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無口な彼女4


「……ん」


 申し訳なさそうな目を僕に向けて、自分の口を指し示す。


「えっと……もしかして、小鈴が話していたら誤解が解けたかも、とか思ってる?」


 この確認に、肯定が返された。


「うーん、それはどうだろう……?」


 僕の話もまともに聞いていなかったし、小鈴が何か言っても効果があったかどうか。


「まぁ、過ぎたことは仕方ないし。ゆっくり誤解を解くしかないよ」


 人の思い込みとは怖いもので、すぐには理解してくれないこともある。


「僕なんかが彼氏って、小鈴は嫌だろうけど……まぁガマンしてよ」


「ん……んっ!」


 一瞬固まった小鈴が、なぜか急に首を左右に振った。


「え……?」


 何かを否定しているようだが、どれのことだろう?


 確認のために質問を投げようかと思った時だった。それが現れたのは。


 僕が置いた荷物の中から、黒い影が躍り出る。


 ――■■ッ!


「ケガレ!?」


 もはや見慣れた黒い影。

 しかし、かなり小さい。ハムスターほどのサイズだ。


 この程度のケガレなら自然発生することもよくあるが、まさか買い物の中に紛れ込んでいるとは。


 ――■■ッ!


 こちらが構える前に、ケガレのほうが動いた。

 床を蹴り、こちらに接近してくる。


「って、速っ!?」


 一瞬だった。

 小さい分、素早いのかもしれない。


 いきなり眼前に迫ったケガレは、その勢いのまま僕の目に体当たりしてきた。


「――っっ!」


 この規模のケガレなら怖れる相手ではないのだが、さすがに目はダメだ。


 あまりの痛みに、しばらく目が開けられない。


 しかしそれで油断するわけにはいかない。追撃を警戒しつつ、痛みが引くのを待つ。


「痛てて……!」


 数秒もすると痛みに慣れて、目が開けられるようになった。


 その間、ケガレからの攻撃はなく。


 それどころか、やっと目を開けた僕の前には、いつも通りの喫茶店が広がっている。


 どこにも変化はない。


「ケガレは?」


 見ていたであろう小鈴に尋ねる。


「ん!」


 小鈴はカウンターのほうを指さした。けれど、ケガレの姿は見えない。


 おそらく姿を隠したのだろう。


 相手はハムスターほどの大きさだ。小鈴が指さした方向だけでも、隠れる場所はいくらでもある。


 棚の中や、カップの内側。ビンや調味料の裏もありえる。


 気配を探ってみるが、ケガレが小さすぎて読み取れない。


「どこに……?」


「ん」


 位置が特定できない僕のためを思ってか、小鈴がカウンターに近づこうとする。


 それを慌てて止めた。


「危ないから近づかないほうがいい。あんなでもケガレだからね」


 何かあったら大変だ。


「……ん」


 小鈴は足を止めてくれたものの、どこか心配そうだ。


 それもそうだろう。

 あのケガレは早く倒しておいたほうがいい。


 このまま店内に隠れられたまま放置すれば、大変なことになるかもしれない。


 今は小さいが大きく成長するかもしれないし、ケガレが呼び水となって他の悪いモノが寄ってくる可能性だってある。


 店のためにも放置はできない。


「とはいえ……どしたものかな?」


 思案している僕を見て、赤い着物の女の子が動いた。


 意を決するように、口が開かれる。


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