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クライマ ―対魔の物語―  作者: コーヒーと酒
1/1

第三話 『SIREN』

新キャラがちょびっと出ます(5秒くらい)

 

 帰宅後、ベッドに寝そべって天井を仰ぐ。


 魔境、詞鏡、喰らい魔、キャンセラー……。


 …頭の中を単語がぐるぐる駆け巡って落ち着かない。


 ひょっとして今日起きたことは全て妄想なのかもしれない。あまりに味気のない日常を送りすぎて、自分が作り上げた幻覚。

 だとしたら雨野の存在も納得出来る。あんな不自然なまでに整った顔面、まさに二次元の住人だ。


 ――つまり、進級してからひと月の間ずっと俺は幻を見ている。


「そんなわけあるかよ……」


 さっきからこんな調子で、仮説を立てては否定しての繰り返し。


 クラスメイトも、四年間通い続けている喫茶店のマスターも別世界の住人だったなんて。今日の出来事で俺の世界が目まぐるしいほどに変わってしまった。

 悪夢のような金曜日だ。考えるのに疲れてそのまま眠りについた俺は、せっかくの土日も上の空で過ごすことになる。


 そして月曜、家を出た瞬間から()()に遭遇しないか不安で仕方なかったが、何事もないまま学校に着いた。

 ほっと一息つき、鞄を下ろす。


「何を暗い顔してるのさ」


 席に回り込んできたのは、小学校からの幼馴染である三神隼人みかみはやとだ。

 ふわふわな金髪に中性的な顔立ち。童顔で男にしては背が低めな彼は、その甘いマスクから寄ってくる女子が後を絶たない。

 幼馴染である所以は、小二の時にこいつが近所に越してきたというだけ。

「別に……いつもとそう変わらないだろ」

「確かにね。てか聞いてよ! また雨野さんにデート断られたんだけど!? 」

 バンと机を叩かれる。さりげなく肯定するな。

 ああもう、今その名前を聞くと金曜の記憶が蘇って頭痛がしそうだ。

「諦めろって。無理だあれは」

「嫌だよ!あんな絶世の美女と話せる空間にいるんだよ? 全力を尽くさないと一生後悔するね」

 同じ空間にいるどころか、別世界の人間なんだよ。と突っ込みたい衝動を抑える。

「……ん? 雨野ってもう来てるのか? 」

「うん。さっき購買で会ったよ」

「そうか……購買でデートに誘うなよ」

 周りの目を気にしないのがこいつの長所であり短所でもある。


「キャー!!雨野さんよ!!」

「今日も美しいっす!」

「こっち向いてー!」


 ……ああ来た。あいつは毎朝登校するだけで廊下が大騒ぎだ。

 そんな学園のアイドルは、

「おはよう」

 と熱い視線を浴びながら教室に入ってくるや否や、俺の名を口にした。

「連、ちょっといいかな」


 歓声が止む。

 ――――何故に呼び捨て?


「はあああああああ? どういうことだよ!」

 隼人から驚きと怒りに満ちた表情を向けられる。いや、クラスの男子全員からだった。

「用があるの。早く来て」

「わか、わかったって」

 逃げるように教室を出る。「裏切り者!絶交だからな!」という三上の遠吠えが聞こえた。

「何だよ」

 早歩きで周囲の目をまく雨野について行く。そのまま今はまだ利用者のいない連絡通路まで来た。


「これ朝霧さんから」


 携帯電話と、シルバーの腕輪が渡される。

 電話は所謂ガラケーというやつで、しかもストレート端末の古いタイプだ。やけにシンプルで飾り気が無い腕輪は、見覚えがある。

「これ、雨野もつけてる……」

 今もその細い左腕に同じものがはめられていた。

「これは普通のケータイを改造して、近くの喰らい魔の位置とランクを把握出来るようになってるの」

「……出た、喰らい魔……」

 頭痛がしてきた。

「ランクとかあるのか? 」

「勿論。強さ順に下からE、上はSまであるよ。あまりに大物だとこんなの無くてもわかるけど、詞鏡は魔力量が少ないから、基本下級しか出ないみたい」

 そいつぁ良かった。

「で? こいつに知らされたからと言って、その、ホイホイ動けるわけじゃないぞ」

 戦う覚悟などてんで無い旨を伝えると、雨野はなんとはなしに言った。

「平気だよ。喰らい魔に取り憑かれる人なんて、事件起こす一歩手前くらいのレベルなの。近辺にそんなしょっちゅう現れるわけじゃ……」

 途中、「ビーッ、ビーッ」という警報音のような音に遮られる。発信源は俺の手の上……握られている携帯電話だった。画面には「対魔反応確認」の文字がでかでかと表示されている。


 青い瞳と視線がぶつかる。彼女は残念そうに整った形の眉を下げた。


「ツイてないね」


次回どうにかして戦います

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