腹ペコの貧乏神3
「倒れたって……大丈夫でしょうか?」
心配そうにミヤビを見つめるかえでに対して、夏希はなぜか疑いの視線を僕に向けてくる。
「あなたが何かしたんじゃないの?」
濡れ衣も甚だしい。
まぁ、不可抗力とはいえ、疑われても仕方ないことをいっぱいやってきたので、気持ちはわからないでもないけど。
とはいえ、疑われたままでは困る。
「なんか……お腹すいた、って言ってたけど……?」
とりあえず原因と思われることを伝えることにした。
しかし、お腹がすいて倒れるなんて、滅多に起きないことだ。
二人も首をかしげてしまうだろう。
そう思っていたのだが……。
「あぁ、なるほど」
「そういうことだったんですね」
二人とも、大いに納得していた。なぜ?
逆に僕の方が首をかしげてしまう。
「えっと‥…どういうこと?」
「ミヤビさんは、人の幸運が栄養なんです」
「……はい?」
意味がわからなかった。幸運が栄養?
疑問を深める僕に、夏希が仕方なさそうにため息をつく。
「貧乏神の体質みたいなもの。普通の食べ物とは別に、他人の幸運っていうものを定期的に食べる必要があるらしくて」
そんなものがあるとは驚きだ。
僕はそういう特殊な制限はないから、普通にご飯が食べられれば生きていけるけれど。
まぁ、その普通のご飯すら危うい貧乏生活をしていたから、ここでお金を稼いでいるわけだが……。
いや、僕のことはともかく、ミヤビだ。
「えーっと……つまり、どうすればいいんだ?」
僕の問いに、夏希が困ったように苦笑する。
「普段は姉さんの幸運を食べてもらうんだけど……姉さんなら、何か不幸が襲ってきても対処できるし」
「確かに」
とはいえ、いま秋穂さんは出張中だ。
そうなると、別の誰かが与える必要があるわけだが……。
「はい! ミヤビさんのためなら、私が!」
「ダメ」
名乗り出たかえでに、夏希が即座に却下を返した。
「ど、どうしてですか……!?」
「あなたね……自分の体質のこと忘れてない? かえでにもミヤビにも何か影響が出るかもしれないでしょ」
かえでの体質。
つまり超依り代体質のことだ。
彼女の肉体は、霊や神の力を増幅してしまう。
幸運を与えることで、何か起こるかわかったものではない。
「そ、そうですね……でも、それじゃあどうしたら……?」
「私の幸運をあげる。今日一日、不幸になるだろうけど……まぁ死にはしないでしょ」
軽く言ってのけた夏希だが、貧乏神に幸運を奪われるというのは、かなり危険な気がする。
目の前で、女の子が危険を冒そうとしている。
それを見過ごせるわけもない。
なので、僕はある質問を投げた。
「幸運を食べさせるって、どうやって?」
「この状態のミヤビだったら、指か腕を噛ませたら勝手に食べてくれると思う」
「なるほど、こんな感じか」
聞くや否や、僕は自分の腕をミヤビに噛ませた。
「……えっ!?」
「あなた、なにを!?」
かえでと夏希が驚きに目を見開いている。
「いや、ほら二人が危険な目に遭うくらいなら、僕の幸運をあげちゃったほうがいいかなって」
「……だとしても、もうちょっと考えてから動きなさいよ。どうなっても知らないから」




