてごめんなさい)
私は親に嘘をついた事は今までなかった。
しかもあんな大きな嘘。
心の底から申し訳ない気持ちになって、何だかもやもやしていた。
でも、あのくらいの嘘をつかないと、あの屋敷に住み込みでバイトは出来ない。
仕方のない事だったと思い、私は2階の自分の部屋に戻った。
部屋に戻ると、倒れ込むようにベッドに横たわった。
「は~~。なんか疲れた。吸血鬼か~。本当にいるなんて……じゃあ、あの牙は本物だったのね」
明日から新しい生活が始まる。
大丈夫かしら…
吸血鬼だから、本当は怖い存在よね。
今までごく普通に暮らしたきた私にとって、衝撃とも言える1日だった事に気付く。
でも、あいつ…
なぜか怖くなかった。
まぁ、どうにかなるでしょ。
お風呂入ってゆっくりしようっと!
あ、そうそう色々準備もしなきゃ~!
ヤダもう~~! 今夜は遅くなりそう……
は~~~。
「ため息ばっかじゃん。あいつのせいよ! バイト代、高く請求してやる!」
私は独り言をいいながら枕を壁に投げつけたのだった。