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所長とコーヒー3


 呼びかけに応じて、奥にあるカウンターのさらに奥、調理場から一人の女の子が出てくる。


 外見は小学校高学年くらいで、古風なおかっぱ頭に、赤い着物姿の女の子。


 事務所の従業員の一人、付喪神の小鈴だ。


 彼女はいつもの服装の上から、純白のエプロンをしていた。


「えっと……どうして、小鈴がここに?」


「調理場担当よ~」


「ん」


 秋穂さんの紹介に、エプロン姿の女の子はえっへんと胸を張る。


 彼女が調理場担当か。


 事務所での食事は、いつも小鈴が作ってくれている。

 これがまた美味しい。


 和洋中どれを作らせても、お店の品かと思うくらい完成度が高かった。


「なるほど、小鈴の料理が食べられるなら、繁盛するのはあたり前か」


「……ん」


 小鈴は照れるように、あるいは謙そんするように、両手と首を横に振った。


 相変わらず無口な子だ。


 僕が事務所に来てから、小鈴がしゃべっているところを見たことがない。


「うふふ、小鈴ちゃんったら、照れなくていいのよ~」


「……ん」


「でも、小鈴ちゃんがいなかったら、このお店は成り立ってないもの~」


「んっ」


「そうそう、自信持って!」


 しかし秋穂さんたちとは普通に会話が成立しているっぽい。


 彼女が何を言っているのか、僕にはさっぱりわからないけど……。


 とはいえ僕以外は誰も困っていないから、問題ないのだろう。


 秋穂さんと小鈴は、少しの間楽しそうに談笑? してから、お互いにひとつずつ頷いた。


「さ~て、じゃあ開店するわね~」


 元気に宣言して、秋穂さんが入口に向かっていく。


 木製の扉を開いて、「開店準備中」だった札を「営業中」にひっくり返す。


 そうして戻ってきた秋穂さんは僕に向けて、真剣な様子の笑みを浮かべた。


「ヤツカちゃん、ここからは全力よ。頑張ってね~」


「……はい?」


 ずいぶん大げさな物言いに、首を貸しげる。


 開店したばかりだし、お昼時やティータイムにもまだ時間がある。そこまで忙しくなるとも思えないのだが。


 軽く構えている僕とは対照的に、小鈴は腕まくりをしながら調理場に消えていき、秋穂さんは接客モードで入口に向き直る。


 なぜ、二人がこんなやる気に満ちているのか?


 その答えはすぐにわかった。


 ――からんころんからん

 ドアベルが鳴る。


 さっそくお客さんだ。


 出迎えようと入口に目を向けると……人がなだれ込んできた。


 次々とお客が入ってきて、そのまますべての席が埋まってしまう。

 そこまでわずか数十秒。


 まるでみんながお店の開店を待っていたかのような勢いだった。


「……」


 いや、実際に待っていたのだろう。

 よく見てみれば、窓の外に行列が確認できる。


「なんですか、これ!?」


「水曜はいつもこんな感じよ~」


 あたり前のように笑っている秋穂さん。

 しかし、これは普通ではない。


 開店してすぐに満席で、しかも行列までできている。こんなの超人気店ではないか。


 しかも、気になることがもう一つある。


「なんで女の人ばっかり……?」


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