腹ペコの貧乏神2
ミヤビの華奢な体が倒れようとしているが、ここは階段だ。
必然、身を投げ出すような形になる。
「危ないっ!」
とっさに動いていた。
手にしていたホウキとチリトリを投げ捨て、一足飛びで階段を駆け上がる。
そうして眼前にまで迫った少女に両手を伸ばす。
なんとか受け止めることができて、彼女が転倒することは防いだのだが……。
「軽っ!?」
腕にのしかかってくる重みが、あまりにも少なくて驚く。
ミヤビは小柄で細身ではあるが、その見た目以上に軽々しい。
ちゃんと食べているのか心配になってくるレベルだ。
おかげで支えやすいというのもあるけれど……。
ミヤビは足腰に力が入らないようで、僕の支えでやっと立っている状態だ。
息も荒く、両目を閉じて、ほおを紅潮させている。
本当に体調が悪そうだ。
「だ、大丈夫?」
この呼びかけに、彼女は暑い息をついてから、ゆっくりと口を開いた。
「…………お……」
「お?」
「お腹すいた……」
「…………」
わかりやすい理由だった。
倒れるほどの空腹なんて、よっぽどのことだ。
何か食べるものを探してきたほうがいいのだろうか?
そんなことを考えていると、ふとミヤビの体にすこしだけ力が戻った。
「あれ……? わたし、は……?」
もうろうとしていた意識がはっきりしてきたようだ。
自分が倒れそうになったことを自覚していないのか、困惑した様子で周囲に視線を走らせている。
そうして、僕と目が合った。
「え……えっ!?」
彼女の目が泳ぎまくる。混乱するように、なんとか状況を理解しようとするように。
そして、何かが限界を迎えたのか、その瞳がうるんでいく。
「きゃあぁぁぁっ! こ、怖い人だ! 放してっ……放してぇ!」
この怖がられようである。
初対面からずっとこんな調子だが、僕が何をしたというのか?
誤解があるのなら、解決したい。
けれど、いまはそれより先に言わないといけないことがあった。
「とりあえず落ち着いて。あんまり動くと――」
注意を終える前に、ミヤビの体からまた力が抜けた。
「うぅ……お腹すきすぎてめまいが……」
「ほら、言わんこっちゃない」
いきなり激しく動いたせいだろう。
彼女は僕の腕の中で、ぐったりしてしまった。
あのまま階段にいるわけにもいかなかったので、ひとまずミヤビを事務所に運んだ。
今度こそ限界だったのか、抱えて運んでも目を開ける様子はなく……。
とりあえず応接用のソファに寝かせることにした。
そうして、ミヤビを横にして直後、後ろから声がかけられる。
「あなた……何してるの?」
「――っ!」
背筋に嫌な汗が流れた。
聞き覚えのある声は、僕に恐怖心を与えるには十分な人物だったから。
恐る恐る振り返ると、やはりそこには夏希の姿が。
「ち、違う! 誤解なんだっ!」
「私は、何をしてるのか聞いただけ。なんで、そんな慌ててるわけ?」
「……それはそうなんだけど」
流れ的に、またぶん殴られるかと思って。
……と、本心を言ったら、今度こそ本当に殴られるだろう。
「今、なんか失礼なこと考えた?」
心を読まれている!?
「いやいや、まさか。そんなこと微塵も考えてないよ」
「ホントに?」
すっごい疑われてる……信用ないな、僕。
このままでは、結局ぶん殴られそうだ。
それは困る。夏希のパンチは痛すぎる。
なので、慌てて話題を元に戻した。
「ミヤビがいきない倒れちゃってね。休ませようとしてたんだ」
「そ、それは大変です!」
僕の言葉に反応したのは、かえでだった。
夏希の存在に驚いて気づかなかったが、彼女の後ろにかえでもいたらしく、ひょこっと顔を出してくる。




