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無口な彼女5


「…………」

 口を開いた小鈴は――しかし、そこで固まった。


 いつもの小さな声を出すわけでもなく、身振り手振りで伝えようとするわけでもない。


 ただ、口を開いて、悩んで、迷って。


 そうして改めて覚悟を決めるように、ひとつ頷いた。


「小鈴、待った!」


 だから、慌ててそれを止めた。


「……ん?」


 僕の静止に戸惑っている女の子に、告げる。


「お店のためだからって、無理にしゃべらなくていいよ。君にとっては、大事な事情があるんでしょ?」


 理由があるからしゃべらない。

 なら、どんなことがあっても、それを曲げるべきではない。


「んっ」


 彼女が慌てて身振り手振りをおこなう。


 でも、このままだと……と言っているように見えた。


 ただの勘違いか、会話の流れから予想できただけか、どちらかはわからない。おそらく後者だろうけど。


 ともかく彼女の言っていることはわかった。

 だから僕は自信満々に宣言する。


「大丈夫。ここは僕がなんとかするから」


 言って、左腰に両手を構える。

 まるで刀を持つように。

 右手を抜刀するように動かして、僕はほのかな光を放つ直刀を出現させた。


「どこに隠れてるかわからなくても、これなら……!」


 直刀に力を込める。

 わずかに刀が放つ光が強まった。


 ――■■ッッ!!


 それに呼応するように、ケガレのうめき声が聞こえた。


 それから、パリンパリンッと何かが割れる音。


 何度か音が鳴った後だった。

 棚の上段、しっかりと閉じられた扉の隙間から黒い煙のようなものが漏れ出てくる。


 その煙は、すぐに霧散して見えなくなってしまった。


 これで退治完了だ。


「ん……?」


 小鈴は何が起きたのかわかっていないようで、疑問符を浮かべている。


「あの程度のケガレだったら、僕が神気を放つだけで倒せるよ。ただ……」


 僕は、カウンターの奥に回り込んで、ケガレが隠れていた棚の扉を開ける。


「あぁ……やっぱり」


 中はひどい状態だった。

 収納されていたグラスはいくつも割れてしまっている。


「消滅するまで暴れるだろうから、見つけてから倒したかったんだけど……」


 お店に被害を出さない方法がないか考えていたのだが、小鈴を無理にしゃべらせるくらいなら、さっさと倒してしまったほうがいい。


 そう判断して直刀を抜いたわけだが……。


「はぁ……秋穂さんに謝らないと」


 怒られることはないと思うが、憂鬱だ。


「……ん、ん」


 落ち込む僕に、小鈴が身振り手振りで何かを伝えてくる。


「え? うーん……一緒に謝ってくれるってこと? いや、これは僕がやったことだし」


「ん、んん」


「そう? じゃあお願いしようか」


「んっ」


「はは、頼りにしてるよ」


 と、答えたところでふと気づく。


「あれ? 割と普通に話せてる?」


「んっ!」


 驚く僕に、彼女は嬉しそうな笑む。


 まだ完璧ではないものの、小鈴の言いたいことがなんとなくわかってきた。


 なるほど、一緒に仕事をして親睦を深めるというのも、あながち悪い手ではなかったようだ。


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