異世界ツッパリ伝説
初めて小説を書いてみたので稚拙な文章だとは思いますが軽い感じで読んで頂けると幸いです。
「あ? なんだここ」
俺は寅田健介。高3、学校のトップを張ってる。
今日は2年の生意気なやつがテッペンを賭けて勝負するとか言ってたからタイマンするために登校してやった。1年の頃からこの学校をシメてる最強の俺にタイマンを挑むとは命知らずなやつもいたもんだ。で、まあタイマンまでのつまらん授業中に先公を睨んでやってたらピカッと教室中が光りやがった。
んで、光が収まったらなんだか良く分からん場所にいる。状況が分からん。
「おい龍二。ここどこよ?」
「あ? 俺に聞くなや、わかるかよ」
とりあえず隣にいるツンツン頭のダチ。龍二に聞いてみた。分かるわけねぇな。
周りを見渡してみる。石造りってやつか?石で出来た広い場所らしい。天井が高い。柱が太く電柱の5倍くらいあるんじゃねぇかな。そんなのが何本もある。
クラスのやつらが騒がしい。異世界だ、転移だ、チートだのと良く分からん言葉を発している。主にうるさいのは根暗の鰐淵君じゃねえか。あいつパシリに使っても遅いから使えねえんだよな。
「あー……とりあえずフケて一服でもすっか?」
「ああ、そうすっか」
状況が良く分からないうちは下手に動くべきじゃねえ。英語教師も落ち着いて! 落ち着いてください!とか言ってる。大人しく従って落ち着こう、一服だ。
俺と龍二が一服しようとでかい柱の陰に隠れようとした時、コツコツと足音を響かせて白く仰々しい服装をしたジジイが近づいてくるのが見えた。
「お、あれ知ってるぜ。ローマ教皇ってやつだろ! テレビで見たぜ。ってことはアメリカか?ここ」
俺は頭も悪くないことをアピールするために龍二に言ってやった。ちょっと声が大きかったかもしれないから、クラスのやつらも俺の博学っぷりに驚いたことだろう。
見渡してみるとクラスのやつらが寅田君何言ってるの……みたいな顔でこっちを見て静かにしている。
「と、寅田君。あの人ローマ教皇じゃないよ。顔が違うもの……それに、ローマはイタリアだよ……」
クラス委員長の文学系少女が小さな声で教えてきた。静かにしてる空間っていうのは小声でも結構響くんだな……。
「ぎゃはははは! マジか健介! だっせえっ!!」
龍二のヤツが腹を抱えて笑い出した。ちっ、うぜえ。すごいやつって大体アメリカじゃねえのか!?
クラスのやつらも釣られてくすくすと笑い始めた。ムカつくな、とりあえず男子は後でシメる。
「おほんっ、召喚に応じ来て下さったことを感謝致します。勇者様方。私はこのラガー国の国王、ノド・ゴーシと申します。来て下さって早速の所申し訳ありませんが、我が国は魔国との国境沿いにありまして、滅亡の危機に瀕しております。どうか、どうか、お力をお貸しください」
咳払いを一つして注目を集めてから、教皇が現状を説明し頭を下げてきた。
しかし、言われたことの意味が分からない。クラスのやつらもそんな感じでポカンとしている。オタク鰐淵だけはニヤニヤしてる、気持ちわりぃ。
「え、ええと……ここは一体どこなんですか? 日本ではないのでしょうか……」
英語教師が質問をした。さすが大人、このわけわからん状況で質問なんてやるじゃねえか。無駄に年は食ってないようだ。
「はい。日本という場所は存じ上げませんが、私たちは貴方様方を異世界より勇者として召喚致しました。貴方様方は召喚に応じ世界を移動して頂いた報酬として【クラス】と呼ばれる力を授かっているはずです。 こちらに選定を行える魔道具がありますので、ご確認頂けますでしょうか」
そう言ってジジイの後ろからガラガラと音を立てながら、メイド服姿の女が台車を押してくる。その台車の上には水晶のようなものが乗せられていた。紫の座布団の上に置いてあって、胡散臭い占い師が使うやつに見える。
「く、クラス……?」
「はい、【クラス】で御座います。こちらの魔道具に手を翳して頂けますと取得している【クラス】を判別することができます。さあ、どうぞ。ご確認下さい」
英語教師のやつも良く分からなかったらしいが、教皇の偉い人パワーに負けたのか従って水晶に手を翳し始めた。俺からはよく見えない。
「何も……ん? 剣士と浮かびましたが」
「おおっ! 剣士様でしたか、剣士様には是非我が国の兵士達にもご指導頂けますようお願いしたいのですが……。もちろん報酬はご用意致しますので、どうかご検討下さい」
「は、はぁ……」
英語教師が流されている。ありゃ権力に弱いタイプだな、情けねえ。
英語教師と教皇のやり取りを見ていたクラスのやつらが俺も……私も……と好奇心に負けて水晶の所に行きはじめた。
「おい健介。面白そうだし俺らもやってみようぜ」
「あ? マジか」
「おう、俺結構ゲームっぽいの好きでよ」
へへへと龍二が笑っている。まあダチが気になるっていうならしょうがねえな。俺もちょびっとだけ気になっている。まあ1年から高校をシメちゃうような最強な俺の事だから【頭】とか出るんだろう。間違いねえ。
俺らは最後の方で、もうほとんどのやつらが終わっていたが、俺らの後ろに並びながら鰐淵のやつがニタニタしている。こいつさっきやってたと思うが、マジ気持ち悪い。
じゃ、俺お先なっ! と龍二が手を翳す。
「おっ。おー……俺は戦士か。なんだ普通だなぁ、もっとカッコいいのが良かったぜ」
「ほー。いいじゃん戦士、お前に似合ってると思うぜ。まあ見てろ、俺が頭を出してやるぜ」
龍二は格闘技もやってるからタイマンはかなり強い。戦士って言われても違和感がないくらいだ。それでいて俺と気が合うから、うちの学校じゃ俺と龍二でツートップをやってる。
ダチの龍二を励ましつつ、俺も水晶みたいな物に手を翳すと水晶の中にぼんやりと文字が浮かんできた。
「ん? 魔法使い? なんだよ魔法使いって」
「お、おう……なんか、似合わねぇな……」
龍二と二人で首を傾げる。魔法ってなんだよ?
「あはは、あはははは! 魔法使いって、あははは!」
後ろにいた鰐淵の野郎が爆笑してやがる。イラっとする。
「あ? んだコラ。鰐淵てめぇ何笑ってやがんだ?」
「え、ああ……僕をパシリになんて使ってくれた寅田君がどんなクラスになるのかと思ったら、魔法使いなんて似合わないものだったから思わず笑っちゃったよ、ははは。それに頭ってなんだよ。そんなクラスあるわけないだろ。あはははは!」
鰐淵の言葉にこめかみがピキピキする。オタク野郎が俺を煽ってやがる。
「喧嘩売ってんのかてめぇ」
「いやいや、寅田君と喧嘩なんてしないよ。だって僕は勇者だからね……君と違って弱い者いじめは出来ないさ」
鰐淵は水晶にサッと手を翳し、浮き上がる『勇者』の文字を俺に見せつける。
確定だ。こいつは俺に喧嘩を売ってやがる。
「おう、てめぇ誰に喧嘩売ってんのかわかってんだろうな。 タイマンだこら!!」
俺は鰐淵の胸倉を掴むと顔を近づけて思い切りメンチを切る。
「何が勇者だこらぁ! てめぇビビッてんじゃねえか! でけえのは口だけかこら!」
鰐淵の野郎は俺と目を合わせないように逸らしている。振るえてんじゃねえか。これのどこが勇者なんだよ。頭おかしいんじゃねえのか。
「お、おほんっ。勇者様、ここでの戦闘はお控え頂けますようお願い致します。転移でお疲れでしょうし、料理をご用意してありますので、ささどうぞこちらへ」
「寅田君。今はその従おう……戻る方法とか大事なことを聞かなければならないから、こちらの方々に迷惑になる行為は控えてほしい。今のは鰐淵君も悪かったから、僕から指導をする。頼むよ。」
教皇のジジイと英語教師が両側から俺を諫めてくる。
「ちっ! 鰐淵、てめぇ覚えておけよ」
普段なら我慢できなかったとは思うが、状況が特殊だったから英語教師の言い分も分かる。俺も戻ってシメなきゃならん2年がいるからここは我慢だ、鰐淵は戻ってからボコればいい。
鰐淵を掴んでた手を離してやったが、ガンを飛ばすのだけはやめねえ。ビクビクと英語教師の陰に隠れやがったが、誰に喧嘩を売ったのか後でたっぷり分からせてやる。
そこからは教皇に案内されて、豪華な飯を食わされたあと風呂に入れられ、一人一人個別の部屋が用意されていたようでそこに案内されてベッドに横になる。
あぁ、タイマンに遅れちまうな……と考えていた所で眠ってしまった。
次の日、朝食を食った後で全員広い庭みたいな場所に案内された。
「えー、これから勇者様方は魔国の魔物と戦って頂くことになります。最終目標は魔王の討伐ですが、魔物との戦闘は初めてだと伺いましたので、こちらで捉えてあるゴブリンと戦闘訓練をして頂こうと思います」
騎士風の男がそんなことを告げてから手を叩く。するともう一人の騎士が檻を持って現れた。檻の中には緑色で醜い人型の変なのが入って暴れている。それが俺たちの中心にドンと置かれた。
「これがゴブリンです。魔物としては最弱ですが、ずる賢く油断ならない魔物でもあります。また集団でいることも多くあるため、遭遇したら複数いる可能性を疑って下さい。戦闘訓練を行ってみたい方はいらっしゃいますか?」
騎士がゴブリンを見せながら解説している。ほー、雑魚か。興味ねえな……と思っていたがゴブリンのやつがやたらとこっちを見ている。というか俺にガンを飛ばしている。お? やんのかこら?
「あ、あの……! ゴブリンと寅田君が睨み合っているのですが!」
手を上げて鰐淵の野郎が騎士風の男に告げ口しやがった。この野郎、と思ったがゴブリンのやつがマジで俺にガンを飛ばしている。いい度胸じゃねえか、いいぜやってやるよ。
「おう。俺がやる!」
俺は顔を上げ騎士風の男に告げた。
俺とゴブリンが向き合っている。
ゴブリンは横にいる騎士風の男の言うことに逆らえないのか「開始の合図を待て」などと言われている。
俺の横のいた騎士が「これを」とこん棒みたいなものを渡そうとしたが俺は受け取らない。男の喧嘩は拳で。それが流儀だ。それをわかってるのかゴブリンのやつも騎士からこん棒を受け取っていない。
俺はゴブリンに近づいていく。開始の合図はまだない。喧嘩の前にはやることがある、こいつもきっとわかってる。
俺はゴブリンの前に立つと足をがに股に開き腰を落とした。1メートルくらいしかないゴブリンに合わせる為に背も丸めて、下から覗き込むようにゴブリンに顔を近づけていく。
「お? やんのかコラ?」
俺は盛大にメンチを切った。
ゴブリンも俺から視線を外さない。クソ淵とは違うな、こいつのほうが男だ。
男として認めて、ふっと小さく笑って視線を離した瞬間、ゴブリンは騎士からこん棒を奪い取って俺の頭を強打した。
「ぐがっ!!」
頭に強烈な衝撃を受けて前に倒れ込んでしまう。がに股でしゃがんでる格好だったから潰れたカエルみたいな体勢になってしまった。
「ぶはっ! まじか、健介だっせえ! ぎゃはははは!!」
「ぐっ、くそ! まずはメンチ勝負だろうが!」
龍二の笑い声が聞こえて慌てて起き上がる。ゴブリンを見ると騎士に押さえられていてギャーギャー言ってる。この野郎、不意打ちとは男じゃねえな……!
ゴブリンに再び向き合い拳を握る。
「き、君。大丈夫かい?」
「あ? ああ……ぶったおしてやるぜ」
「確か君は魔法使いだったね……。魔法使いっていうのは思い描いたものを力として成せるクラスだ。覚えておいてくれ」
騎士がかけつけて俺の無事を確認してくるが、俺はまだまだいけると拳をアピールする。騎士はアドバイスっぽいことを言ってるがわからん。だが、思い描いたもの……か。一つだけあるかもな。
ゴブリンは土のついた俺を見て笑ってやがる。
「調子に乗りやがって、やってやるぜ!」
「は、始め!」
俺がまだやれるのを確認すると、押さえてた騎士がゴブリンを離し合図を掛ける。
放たれたゴブリンは右手にこん棒を持ち突っ込んできて、左側から振るってくる。
こんなもん食らうか! と左手でガード。ドスンっとこん棒の一撃が腕の骨を叩く。いってええ!
「このっ! おらあ!」
右手の拳をやつの顔面に叩きつけると、ぐぎゃと声を上げて倒れるがすぐに起き上がってくる。
「上等! うらあ!!」
再度こん棒を振りかぶってくるがフェイントもなく動きが単純すぎる。一歩下がってこん棒を回避、カウンター気味に右拳をやつの頬に叩きこむ。良い感触だ、今のは効いただろう。
殴られたゴブリンは見守るように立っている騎士の足元までゴロゴロと転がって行った。
「グ、ウゥゥ……!」
今のは綺麗に入ったから決まったと思ったが、こん棒を支えによろけながら立ち上がってくる。なかなか見上げた根性だ。舎弟にしてやってもいいかもな。
向かって来ても1発か2発追加でくれてやれば終わりだろうと、俺はゴブリンに興味を無くし気を抜いた。
「グァアアア!!」
その一瞬だった。ゴブリンは横にいた騎士の腰から剣を引き抜き、全力で俺に飛びかかってきた。
やばい! そう思った時には咄嗟に左腕を身を守るように突き出していた。
ザクリ……振り下ろされた剣は俺の左腕の肉を引き裂き、骨にぶつかり、食い込むようにして止まった。
「あぁああああ!!」
焼けるような痛み。ショックで足がもつれ、尻もちをついてしまう。
痛い! 痛い! 痛い!!
ゴブリンは俺の腕から強引に剣を引き抜いた。引き抜かれた痛みに悶えながら、ゴブリンの顔を見上げる。そこには剣を上段に構えて、殴られて腫れた顔が愉快そうに笑顔に歪むおぞましい表情があった。
死ぬのか……俺……。こんなクソみたいに気持ち悪いのに殺されるのか……。2年とタイマンしなきゃなんねえ。龍二と族を作って二人で暴れようって約束も果たさなきゃなんねえ……。
なにより、まだ女とヤってねえ!!
そこまで考えたら無性に腹が立ってきた。
ゴブリンを睨みつけると愉快そうな顔が歪み、剣が振り下ろされる。俺は左腕にぐっと力を籠める。
「いってえ!」
先ほどと同じように左腕に剣が食い込む。焼けるようにいてえ。けど今度は覚悟を決めたから耐えられた。
俺は、こんなやつに負けたくねえ!!
無様に尻もちをついてる状況。俺のパンチは届かない。
やつは剣を引き抜こうとしてる、咄嗟にありったけの力で左拳を握ると筋肉が剣を締め付けやつは抜くのに手間取った。
ここしかない!
「……うぉおおおおお!!」
右手を突き出し、人差し指をやつに向け親指を立てる。
人差し指にパワーが集まるのをイメージすると、本気で何かが集まっていくのを感じる。
魔法使いと聞いた時に真っ先に浮かんだこのイメージ。
不良の使う魔法なんざ、これしかねえだろ!!
「吹き飛べや……うぉおおおガン!!」
指先に集まったパワーを撃ち出すイメージに反応し、指先から何かが撃ち出される。剣を引き抜くのに手間取ったゴブリンの顔面に直撃し、ふざけた面した顔を吹き飛ばした。
頭部を失ったゴブリンが倒れると俺の身体からも力が抜け、仰向けに倒れてしまう。
ドクドクと左腕から流れ出る血と痛み、そして妙な疲れを感じて俺は意識を手放した。
こうして転移してしまった不良。寅田健介は、ゴブリンとのタイマンから異世界にツッパリ伝説を築いていったのであった。
技名を言うのは問題があると思ったのでとても中途半端になってしまいました。
感想や問題点の指摘など頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。