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初仕事18


 夏希が攻撃を速める。


 すると、あっという間に悪霊は手のひらサイズにまで小さくなってしまって。


「捕まえたっ!」


 夏希は、唯一まともに残っていた髪留めから何かを引き出すと、それを小さくなった悪霊に巻き付ける。


 細かく文字が書き込まれた、細長い布のようだった。


 布を巻かれた悪霊は、急に気絶したように動きを停止してしまった。


「それは……?」


「姉さん手製の捕縛布。念のために、っていつも持たされてるの」


 それはまた、ずいぶんを便利なものを。


 しかし捕縛ということは……。


「倒さないんだ?」


「いくら悪霊だからって、消滅させるのはかわいそうでしょ」


 当然のように返された。


「事務所に連れ帰って、姉さんに地獄のようなお説教をしてもらって、改心させてから成仏――っていうのが、うちの事務所の方針」


「へぇ、すごいな」


 事務所の方針もそうだが、夏希個人にも感心していた。


 半裸にさせられたというのに、その悪霊を怒りに任せて退治しないあたり、とても心が広い。


 と、そこまで考えて思い出した。


 そうだ、夏希の服が消えてしまった問題は解決していない。


「と、とりあえず、これ着て」


 警戒する相手もいなくなったことだし、僕は上着として羽織っていたシャツを急いで彼女に投げ渡した。


「えっと……うん、助かる」


 さすがの夏希も、その格好のままではいられなかったのだろう。


 僕の施しに対して、素直に袖を通した。

 それから、大きくため息をつく。


「……結局、あなたに助けられちゃったかぁ」


 心底悔しそうだった。


「姉さんの捕縛布も使っちゃったし……全然一人で解決できてない」


 やはりそこが彼女にとって重要な事柄らしい。


 だけど、それってそんなに大切なことだろうか?


「一人で頑張らなくてもいいんじゃないかな? 人間って助け合いながら生きるものだし」


「でも――」


 夏希は何か反論したそうだったが、僕はさらに言葉を重ねた。


「それに、なんでもできる完璧超人になられると、僕の存在意義が問われるし……」


「え? なんで?」


「僕は困っている人を助ける神様だからね。頼ってもらわないと、いる意味がなくなっちゃうんだよ」


「……そっか」


 夏希は理解を示すように、ひとつ頷いてから、


「別にあなたの事情なんてどうでもいいけど」


 と冷たく言い放った。


 ひどい……。

 悲しい気持ちになっていると、夏希がふと嫌な予感を与える笑みを浮かべた。


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